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どうやら俺は死んだ勇者の転生者らしい  作者: 空野進


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都市計画

「妾はちょっと虫を払ってくるのじゃ」

「虫? そんなにいたか?」



 おそらくドラゴンのクロに意識が向いていたので気づかなかったのだろうな。



「あまり危険なことはするなよ」

「大丈夫なのじゃ。これからのことを考えたらやっておいたほうがいいのじゃ」



 確かに虫ってものによっては結構うっとうしいものがいるよな。



 自信たっぷりに出て行くソフィ。

 マルスも職人を探して出て行ったし、リリアも結界を作りに出て行ってしまった。


 つまりこの場にいるのは俺一人。

 じっくりと領内でも見て回るかな。




◇◇◇




 遠くの方から爆発音が聞こえてくる。


 この領地が誰かに襲われているわけでもないために、魔物たち同士の争いではないだろうか?

 さすがに自分から魔物を襲撃するような恐ろしい行動に出る人物がいるとは考えにくいのだから。


 そもそもこちらから攻撃して倒せる相手なら、わざわざここに拠点を構える必要もないし、さっさと領地を広げているだろう。


 いずれこの領地まであの爆発音の原因が迫ってくるかもしれない。

 そのことを考えると更に領地の防衛を強化しておくべきだろう。



「下水を引くより優先してもらった方がいいか。いや、塀さえ作れたら、そこに水を流しておけば陸の魔物は中まで来られないだろう。……まて、ここは異世界だ。空からの襲撃もあるだろうし、そもそも魔法があるんだ。それの対抗も考えないといけないな」



 ぼそぼそと呟きながら歩いているとリリアが近づいてくる。



「あっ、カイルくん。一人で歩いてたら危ないって言ったでしょ」

「自領なんだから自分の目で確認するのは当然だろう?」

「そうはいっても危険な場所なんだし、治安も……ね」



 リリアの視線が周りにいる男たちへと向けられる。

 確かに危険な辺境地と考えると戦いに向いている人が多く集まるのもよくわかる。



「カイルくんなら大丈夫だと思うけど、もし何かあったら大変だから私たちが何とかするからゆっくりしてて」

「それならクロの餌やりにでも行くかな」

「うんうん、そういうので良いと思うよ」



 リリアが満足げに頷いてくれる。

 納得してもらった所で俺はクロを飼っている屋敷の離れへと向かうのだった――。




◇◇◇




「こんなところに閉じ込められたら寂しいのだ」



 俺の顔を見るなりクロは文句を言っている。

 しかし、口には食べかけの肉の欠片がついており、頬には先ほどまで眠っていたのか、あとが付いている。



「な、なんなのだ。なにか言ってほしいのだ」

「いや、ここでの生活を満喫してくれているようでよかったと思っただけだ」

「ぜんぜん満足してないのだ。もっと豪華な暮らしを所望するのだ」

「さすがにこれ以上は厳しいぞ……」



 そもそも最初は付いてくるのも断ったんだけどな。

 リリアたちと意気投合した結果、付いてくることになったが。



「それよりここに近づいてくる変な気配があるのだ。それなりの数だから危険なのだ」

「……待て。どっちから来ているかわかるか?」

「あっちなのだ」



 クロが指差したのは森が広がっている未開拓の地だった。


 魔物のスタンピードでも起きたのだろうか?

 とにかく早急に対処する必要がありそうだ。



「クロ、動いてもらってもいいか?」

「……面倒なのだ」

「わかった。餌を豪華にしてやる。それで手を打ってくれ」

「もう一声欲しいのじゃ」

「これ以上は難しそうだな……」

「カイルくん、それならこんなのはどうかな? 焼き肉を――」

「行ってくるのじゃ」



 クロは慌てて気配のする方へと飛んでいく。



「さて、それじゃあ俺も……」

「カイルくん、マルスくんが呼んでたよ。すぐに執務室に戻ってくれる?」

「いや、それどころじゃないと思うが――」

「大丈夫だよ。クロちゃんも行ったし、それに私とソフィちゃんが代わりに向かうからね」

「魔法が使えるソフィはともかく、リリアは危険だろ?」

「そんなことないよ。魔物相手なら私も十分やれるんだからね」



 殴る仕草をするリリアがあまりにも可愛らしかった。

 とりあえずのんびりしている余裕がないことはよくわかる。


 こんなタイミングでマルスが呼び出すくらいだ。

 相当な問題が起きたことくらい簡単に予想ができる。



「執務室だったな。行ってくる」

「うん、よろしくね」



 リリアがにっこり微笑みながら見送ってくれる。




◇◇◇




「マルス、何が起きた!?」



 駆け足気味に執務室へ戻るとマルスは地図を見て唸っていた。



「カイル、来てくれたんだな。見てくれ。この山から水を引こうと思ったんだが、高低差がある上に崖があったりして上手く流せないんだ。何か良い方法はないか?」

「水なら水道管を通して……。いや、管を作るのが大変なのか。一旦は木材で代用しておくか?」



 簡単に絵のようなものを書いてみせる。



「こういったのは作れそうか? 材料はマルスに任せるが」

「……できると思うが、これでも崖を越えることは――」

「水道橋を作ろう。なんだったら、上を実際に通れるようにしても良いと思うし、工事は大変だと思うが」

「それしかなさそうだな。ちょうど飛べる奴もいるから手伝ってもらうとする」

「クロだな……。そうだった。今は魔物が襲ってきて、それどころじゃ――」

「魔物ならもう討伐終わったのじゃ」



 窓から入ってきたのはソフィだった。

 なんだか艶々とした顔色になっている。



「それなりに満足したのじゃ。やっぱりため込むのは良くないのじゃ」

「大丈夫だった? かなりの魔物が現れたって聞いたけど、怪我はなかった?」

「誰に聞いたのじゃ? って、あのトカゲか。やはり実験動物にした後で焼き肉にすべきじゃな」



 ブツブツと恐ろしいことを言い始めるソフィ。

 ただ、一端の危険が去ったことだけは理解することが出来た。

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