↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レフ・アネモヌンの事件簿〜転生探偵は現代知識で異世界の殺人事件を謎解く〜  作者: 和泉 弘幸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/30

名探偵カレウス 7



 アタシは殿下とのお茶を終えて、グラド卿とレリヴァを連れて王城を出ようとして、正門に向かっていると何やら黒い煙が上がっているのを見た。


 

「うっそ!? ひゃだ! 火事かしら! ちょっとアンタたちいくわよっっっ!」


 


 一人と一羽を連れて、火元へ行くとそこにはただ廃棄物用の焼却炉が稼働していた。


「なんだ。ただの焼却炉じゃない」


 まあそうよね。そんな簡単に事件なんて起こらないし、王城で火が出てたら大騒ぎしてるわね。

 

「そういえばここに焼却炉があったっすね。それにしてもベルフラワー卿は数年前まで王城にいたのに忘れすぎじゃないっすか?」


「うるさいわねぇ。アタシの中で王城の思い出はほとんどサラクタ様で埋め尽くされてるから他の事は覚えてないのよ」


「ペン! ペペーン!」


「今度はどうしたのよ」


 また鳥畜生が騒ぎ出したわね。

 この子、いったい何なのかしらね。


「グェッ! グェェェ!!!」


 その視線の先にあるのは焼却炉。

 そしてその扉に何かが挟まれているのが見える。


「ん? これは布? 燃えてるから分からないけど、引っ張り出せばいいのね」


 火傷しないように身体に魔力を纏わせて扉を開くと、サッとペンギンが飛び込んだ。


「コラ! 何してるの! 危ないし、ばっちいでしょ!!」


 慌てて引っ張り出した焼き鳥は、焼却炉から出ていた布を咥えていた。

 そういえばこいつ、グレイペンギンだからこの程度の火なら問題ないわね。


「ちょっと何咥えているの?」


「グワー」


「これはさっき見えてた布ね? ちょっと!? これ血痕がついてるじゃない!!」


「うぇぇ!? 本当っすか! 重要な証拠かもしれないっす!」


 手に取った布は黒をベースとして、何やら一部が裂けており、そのまわりに血痕が付着していた。

 

「けどこれ事件の証拠品だとしたら何故今焼いてるのかしら? レフちゃんが捕まったのは昨日でしょ?」


「それは昨日にレフ卿が捕まっても、念の為に全員の話を聞いていたから、証拠品を捨てる時間がなかったか、焼却炉を使う日がたまたま今日だったかのどっちかっすね」


「あぁなるほど。とりあえずこれ誰かに渡した方がいいけど、殿下に気安く会えないし、どうしましょうか?」


「なら自分が騎士団長に渡してくるっす! そして念の為にデルン伯爵令嬢様にもお伝えしておくっす!」


「ありがとう。アタシは先に帰らせてもらうけど、何かあったら法律事務所まで来てね」



 アタシは証拠品をグラド卿に任せて帰宅することにした。



◇



 事務所に帰るとやけに静かで寂しく感じる。

 お紅茶を淹れても、飲んで美味しいと言ってくれる人がいないというのは寂しいものね。


 うん。

 アタシ、ダメね。

 レフちゃんとの生活に慣れすぎておセンチな気分になっちゃってる。


「くよくよしても仕方ないわ! まずはレフちゃんの手帳を見てみましょう」


 わざわざ二重底にしてまで隠したこの手帳には何が書いてあるかしら?

 レフちゃんの抱えている秘密とか?

 いや、無いわね。彼は言えない秘密は絶対に残さない。

 わざわざ文章にするなんて愚を犯さないわ。


 そう思いながら開いてみると——


 【エリクサーの作り方】


「おばか!」


 なんてものメモしてるのよ!

 驚いてメモ帳を落としそうになったじゃない。


「まったく。レフ・アネモヌンともあろう人がなんてもの書いてるのよ」

「……いやおかしいわ。あのレフちゃんが? ありえないわ」


 彼はこんな堂々とやばい物は書かない。

 つまりこれは危険じゃないと判断した。または隠していた理由を誤認させるものじゃないかしら。


 よくよく見てると、エリクサーの必要素材には賢者の石が必須と書いてあるじゃない。

 賢者の石なんて伝説的なものをホイホイ持ってる訳ないでしょ。

 ならこれは本命から目を逸らすものだわ。


 レフちゃんはこういう小細工やるわね。と思いながら読み進めると書いていた内容と隠していた理由もわかった。


「これ過去の事件のまとめと、解決した際にアプローチした思考、事件解決に使えそうな理論の組み方や心構えじゃない」


 それは見る人が見なければ役に立たないメモ。

 だが——


「これ色んな推理の考え方と、起こった事件をメモしてるから悪意を持つ人間が見ると、バレにくい犯罪の手引書になるわね」


 殺したい人間がいる人がこれを見たら、実行してしまうと思えるほど詳しく書かれている。

 

「アタシにこれを託してくれたなら、その信頼に応えないとパーフェクトメイドの名が廃るわ」


 書いてあることをまとめるとこうだった。


 ・証人の言うことは全てを信じるな。嘘をつくものもいれば、勘違いや思い込んだ証言もある。


 ・証拠品や怪しい物はちゃんと調べろ。思わぬ手がかりや偽造された証拠もある。


 ・犯人の立場になり、何故それをしたかを考える。


 ・行き詰まるか、何か引っかかれば証拠品、証言、事件概要を見ろ。


 ・発想を逆転させろ。


 ひとまずはこれで出来るところや分かるところから考えてみましょう。


「レフちゃんいつも難しい顔したり、分からないって叫び出したり、それはいくらなんでもありえないでしょって仮説を立てるけど、アタシもそうなるのかしら」

 

 まあいいわ。

 まずは分かりやすい犯人の立場に立ってみましょう。


「政治的な話を除いて、レフちゃんの話を信じた上で考えてみましょうか」


 レフちゃんは案内されて部屋に行った。

 部屋に行くとナタリア様が血を流して倒れていた。

 そして近づいてポーションで治療しようとしたところ、背後から何者かに殴られ気を失った。


「ここまでがレフちゃんの証言で、ここからが第三者かつ真犯人がいたと仮定した場合に考えられる行動ね」


 気絶したレフちゃんに返り血が付くように、いい感じの位置に置くか、ナタリア様をドアに立てかけるか何かして、レフちゃんを盾にして刃物を抜いた。

 その後、部屋の鍵を閉めて逃亡。


「流石にこれはとんでも推理だわ」

 

 まず手間がかかりすぎてる。

 そして後ろ向きにナタリア様を立たせて、背後から刃物を抜けば、レフちゃんに血痕がつくかもしれない。

 だけどレフちゃんは多分刃物を見てないと言っていた。

 仮に刃物が刺さっていても既に事切れているナタリア様から返り血が付くほどの出血はするのかしら?



「遺体から刃物を抜くと、そもそもあんまり血が飛ばないのよね。瀕死だけどまだ生きていたのかしら? いえ、グナー様の話ではほぼ即死。それならレフちゃんが見た時には死んでいたと考えるのが普通ね」


 なにかしら?

 何かが引っかかるのよね、、、

 こういう時は事件の概要と証拠品、証言を確認した方がいいのよね。

 レフちゃんの教えに従って手帳を開く。


「あっ!!!! ポーション! そう! ポーションよ!」


 なんでナタリア様はポーションを飲んだのよ!

 こないだの事件でポーション健康法があるとか聞いたけど、ナタリア様は出家なされてシスターなのよ。

 日常的に使うならポーションよりも回復魔法でしょ。

 ご自身は治癒魔法が得意じゃなくても、体調不良とかがあるなら教会の人にかけてもらえばいいじゃない。


 

 それにポーションを飲んだということは傷を治すのが目的ね。

 当然、亡くなっていれば無意味。

 生きてるうちに飲まないといけない。

 けど、ナタリア様はほぼ即死でそんな時間は無いので、殺される前に飲んでいる。


「これが引っかかってるのよね」


 

 つまりポーションを飲む時間と理由があったわけね。

 効果が出ているなら一度傷は治っている。

 

「そうよ。ポーションを飲んだら効くはずなのよ。つまり傷が治ってる。思い出しなさいカレウス。アタシは何に引っかかったの」


 何か大事なことを見落としている気がする。

 このもどかしさが続けば、そりゃレフちゃんも奇行に走るわね。

 ん?レフちゃん?

 そうだ!あの時、レフちゃんは刺さった刃物は見ていない。

 

「そうよ!レフちゃんは血痕しか見てないのよ! えっ? えっ? 嘘でしょ!? もしかしてそういうこと?」



 そういう事だったのね。

 けどこのままだと証拠がないわ。

 あと1歩。あと1歩だけレフちゃんの無罪の証明には足りない。


 どうしたものかと悩んでいるとドアが何度も叩かれた。


「ベルフラワー卿! しょ、証拠品だったっす! あの布の正体が分かったっす!」


 それはレフちゃんの無罪を証明する最後のピースだった。

 

 

 


 

 















 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。