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ルカ・ブラントのギフト  作者: ゴンザレス
第一章

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9/11

教会がご報告




「アーステラ教会の教祖は『異世界転移者』という者なんだ」

「知ってた」



 アイアンクローのおかげで何とか意識は保たれた。そして連れてこられた司教室でミゼラ様に、まるで重大な秘密を打ち明けてるみたいな感じで言われた事に反射で返してしまった。

 マズいかな…と思ったがテレンス様が何かに気付いたみたいに頷いてた。


「そういえばルカちゃん、『愛の蔵書室』に何度か入り込んでたもんね」

「あぁ、教祖の日記や小説の原本は女性の転生者が夢中になるらしいね」

「詳しくお願いします」


 詳しく聞きたかったのは日記と小説の原本の事なのに何故か教祖様の素晴らしい活躍を聞かされる事になった。




◇◇◇ 





 昔々ある所に頭おかしい国がありました。


 いつから始まったのか解らない偏りのある教育、自己中心的な民族性、大国である事をいい事に他国における傲慢な態度、それらを統べる悍ましき一族。


 体に毒が廻るようにようにゆっくりと周辺に拡がっていくこの国は、魔族よりも忌み嫌われ恐れられていました。


 誘拐、人身売買、違法な人体実験や魔法実験など、国家ぐるみで非道で残虐な行為を繰り返しており、更には他国の資源を奪い、土地を汚し、地形を変えては被害を出すという、まるで人の皮を被った悪霊だと他国の人間は嘆き悲しみました。


 そして


 この国の王族の一人がとある森を焼き払った直後、空を薄い膜が覆い隠しました。


 なんという事でしょう。国土を覆った膜から出る事が出来なくなってしまったではありませんか。

 貴族の馬車は足を止め、商人は焦り、冒険者は怒鳴り散らし、それ以外の出国者も出れずに立ち往生してしまいます。ですが一部の人間だけは出る事が出来たのです。ただ、入る事が出来なくなりました。この不思議な現象に誰も彼もが困り果てました。


 この国を覆う膜が張られて三日目の出来事です。

 国中が恐々としていた中で、突然空に浮かび上がるモノがありました。


 それは人間でした。他国から誘拐されてきた女性で、奴隷のような扱いを受けていた人です。ボロボロの姿で不安そうに地上を見ていました。すると自分以外の人間が次々と浮かんできました。無理矢理結婚させられた人や、騙されて連れてこられた人、監禁されていた人、この国の人間とは何もかも違う考えを持つ被害者とも言える人達でした。


 そんな彼等は四方八方へと膜の外に飛んでいきました。さながら願いを叶え終わった龍の玉のように。後に自分の居るべき場所へと戻って行ったと言われています。掴んで引き留めようとした人間もいたようですが、そもそも居たくて居たわけでもないので例外なく振り払われたそうです。


 二日程経って排出が終わったのか、今度は各地から人間が入ってきました。


 王女や王子、嫁入り、婿入りした貴族や平民。この国から出て行った人間達が戻されているのです。たまに他国で生まれたこの国の血筋の人間、この国の教育を受けた他国の人間、この国の考え方と同じ思考の人間、そういった者達がポイポイ膜の中に入ってきます。


 そして入ってきたのは人間だけではなかったのです。


 この国で作られた本や魔道具、魔石の付いた装飾具や絵画など。特に本は大量に戻ってきました。この様子を膜の外から見ていた人々はとても怖くなりました。


 この国の全てを国内に集めて、関係のないものは全て排除して、膜の中をこの国だけにして一体何が起こるのか。……人間には出来ないであろう事を目の前で見せられた人々は、直ぐさまこの国から離れました。ひたすら走ってできるだけ遠くに逃げたのです。

 

 国土を覆う薄い膜が張られて一週間後の朝に



 大きな大きな燃えるような拳が落ちてきました。



 この世界のどこからでも見える程の大きな拳は膜を通り抜けて国の全てを潰したのです。

 人も建物も山も森も何もかもが破壊され、一瞬にして崩壊しました。

 

 

 この時、誰もが感じたのは『怒り』です。



 この国の何一つ残さず消すという意思を、この世界の者達は感じ取ったのです。

 この国は神の怒りを買ったのです。

 そうして歴史も存在もなかった事にされました。神による出来事に人間が何を言えるでしょう。


 この後『神の一槌』と呼ばれた一撃により世界各国で地割れや地盤沈下が起こり、国々が分断され、地形が変わり国土が縮小する国が出てくるなど様々な被害が生じました。

 

 

 そうして世界は一度壊れてしまったのです。






 


────────アーステラ教会発行『よい子の設立挿話』より






◇◇◇




 子供に読み聞かせるための本としてルカもよく読んでもらったコレは、何が起こってこの教会を設立したのかを後世に伝えるために教祖が書いた本だ。。

 聞いていて一部に日本人っぽい表現が入ってないか?と思ったものだ。


 教祖はこの破壊された世界をなんとか再生するために連れてこられたそうで、酷すぎる無茶振りに思わず同情した。しかし今現在の状況からすると、彼はとても優秀だと分かる。まぁ奇跡…というか神様の力があったからこそ順調に復興できたんだと思われる。


 彼は人をまとめる為に手っ取り早く新たな宗教を設立して、インフラ整備も食糧問題も惜しみなく神の力を使った。現人神と呼ばれた程の奇跡を連発していたらしい。各国の立て直しにも力を貸し続け、次々と教会が設立されていった。

 

 その教会内は徹底して公平性を求め、信徒が理不尽な事や犯罪なんてした日には即行で神の雷が降ってくるという自動内部告発。犯罪者や人間性に問題のある者は教会の、神の信徒にはなれない。入信誓約書には神の力が込められているのでダメなら弾かれるのである。

 

 そういった神の力でギフト授与の儀式を行ったり、人間には解決できない犯罪の犯人に罰を与えたりと民衆に驚異的な力を見せる事で理解させる。

 

 ”神の怒りを買えば本にあった国のように罰が下される”

 それを当たり前に思う程に神様の力を見せつけ、その存在が人間達に浸透していった。


 ここで教会に権力とか権威で国を支配とかどうとか、そういったラノベのような展開は全く無い方向に持って行ったのが素晴らしいと思う。

 信徒からの献金で運営するのでは無く、特許や神罰の為の儀式とか教会ならではの力を使って商売してるのがいい。困ってる人を無償で助けるなんてどっかで破綻しそうなやり方じゃ無くて、助けるから何かしら働いて返せって方が余っ程健康的な気がする。


 教会の立場を良心的すぎる役所みたいな立ち位置にした教祖。何か問題が起これば自らが前に出て収める、そして粗方復興が終わった後は静かにゆっくりとフェードアウトしていったらしい。


「教祖様は転生者として生まれてきた子供達を殊の外慎重に扱うように言い残しました」

 

 一つ、転生者の証はギフトを二つ授かる事。

 一つ、転生者を人間扱いする事。

 一つ、転生者が困っていたら手助けする事。


 要するに”混乱しているかも知れない転生者を、特別扱いするでもなく普通に無理なく生きる事が出来るように支えてほしい。『転生者』がどんな存在かを知っているってだけでも安心を与える事ができるのだから、間違った道を進まないように導いておくれ。”との言葉が代々引き継がれているんだそうだ。


「そのおかげかは分からないけれど世界七偉人の全てが転生者なんだよ」


 腐らず真っ当に成長できたから能力を思う存分発揮して世界の発展に貢献した、という事かな。まだ何か色々エピソードを語ってるけどルカが二人の『教祖様すげー』ムーブを聞いてて思ったのは、上手く隠し通した『異世界転移者』の強かさだった。



 さて、そんな真っ当で誠実で欲の無い『異世界転移者』の教祖様。



 彼が只管この世界が安定する事に力を注ぎ走り回り、後世が平穏であるために全力を尽くしたのには訳がある。  






 

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