名探偵カレウス 1
「先生ようこそ、おいで下さいましたわ~!」
「もう先生ではありませんので、レフ・アネモヌンとお呼びください、クリュザンテーメ王女殿下」
王城に着くと、飛びかかってきた姪のクリュザンテーメ・ヴィーゼ王女殿下を軽くいなす。
至急、登城しろとの事だったがそんな雰囲気は全く感じさせなかった。
急ぎということもあり、カレウスを連れてくる許可も取らず一人でやってきたのだが、正直急ぐ必要はなかったかもしれない。
「クリュとお呼びください! それに私にとってはいつまでも自慢の先生ですわ。後任の方が劣っていることはありませんが、私に1番合っていると思ったのは先生だけですわ!」
「過分な評価をいただき誠にありがとうございます。して本日は急ぎで私をご指名とのことですが、どうなさいましたか?」
「そうでしたわ! 実はお聞き及びかもしれませんが、錬金術で金を作るのを禁止する法案を作るのですが、それを始めとしていくつかの派閥が錬金術師に対する法整備を進めようとしておりますの。それで錬金術師の先生にお話をお聞きしたいと思いまして」
「例えばどのような法案があがってきているのですか?」
「まともなのは錬金術師を国が管理すべきというものから、全てのレシピを国が把握すべきだとか、逆に全てを公開しろ、アレなのは神の意に反しているから禁忌にしろや、異端者なので処刑しろとかですわ」
「個人の考えといたしましては錬金術師を管理とまではいきませんが、国が把握して可能であれば医師と同じように資格制にした方が良いと思います。今は金がかかる貴族の道楽学問として扱われることが多いですが、これから先、市民階級の者が手を出した時に必ず問題が起こります。具体的には質の悪い素材で作って粗悪なポーションが流通したり、爆発事故が必ず起こります。そういうのを防ぐためにも資格制にして一定以上の水準を確保すべきだと愚考致します」
「先生のお考えは分かりましたわ! ではレシピと教会の過激派の意見はどうでしょうか?」
「王家だけがレシピを独占するというのは貴族たちの不満に繋がります。エリクサーのレシピを王家が秘蔵しているなど言われたら面倒なだけです。教会に関しては神の教えに反しているのであれば、錬金術など出来ないはず。出来るのであれば神はお認めになっているのです。また加工をするのを許さないと言うなら薬、武器の製造も加工なのです。ポーションという商売敵が気に食わないだけだと存じます」
「貴重なご意見を感謝致しますわ。私はこれから用がありますのでまた夕食の際におじい様とお会いしましょう! あぁそれと何やら教会に不穏な動きがあり、周りが騒がしくなってますので、ご用心してくださいまし」
クリュは後半の言葉を小声でそっと話して俺に背を向ける。
「これはありがとうございます。皆様の邪魔にならぬように大人しくしておきます」
なるほど。彼女がわざわざ急ぎで呼んだのはこれか。
どうも教会には俺を排除したいやつがいるみたいだな。
彼女はそれを伝えたく呼び寄せた。
それは近日中に事を起こしそうな気配があるから伯爵家か王家の元でしばらく大人しくしておけとのことなんだろう。
そう思っていると1人の騎士が近づいて声をかけてきた。
「レフ・アネモヌン様ですね。ゴールマ辺境伯がお会いしたいとの事で、部屋を用意していますので御手数ですがお越しください」
「なんと! 承知致しました。すぐに参ります」
ゴールマ辺境伯が何の用だろうか?
俺も姉の件で話してみたいと思ってはいたが、ゴールマ辺境伯は軍閥派であり、王家が掲げる経済支配とは主張が対立している。
そして俺は当然王権派で、陛下たちの教育係だった事を考えたら、ゴールマ辺境伯はこいつが余計なことを吹き込んでるなと思われてもおかしくない。
実際その通りで、姉を通じて経済支配の有用性と、内部浸透させてから戦争した方が圧倒的に効率的だと陛下に吹き込んだ。
だって錬金術師は市場が安定している方がいいし。
だが軍閥筆頭格のゴールマ辺境伯からしたら、利益を貪る商人のような俺はめちゃくちゃ嫌いな人間の可能性もある。
つまり普通に嫌われてそうだから会いたくない。
呼び出しと言う点でも、きな臭さを感じるし、先ほどクリュにも言われたばかりだし、行きたくは無いが上手く行けば姉の事件が詳しく聞ける。
用心しながらいざとなればすぐ逃げられるような準備をして部屋に向かうことにした。
「ここだな」
どうせ辺境伯は居なくて、しばらく待たされるんだろなと思いながら、ノックしたが返事がないので、ドアを開けて部屋に入る。
「レフ・アネモヌン、入室いたします……っ! 大丈夫ですか!」
ドアを開けて入室すると、部屋の奥で修道服を着た人が血を流して、うつ伏せで倒れているのが見えたので、ポーションを取り出して走り出す。
「えっ!? ナタリアさ……うぐっ!」
血を流している人物に驚いた瞬間に後頭部に弾けるような衝撃が走り、俺の意識はここで途切れた。
「……ぅ! …………卿! レフ・アネモヌン卿!」
「うっ、、、あ、頭が、、、すまんが少し静かにしてくれ……」
「レフ・アネモヌン卿。卿を殺人の重要参考人として拘束します」
「は?」
ズキズキと頭が酷く痛む中、やけに鮮明に聞こえた言葉に、間が抜けた返事をすると、屈強な男たちに拘束されることになった。
くそ、、、ハメられたな。
だが、俺が死んでもカレウスがいる。
くくっ舐めるなよ。
俺の相棒は世界一頼りになる奴だからな。




