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レフ・アネモヌンの事件簿〜転生探偵は現代知識で異世界の殺人事件を謎解く〜  作者: 和泉 弘幸


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サラクタ側妃暗殺事件 6





 ◇◇◇


「……ゃん! レフ・アネモヌン!」


「はっ! か、カレウス?」


「えぇ貴方だけのパーフェクトメイドのカレウスよ。気分はどうかしら?」


「あ、あぁ今は大丈夫だ。それよりここは?」


「教皇様が一室を貸してくださったわ。念の為に回復魔法と解呪をしてくださったわ」


「そ、そうか。後で聖下にお礼を申し上げないとな」


 頭が徐々にはっきりしてきて、何があったかを思い出してきた。

 だけど最後に何が大事な事を気づいた気がするけど、朦朧とする意識で考えたから大事なことだったのだろうか?


「カレウス。俺が倒れる前に何か言ってたか?」


「姉上って言ってたって聞いたわよ?」


「姉上か。正確になんと言ってたか分かるか?」


「アタシは直接聞いてないから分からないわ」


「そりゃそうか。すまんな」


 姉上か。確か悪魔の死体をみて、どんどん体調が悪くなって、息苦しくて、胃が重くて、吐き気がして寒気もあった。

 普通に考えたら心理的な症状だけど、もしかして呪いなのか?


「あっそうか。あの時、呪いを考えて、、、!? カレウス! 急いで王城に戻るぞ!」


「ちょっとどうしたのよ!?」


「姉上の謎が解けた。証拠はまだない。かなり強引な手を使うから急いで陛下と父上にお目通り願う!」


「分かったわ!」


 急いで部屋を出ようとしてたところでカレウスがドアの前で立ち止まった。


「カレウス?」


「レフちゃん下がって!!」


 カレウスがそう言うと同時にドアから槍が生えてきた。

 いや、正しくは向こう側から槍を突き刺していた。


「カレウス! 怪我は無いか!?」


「大丈夫よ! そこ動かないでね! あと変なことしないでよ! 背後から爆発物投げられたら流石のアタシでも回避できないもの!」


 カレウスがそう言ったので、俺は大人しく壁を背にして、窓の横に陣取り、いつでも逃げられるようにして危険物をしまい、腕を組み、ガンガン! と音を立て、今まさに突破されそうなドアを見る。

 教会のドアは今日は厄日みたいだな。


「カレウス! お前が死ぬ時は俺が死ぬ時だ! 死なせたくないならしっかり守ってくれよ!」


「あら♡ 滾っちゃうじゃない♡」


 カレウスがそう言うと武装した男たちがドアを蹴破り、槍を携えて押し入ってきた。

 正直、ここまではしっかりした襲撃は初めてだが、魔物や賊に襲われたことは何度もあり、その度にカレウスが蹴散らしてくれたので、またか。という気持ちでがんばれ〜とカレウスを応援するしかない。

 カレウスが勝てないやつに俺が勝てる理由がないからな!

 ヤバそうなら閃光弾で目を潰して普通のポーションぶん投げてとっとと逃げる心構えだけして、後方彼氏面をしながら目の前のアクションを楽しむことにした。


「メイド服を着ている大柄な男、間違いない!」

「カレウス・ベルフラワーにレフ・アネモヌンだな! 主命によりお命頂戴致す!」


 2メートルほどの槍を持った男が4名と、指揮官と思われる剣を持った男が俺たちを確認すると槍を構えて、ドアを塞ぎ、槍衾を展開する。

 室内で振り回せない槍は不向きと思われがちだが、逃げ場を封じて、リーチの長さで完封できる槍は室内での襲撃でも使われる非常に強力な武器になる。

 距離を取って集団で突くだけで厄介だが、カレウスはどうするのだろうか?

 ちなみに俺には思いつかないからどう対処するのか楽しみだ。 


「たった5人? 1桁足りないじゃない。アタシも舐められたものね。さぁお掃除を始めましょう」


 そう言うとカレウスはスカートの中に手を突っ込み、三節棍のように折りたたまれているモップを取り出して、魔力を流しながら柄を正面に構えた。

 

「カレウス・ベルフラワー推して参る!」


 今まで見たことのないような真剣な顔つきで、威嚇するように魔力を放出するカレウス。

 誰ひとり、ここを通さないという気迫と心強さがある。


 ちなみにあのモップは特注で三節棍のように折りたたみ可能だが、性能は魔力を通しやすく、通すと硬化する柄で、ヌンチャクみたいなことは出来ない。

 モップの柄だが、実際は棍棒の隠し武器に近い。


「……隠し武器、棒使いか」

「つまり男色の棒使い。なんて意味深なんだ」


「うるさいわね! 全員ここで末代にしてあげるわ!!」


 あっキレたカレウスが机を蹴り飛ばして怯ませた。

 そして一番近くの敵に接近して、槍をモップの柄で絡めて弾いて隙ができた股間に膝を入れる。

 見てるこっちもヒュンっとする光景だが、カレウスは手を緩めず、悶絶する男の顎を膝で打ち抜く。


「おい! 槍衾で隙間を埋めろ! リーチを活かして奥に押し止めてやるぞ!」


「指示が遅い!」


 1人目を倒したカレウスは次いで近くにいた者の槍を掴んで、勢いよく引いて体勢を崩して、モップの柄で脳天を叩いて脳震盪を起こさせる。

 ……ゴリラかよ。鍛えて甲冑を着てる兵士に片手で体勢崩させるのは流石、爆乳と自負するすごい大胸筋を持っているだけのことはある。


「次!」


 そう叫ぶとカレウスは近いやつの懐に入って、しゃがみこんで、立ち上がりながら顎を狙うが、相手はそれをギリギリで横に躱して、槍の柄でカレウスを狙う。


「おバカ! この距離なら隙が小さくて早い膝か、押し倒すつもりで体(たい)かましなさい!」


 そう言いながら鼻に頭突きを食らわして、股間を蹴り上げると相手は『ぐぎゃっ』とゴブリンのような断末魔を上げ、地に伏した。

 それにしてもカレウスを押し倒すのか。

 情報をまとめると誘い受k、いや今はそれどころじゃないな!

 あと、なんで敵の指導してるんだよ。

 それと敵もこっち狙えよ。カレウスばっかりに気をとられるなよ。

 俺だっていつでも避ける準備はしてるんだからな。


「あと2人! 歯を食いしばりなさい!」


「退くぞ! そろそろ教会の連中も来る!これ以上は無意味だ!」


 相手はそういうが早いか、懐から何かを取り出して地面に叩きつけると、煙幕が上がる。


「あっまずい!」


 煙を見た瞬間に窓ガラスを叩き割って地面に伏せる。

 念の為に窓ガラスの近くにいてよかったと思いながら、解毒用のポーションを口に含んで、隠し持っているエリクサーをいつでも出せる準備をした。


 ただの煙幕ならよし。毒があるとかなりまずい。

 窓から逃げようとして伏兵も考えられるので、ハンカチで口元を押えて、今できるベストな選択肢をとる。


 息を殺しながら周囲の気配を探っていると、ドアの外が騒がしくなってきた。

 どうやら教会の人達が異変に気付いて来てくれたのだろう。


「アネモヌン卿! ご無事ですか!?」

「煙幕が邪魔だ! 風で散らします!」

 

 恐らく教会の人間がそう言うと魔法で煙幕を散らす。


「レフちゃん無事!?」


「大丈夫だ! カレウスこそ無事か?」


「本職の暗殺者ならともかく、騎士相手にアタシが負けるわけないでしょ。あの程度で討たれたら要人の護衛なんて出来ないわ」


 カレウスと無事を確かめ合ったところで、教会の人間に向かい合う。


「すまない。この件の事情の説明と損害の弁償などは後で必ずするので今は先を急ぎたいがよろしいか?」


「そ、それは私どもの判断では、、、」


「これは恐らく教会上層部も巻き込んだ問題になる国の一大事となる。私は陛下の御前に今すぐ参上せねばならなくなった。これは陛下の命を受け、王の義弟として勅命を受けたレフ・アネモネーとしての決断だ。すまないが止めると言うなら押し通るぞ」


 王族とカレウス(武力)というあらゆる威を借りる最悪のパワハラだが時間がない。

 もう口論している時間すら惜しいのだ。

 本気で押し通ると足に力を入れたところで、ゆったりと気品のある爺様が歩いてこられた。

 その方の名はルドー六世聖下。

 教会の最高責任者たる教皇だった。


「構いませんよ。教会内であのような狼藉は許されてはなりません。あれらはこちらで処置した後に引き渡しましょう。悪い膿は出し切ってから治療した方が予後が良いですからな」


 そう言う彼は辺りに伏している男たちを見る。

 聖下は彼らを教会内に手引きしたものがいると気づいているみたいだな。

 いや、ずっと怪しかったものを大掃除することに決めたのかもしれない。


「さぁお急ぎなされ」


「聖下様のご判断に深く感謝致します」


 深く頭を下げた後に、廊下を駆け抜けて教会の外に出る。


「レフちゃん掴まって!」


「ん?」

 

 普通に馬車に乗ろうとしたらカレウスに手を掴まれた。


「えっ? どうしたんだ?」


 また敵襲か! と警戒したがそんな感じでは無さそうだな。


「急ぐんでしょ! えぇい! まどろっこしいわね! 暴れても無駄だから暴れないでね!」


「えっ! ちょっ! うおっ!?」


 カレウスは俺を引き寄せるとそのまま強引に抱き抱えてきた。

 こ、これはお姫様抱っこ!?


「この方が早いわ! 全力で走るから酔わないように注意してね!」


「えっ? えっ? ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


 言うが早いか、魔力を全身に纏わせて強化した体でとんでもない速度で駆け出すカレウス。


 風がめっちゃ強いし、振動で気持ち悪いのに、逞しい胸に抱きしめられる安心感と、はじけるような筋肉の感触……ぬくもり……俺はお姫様なのかもしれない、、、


「レフちゃん! 舌噛まないように気をつけながら教えて欲しいのだけど、襲われる前に何が分かったの?」


「あ、あぁ。姉上は呪いによって呪殺された! そしてその呪いには深く教会が関係している。あの日、教会が王城にまで来て探していたのは悪魔の血だ! そして姉上はそれを使われて殺されたんだ!」


「どうして分かったの?」


「持ち出しが簡単で、呪いに使えて、教会がわざわざ研究材料にしながら危険物としているのなんて悪魔関係しかない!

 そして食事に混入させても目立たず、証拠品を持ち出して逃亡した侍女が転落の際に、瓶が割れて、血が触れて呪いが発動する。そんな強力かつ簡単な呪いは、悪魔の血以外にはありえない!」


「理解したわ! でもまだ証拠がないのね?」


「あぁ決定的な証拠を掴む為に急いで陛下にお目通り願う。謎は全て解けた」


 探偵として一度は言ってみたいセリフを俺は爆走する爆乳ムチムチオネエさんメイドにお姫様抱っこされながらキメ顔で言った。



 




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