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レフ・アネモヌンの事件簿〜転生探偵は現代知識で異世界の殺人事件を謎解く〜  作者: 和泉 弘幸


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サラクタ側妃暗殺事件 3




「先日はお世話になりました。また厄介な事件が起きており、是非とも司教様のお知恵を拝借したいのですが、お時間をいただけますか?」


 俺はいつもの教会。つまり南側にある教会で、カレウスいわく、元特務部隊の司教の元へと来ていた。

 ちなみに今日はカレウスにはゴールマ辺境伯の裁判の資料を取りに向かってもらってる。


「おぉこれはこれはアネモヌン卿!拘束されたと聞きましたが、お元気そうで何よりです。この私に役に立てることがあれば何なりと申してください」


「ここではお話することができないので、申し訳ないですが機密性の高い部屋をお貸し願いませんか?」


「……っ!? かしこまりました。それでは奥の部屋に案内しましょう」


 手帳にメモした魔法陣を見せると、司教の顔が一瞬固まったが、すぐに元の温和な表情に戻ると奥の部屋に案内してくれた。



「アネモヌン卿、先ほどのものは何処で見つけられたのですかな?」


「申し訳ありません。詳しくは話せませんが、原物はきちんと処理されており、教会側もこの魔法陣のある場所は知っており、把握はしているということはお伝え致します」


「それならば結構です。アネモヌン卿がそれを持ってきたということは、事件に関わることなのでしょうし、ただの司教である私が出来ることは無さそうですが、どうなされたのですか?」


「端的に申しますとこれに対する知識を教えてください」


「それについては教えることはできません。それは禁忌であり、知る権利があるのは、貴族であるなら王族のみ、我々では枢機卿以上だけで私は過去の仕事で似たようなものを見ただけなのです。本来、卿がそれが何かを理解して、類似品を持っているだけでも危険な品物です」


 この悪魔召喚の陣はそれほどのものなのか。

 だから禁忌にされているし、知るものは限られているから王族である姉上に押し付けられたのか。


「そうですか。では悪魔について教えていただきたい」


「悪魔についてですね。まずは大前提として悪魔とは人を堕落させ、人を喰らう生物です。そして最大の特徴は人が呼び出せる魔族ということです」


「人が呼び出せるですか、、、」


 これは元の世界でも考えられていたし、フィクションの鉄板だったな。

 今のところは俺の知識と乖離はない。


「そうです。いくつか方法はあるのですが、召喚陣を使うのであれば、術者とは別に人を生贄に捧げる、術者自身を生贄とする、憑依させるというものがあります」


「その中で遺体が残らない方法はどれでしょうか?」


「遺体が残らないですか? ふーーむ? 寡聞にして聞いたことがありませんね」


 なるほど。生贄になっても遺体は残るタイプか。

 ではやはり姉上は何処に消えてしまったのだ?


「そうですか。それでは悪魔への対策や憑依された者を助け出す方法はあるのですか?」


「悪魔への対策は聖水や聖灰などで清めた武器を使うか、神聖魔法か、魔法対策で固めてしまうかですね。憑依された悪魔の強さにもよりますが、ほとんどは悪魔祓いで救えますね」


「魔法対策ですか?」


「そうです。悪魔というのは個体差はあれど一番の脅威は魔法です。魔法対策をしっかりすれば訓練を積んだ騎士の小隊や一流の戦士がいれば十分打ち取れるでしょう。そもそも大規模な術式を使わなければ大悪魔は降臨できず、個人では良く準備しても中級の悪魔なので、対策していれば不覚は取らぬでしょう」

「あぁあと1つ、重大な特徴がありました。悪魔はその血の一滴まで強い魔力と強力な呪いがあります。この血は非常に危険なのですが魔法対策をしていると、この血液の呪いも弱まります。呪いも解呪すれば問題ありませんから、やはり対策していると敵ではありません」


 自身の体験も踏まえているからか饒舌に話してくれるな。

 教会の秘蔵の部隊って強いんだろなぁ、、、

 フィクションでも強いし、そもそも日本も修行僧とか僧兵はちゃんと強かったし、槍で有名な宝蔵院流とか興福寺発祥だし、興福寺はほぼ戦国大名だったからな。

 まあ聖職者は時間が他の職よりあるから、メンデルみたいに実験したり、訓練に割く時間が作りやすいからな。

 いや、それは貴族も同じか。

 だから俺は知識階級らしく法律家と錬金術やってるんだからな。


 おっと話題がそれたな。

 血と呪いね。いかにも悪魔って感じだ。

 それじゃ最後にこいつの話を聞いてお暇しようかな。


「ところで司教様、こちらについてなのですが、こちらを見て何か分かることはございませんか?」


 姉上の部屋で書き写した魔法陣を司祭に見せると、司祭はそっと首を振った。


「申し訳ないのですが、私は基本的な知識と戦うすべは知っているのですが、魔法陣などの詳しい知識は枢機卿以上の方々しか伝えられておりませんので、私に分かることはありません。ただおそらく元となった魔法陣は本物でしょう」


「ありがとうございます。伝承や昔話でもいいので悪魔について記載されている書物はありませんか?」


「それならいくつかありますので、ご案内致します」


◇◇◇ 



 司祭が案内してくれた箇所に魔族に関する書物がまとめられており、俺はいくつか手に取ってみた。

 

「うーーん参考になりそうなものはないか」


 だが、どれもイマイチ今回の事件には当てはまらないものばかりだった。

 唯一、役に立ちそうな物は悪魔は魔力と人間の魂を糧としており、人の魂と魔力は悪魔にとってご馳走だと言うことだった。


「ついでに召喚魔法、契約魔法、あと魔族について書かれているのも見るか」


 基本的にこの時代のものは羊皮紙かつ手書きなので本1冊に対する情報量が少ないから、サクサクと読めてしまうので、ドンドン手に取り、情報を詰め込んだ。


 その中でも役に立ちそうなのは、悪魔に死という概念はなく、殺した悪魔は清めて再生を遅くして、また呼び出されて地上に出現するのを遅くしているだけと言うこと、あと魔族は本人の角や腕、血液、縁の品に召喚が魔力を捧げると可能らしい。

 またいくつか条件があるが、悪魔は特に簡単らしく、昔にある国が大悪魔を退け、その際に床に流れた呪われた血を解呪して清めようと浄化するところを、怪我を治そうとした騎士がポーションをこぼして血かけてしまい、魔力を与えてしまい、先程の悪魔が召喚されてお互いにバテバテの状態で、第2Rが始まったとあるのは不謹慎だが、少し面白かった。

 最終的には解呪するために呼ばれていたその地方の枢機卿が、兵士から剣を借り受けて、その場で聖言を紡いで浄めて、悪魔を切り裂いたらしい。

 教会によると魔力を与えると活性化して呪いの進行が早くなったりすると結論づけられていた。


 あと面白いといえば、子供の頃に姉上と読んだ英雄譚の初版があった。

 大筋は変わっていなかったが、やはり時代が経つにつれて内容が変わってしまうので、その原典とも言えるものを知れたのは少し心が踊った。

 

 内容としては魔王を名乗った竜を討ち果たした気高き英雄が、討伐の際に竜の血を浴びてしまい、邪気によって堕落してしまい、血がかからなかった背中以外は邪気で覆われ攻撃を防ぐ無敵の存在になった。

 そして凱旋した英雄は邪気に飲まれて王家を簒奪し、悪政を敷いてしまう。

 だが、英雄であった父に憧れていた正義の心を持った我が子に背後から刺されて討たれた。という俗な名前の英雄の話に色んなものを足したような話だが、なかなか面白かった。

 個人的には背中を貫かれて血を失いながら正気に戻り、我が子の成長を喜び、最期の力で邪気を封じたのはかなり良かった。


 ちなみに現在伝わっているのは、魔王は堕天した天使であり、その畏怖の象徴である竜のような姿になったか、当時の人々はデカくて強い者をとりあえず竜と呼んだから、竜として表現されていると言われている。


「この世界だと本当にあったかもしれないのが面白いな。元の世界だとこの手の話は、権力を得て変わってしまったミイラ取りがミイラになるやつが多いからな。悪魔の血を浴びたら悪魔になるとかの話が、教訓とかじゃなく、本当にあったかもしれないだけでちょっと楽しいな。俺もスローライフでこういう考古学や民話、神話研究してもいいな」


 あっまた話が逸れたな。

 これが僕の悪い癖です。

 いや、そんなこと言ってないで忘れないうちに司祭と書物にあった話をまとめる。



 悪魔の知識は俺の知識と乖離は少ない。

 悪魔、特に魔法陣についての知識があるのは王族、枢機卿クラスで情報規制が厳しく、ほとんどの貴族は魔法陣については知らない。

 血にも強い魔力と強力な呪いがあるらしい。

 遺体が残らない方法は司祭様も知らない。

 魔法対策がガチガチの城の中では討伐は十分可能。

 過去の歴史を見るに、魔法陣での呼び出しは難しいが、血があれば魔力を与えれば誰でも召喚はできそう。

 初版の英雄譚、面白かった。



「こんなもんだな。この中だと血がかなり重要そうだな。いや、待て待て!部屋に血痕はあったが魔素鑑しても魔素痕が出てないぞ!?」


 どういうことだ?

 いや、落ち着け。あの部屋は事件当日のままだが、部屋には教会の人間が入っている。

 ならその時に解呪はしてそうだな。

 呪いがある部屋に封印魔法とか、危ないことになるかもしれないから処理した可能性はある。

 しかし、その場合でも魔素痕は残るんじゃ?


 ……あ〜神の祝福とか奇跡とかか。

 別ベクトルなら魔素痕が残らない可能性はある。

 解呪とかが魔法ではなく神の奇跡なのかもしれない。

 あくまでも魔素鑑定というのは、魔法が使われた際に煤のように出てくる魔素の痕跡を見つけるもの。

 違う形態の技術が使われていたら無理だな。

 この世界にあるか知らないがお坊さんの法力とか、仏様の力を借りてるらしいから、魔法じゃないし。


 この世界には奇跡も魔法もあるんだったな!

 推理のノイズになる魔法対策をしたら奇跡をお出しするのやめろよ!くそですわよ!!!


 危うく教会の机を台パンしかけたが、流石にそれは辞めた。

 俺は貴族なんだ。お優雅でお上品なお貴族様なので、そんなことはしてはいけないからな。

 よし! 切り替えれた。お城へ帰って義兄と姪と父と友人で食卓を囲もう。

 暖かいご飯を食べてゆっくり寝てまた明日だ。

 裁判資料なんて明日に回してしまおう。そうだ!それがいい。



 俺はとても疲れたので今日は暖かい食事をみんなで食べて、ゆっくり寝た。


 

 




 

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