表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第4部 北回り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/106

松山〜今治

2029年10月11日

 

 松山市内のコインパーキングを出発したエブリイは、瀬戸内海を左手に眺めながら、今治いまばり方面へと北上した。

 道中、スマホを開くとフォロワーたちから『今治なら絶対「焼豚玉子飯」ですよ!』と多数の推奨コメントが届いていた。だが、画面を見つめながら俺は小さく首を振る。

「悪いな、フォロワー。俺は昔から半熟卵だけは苦手なんだ。固茹でか、完全に火の通ったターンオーバーの目玉焼きしか受け付けない性質タチでね……」

 せっかくの好意を脳内監査で却下しつつ、俺がハンドルを切ったのは今治名物の鉄板焼鳥の店だった。

 串に刺さず、重い鉄板で一気にプレスして焼き上げる独自のスタイル。口に運ぶと、皮の脂が炭火に弾けてパリパリ、サクサクと実に小気味よい音が響く。このクリスピーな食感は文句なしの黒字決算だ。

 自分の腹を満たしたあと、俺は売店に立ち寄り、3匹のために味付けなしの「鶏もも肉」を仕入れてエブリイへと戻った。

 スライドドアを開けた瞬間、助手席からエルヴィスが弾丸のように肉に肉薄してきた。その目は完全に「自分だけ美味いもん食いやがって」と非難の色を帯びている。言い訳を許さぬ勢いで、俺の顔をベロベロと濡れた舌で猛烈に舐め回してきた。

「わかった、わかったから少し落ち着け! ほら、お前たちにも特別賞与(お土産)だ」

 俺がエブリイのデニムマットの上に鶏もも肉を差し出した、その時である。

 ――ガブッ! バチィン!

「ガルルルッ!」

 ボス、エルヴィス、こまの3匹が一斉に肉の端々に食らいつき、凄まじい力で引っ張り合いを始めた。新車の車内で繰り広げられる、野生の三つ巴デスマッチ。

 ――ブチィッ!

 肉が3つの塊に引きちぎられると、3匹はそれぞれ「自分の取り分」を確保し、デニムマットの上でフゴフゴと満足そうに大きな鶏肉を頬張り始めた。

「おいおい、せっかくの新しい車なんだから、もう少し上品に食えないのかね……」

 マットに飛び散った肉汁を拭き取りながらも、あっという間に肉を平らげて満足げに鼻を鳴らす弾丸たちを見て、俺の口元は自然と緩んでいた。

――まあ、美味そうに食うんだから、これでよしとするか。

 今治の香ばしい余韻を残しながら、俺たちの旅はまた一歩、次なる地へと転がり出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ