第33話:伯父様は協力者の1人の様です
奥様の後ろにいたのは、お母様の兄でもある、グラッセル侯爵だ。お母様亡きあと、私を気遣ってくれた数少ない人物だったのだが…
私と伯父様が会う事を極端に嫌っていた父によって、ほとんど交流を持つことはなかったのだ。
「本当にマリーなんだな。よかった。実は今王都で、マリーが行方不明になったと大騒ぎになっている。そして少し前、マリーがルイード殿下と正式に婚約破棄をした事、さらにシャラティア公爵が、マリーと親子の縁を切った事が陛下によって発表されたんだよ。王族たちの公務は滞っているし、マリーの姿は見当たらないとのことで、マリーの身に何かあったのではないかと、貴族中で噂になっていたんだ。だから、陛下も隠し通すことが出来なかったのだろう」
「まあ、そうだったのですね。やはり公務が滞っているのですか…でも、ルイード殿下は、伯爵令嬢のカリアナ様と結婚をしたいとおっしゃっておりましたが。カリアナ様が、殿下をサポートしているのではないのですか?」
「一時期、マリーと殿下が婚約破棄をしてカリアナ嬢と婚約を結ぶのでは…なんて噂もあったが、どうやらあまりの公務の多さに1日で音を上げた様だ。“私にはとてもマリー様の代わりは務まりませんわ”と、皆に言いふらしているらしい」
「そうだったのですね…」
確かにカリアナ様は、見た目はお可愛らしい方だが、公務をバリバリこなすタイプではないものね。
「とにかく、マリーが無事でよかったよ。君の事だから、きっとうまく逃げているのだろうと思っていたが、まさかここにいただなんて。アンリ妃から話を聞いて、急いで駆けつけたんだよ。マリー、今まで随分と頑張って来た事は、貴族たちならみんな知っている。それに今、貴族界で流れが変わりつつある。マリーがいないと何もできないルイード殿下では国王は務まらないのではないかとね。体が弱い事になっているエドワード殿下を押す声も、少しずつ大きくなってきているのだよ。ただ…」
伯父様が言葉を濁す。
「それを王妃様や王妃様の実家でもある、クディスル公爵、さらにマリーちゃんのお父様、シャラティア公爵が許さないのでしょう」
奥様がポツリと呟く。
「まあ、そうなのだが…ただ、マリオネットが残してくれた、アンリ妃の実家、カリフィース侯爵家を落とし入れた証拠と、私たちが独自に集めたクディスル公爵家の悪事に関する資料はある。これをうまく使えば、王妃を王妃の座から引きずりおろすことが出来るかもしれないのだが…」
「ルイード殿下まで引きずりおろすことは厳しそうですね」
エドワード様も加わり、3人で何やら難しい話をしている。ただ、どうやら3人は王妃様とルイード殿下を、今の座から引きずりおろそうと考えている様だ。
「あの…皆様、盛り上がっているところ申し訳ないのですが…今の話をまとめますと、まず伯父様は私達の味方という事でよろしいですよね。それから、王妃様とルイード殿下を引きずりおろし、新たに奥様とエドワード様が王宮に戻る様働きかけているという事でよろしいでしょうか?」
今まで奥様やエドワード様からは、はっきりとそう言ったお話がなかったため、この場で確認したくて問いかけた。
「ああ、そうだよ。そもそも、君の母親、マリオネットも、本来王妃になるはずだったアンリ妃を王妃に、そしてその息子、エドワード殿下を次期国王にするために動いていたのだから。マリーは2人が王宮に戻る事が嫌なのかい?」
やっぱりそうだったのね…
「グラッセル侯爵、僕は別に次期国王になりたい訳ではないよ。マリーと一緒にいられたらそれでいい。ただ、マリーを苦しめたあの王妃とルイードだけは、許せないんだ!マリー、別に僕は次期国王なんかに興味はないよ。君さえ傍にいてくれたら…」
「いいえ…エドワード様こそが、次期国王にふさわしいと私も考えておりますわ。そもそも、人に仕事を押し付け、楽をする事しか考えないルイード殿下が国王になったら…そして、あの意地悪な王妃様が、国母に何てなったら、この国にとってもよくないと思います。国が悪い方向に進めば、被害を被るのは民たちです。せっかく今、いい方向に向かっているのなら、そのチャンスを逃す訳にはいきませんわ」
真っすぐエドワード様の方を見つめ、はっきりと告げた。奥様が新たな王妃様に、そしてエドワード様が王太子に、そんな未来を皆が既に思い描いていたのならば、私もそんな未来の手助けをしたい。伯父様たちの話を聞いて、強くそう思ったのだ。
「ありがとう、マリー。でも僕は、王太子よりも、君の傍にいたいのだが…」
「もちろん、エドワード様が王都に乗り込むのなら、私も共に参ります。私も散々王妃様には虐められてきましたので。あの方が引きずりおろされるところを、この目で確認したいですし」
はっきり言って、王妃様には恨みしかない。こんな醜い感情を持つ事は良くないかもしれないが、出来る事なら王妃様に復讐をしたいと考えている。
「それから、母を殺め、私の道具の様に利用し続けた父や継母たちにも、一泡吹かせたいと考えております。私は母を殺した犯人は、父だと思っておりますの。現に父は、私を母の亡骸に会わせませんでしたし…きっとやましい事があったに違いありませんわ!」
私が何度最後にお母様に会わせてと泣いて頼んでも、決して会わせてくれなかったのだ。きっと何らかの理由があったはず…
「私も、マリオネットを殺したのは、公爵ではないかと考えている。もしかすると王妃も関係しているかもしれないが…それにしても、マリーはやっぱりマリオネットの子供だね。それにそのブローチ、マリオネットの形見だろう。とてもよく似合っているよ。知っているかい?そのブローチは、蓋が開くのだよ」
「えっ?今なんて?」




