ギフトとは…?
余は満腹である。
アレも食えコレも食えされて朝から腹一杯。昨日から色々あり過ぎたので部屋でゆっくりしようと思う。本でも読もうかな。
「……………」
机の上に杖(鞭)と白い玉が五個。部屋の主より先に居るとはどういう事だ?役目を終えたから尻神様の元へ帰ったんじゃないのか?手に取ってジッと観察してみる。
正直に言えば鞭なんて前世でもそんなに見た事がない。テレビや写真とか何らかの媒体でしか確認した事がないので、本物を見るのはコレが初めてなのだ。
そう、キャットオブナインテイル。バラ鞭の方が解りやすいかも知れない。決してローズなウィップではない。もしかしたらルカがまだ子供で身長も低いからコレにしたという神様の気遣いなのかも……いや、違う。最初は叩けという頭おかしい方法だった。だから鞭だったのだ。きっと。……だったら本物の杖にしてくれないだろうか杖(鞭)じゃなくて。
「……ふぅ」
ついつい文句ばかりが出てしまうが本当に感謝している。
鞭で患部を叩けとか口に出すのが罰ゲームのような呪文を叫ばされたり、フキダシが玉になって転がり落ちてきたりと…常識的な転生者にする仕打ちじゃないとは思う。だけど病(痔)を治す術を与えられたのだと思えばなんとか耐えられる。……なんとか。
あとは尻の状態を視認できるのがすごいな。フキダシが刺さってる場所がアレだが。大臀筋でいいじゃないか。臀部に当て嵌まるんだから。
……いや、大臀筋はまた別のフキダシの刺さる場所だったな、そういえば。形もハート型で……あれは尻をそういう意味で狙ってる相手の情報か?それいる?尻の事だからって?そう……
「ギフト【尻】の意味は《尻の全てを司る》でファイナルアンサーなのか……」
神様?が願いに応えてくれた時点でそうだったんだろう。おそろいですね、尻の全てを司る神様。本当にありがとうございます。でもセンスはどうかと思います。
しかしこの杖(鞭)どうしよう。持ち歩くのはとても躊躇う。そしてこのウンk……いや、治療した人の患部から出てきたこの玉……何?拾ったときは気付かなかったけど、大きさと重さが違う。色もちょっと違うな、白いと思ってたけど薄いグレー?一番小さくて軽いのはほぼ白なんだけど大きくなるにつれて色と重さが変わってる。
────カチャ
ん?今誰か………
「……………」
「……………」
ルカはだるまさんが転んだを思い出した。
鬼が目を逸らしている間に動き、鬼がこっちを見ている時は誰も動いてはいけない、動いたら負けというルール。つまり目を逸らさなければどちらも動けない。そして今、アレから目を逸らせば多分次の瞬間にはルカの隣に居る。そんな気がする。
突然部屋に現れた生物………そう、河童(?)だ。
日本人なら十人中二十人は河童って言うであろう河童だ。一メートル位の身長で腰蓑と何故かショルダーバッグを持ち、頭に皿を乗せた…若草色で…顔が某スライムみたいな、お前どこ見てんだよ的な顔である。
三次元でも許せる程度にデフォルメされている得体の知れない生物(?)と見つめ合って数分後、向こうから動き出した。
ヤツは自分のショルダーバッグを探り一冊の本を取り出した。ペタ…ペタ…とルカの側までやって来て、そっと本を渡された。カタログ……?
ルカが渡された本を見てる間に、一番小さい玉をバッグに入れてドアを開けて去って行った。五分ぐらいドアを見ていたが、もう来なさそうなのでベッドに倒れた。昨日からファンタジーが仕事しすぎである。
なんだったんだ……アレ。
何故か日本語で書かれたカタログを流し読んでみる。
ギフトの説明、杖(鞭)の取り扱い、ポイント交換などが書いてあった。気になっていた玉の正体はなんと尻子玉だった。まさかさっきの河童……?いや、まあいい。
このポイント交換のポイントとは尻子玉の事らしく、数はもちろんだが重さや大きさで判定される。小さくて軽い玉を五個と大きくて重い玉一個が同等扱いされる事もあるようだ。判定するのは……あの河童かな……。
フム……
これは金になるのでは?
領民を治療するのは無料で、依頼とか金を持ってそうな人間からは金を取る。もちろん尻子玉は全てルカのモノである。そしてカタログの品をもらう。
カタログには呪文のレベルアップとか何か育てるキットみたいなのもあった。尻子玉バッグいいな……。とても夢が広がる。
領民の治療に関しては教会に相談しよう。男爵領の医療系は教会が担ってるからな。
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教会に行く前に【石ころ】を確認したい。何?【石ころ】って……。
正直【尻】のインパクトに負けて忘れていた。だって石ならまだしも石ころである。ころをつけるな。【石】なら色んな定義が出てくるが、【石ころ】じゃせいぜい某帽子しか思いつかない。
確か意味もそこら辺に転がっている小さい石とか取るに足りないとか価値がないとか、暴言か?みたいな解説だった記憶がある。どこにでもあるありふれた存在の比喩として使われる……。石ころにもっと優しくしてやってほしい。
そういった状態になれるのが某帽子だったはず。やっぱりそれしか思い浮かばなかった。アニメではなく原作の方を覚えている。アレの使用中は気を付けて行動しないと痛い目に遭うんだ。存在感がまさに石ころ。
しかしルカのはギフトであって、何かの媒体を使って…とかではないと思う。全く思いつかないこのギフト、なんでくれたんですか神様。
「……………」
【尻】に望んだのは治療だった。何故なら自分の尻にそこまで興味が湧かないので、身近な人間の尻の健康を願った。
ルカが【石ころ】に望むものとは
─────私は石ころになりたい……
某セリフを頭の中に浮かべてみた。とても恥ずかしい。今は日中なので誰かに聞かれる危険を冒せない。窓の外には洗濯中の女中さんがいるので声に出すのは控えた。頭ヤベーお嬢様と思われてしまう。
そうだ、ポイント貯めよう。この館の人間の殆どが痔だったので他にもいるのかも知れない。殆どと言ってもルカを抜かして五人しか今日は会っていないけど。【石ころ】はどうしたって?帽子が落ちてきたらコンプライアンス違反になっちゃう気がするので一旦中止。
早速女中さんの尻の様子を見るために外へ向かった。決して疚しい気持ちではない。
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丁度ルカの部屋から見える花畑の少し奥に、井戸と洗い場がある。今日も元気な女中の三人がお話ししながら洗濯していた。
隣の家の親父さんが奥さんに引っ叩かれて顔を腫らしていたとか、裏の家の嫁姑戦争に終止符がうたれそうだとか、ご近所の情報が話題でとても楽しそうだ。そしてノランが今日は朝から寝込んでいるらしい。ルカは鼻息が荒くなった。もしかして本懐を遂げたのかと。
もうちょっと詳しく聞きたかったのでソッと近づいてみた。ら
─────ディンッ!!
何の音かって?女中の一人に背後から近づいたら尻が突き出されてルカが跳ね飛ばされた音だが?「オブッ」とか声が出ちゃったが?二回転ぐらい転がったが?
しかも何事も無かったかのように洗った物を持って干しに行ってしまった。残りの二人も話しながら洗っている。目が合ったのに、声もかけられないまま洗濯が続行された。何……?
あまりの出来事にそれはないんじゃないかと話しかけようと近寄った。ら
─────ドゥン!!
二度目の尻attackである。
今度は横から声をかけようとしたのに、体を捻って汚れた水を流した拍子に尻がルカに牙をむいた。今度は三回転ぐらいした。哀れな五歳児はもう起き上がる気力が失せた。
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無視である。いないもの扱いである。そして昨日からのファンタジーの嵐にもうこの現象の見当は付いている。
─────私は石ころになりたい……
願いが届いた今、ルカは石ころになっているんだろう。……石ころになるって何?
辛い。これは辛い。突然だが某透明人間の歌を思い出した。アレに意識も感情もあったら辛すぎる。泣きそう。今気付いたんだがコレどうやって解除するんだろうか……。泣いた。
─────石ころになりたくない……
泣きながら館内に入ると驚いて走り寄ってくるジュールが見えた。
「お嬢様!!!一体何があったんですか!?」
ルカを認識している事に心底安心して更に泣いた。
「お嬢様ーー!?」
「何?エッ?ルカどうしたの!!?」
「ルカ?」
「お嬢様??」
阿鼻叫喚である。
☆☆☆☆
とりあえず【石ころ】は望めば石ころ並の存在感になって誰にも認識されないようになる、という結論に至った。この辛い経験を忘れずにいたいと思う。
そしてもう寝る。




