第24話:匿ってもらえるそうですが…
お母様を亡き者にしようとしたのは、父親かもしれない…
恐ろしい考えが頭を支配する。でも、あの人ならやりかねない。家族よりも自分の地位と名誉を大切にする人だ。王妃様と敵対している奥様の味方をしたお母様を気に食わないと思っても仕方がないはずだ。
それに王妃様が私にあれほど冷たかったのは、お母様の事があったからだろう。だからこそ、お母様は自分亡き後、私を奥様に託そうとしたのだろう。
全てが繋がった。
ただ…
「母は生前、私に奥様のところに避難しろなどは、言っておりませんでしたわ。一体母は、どうして私に奥様の元に避難しろと伝えたつもりでいたのでしょうか?」
「さあ、私達にもそこまでは分からないわ。手紙を書いたとの事だけれど、心当たりはない?」
手紙、そんなもの、お母様は残してくれていなかったし…
う~ん…
「マリーちゃん、もういいのよ。最終的にあなたは、この地にたどり着いたのだから。それでマリーちゃん、一体あなたの身に何があったのか、聞かせてくれるかしら?」
奥様に言われ、私はお母様が亡くなってからの事を事細かく話した。途中辛くて泣いてしまった私を見て、奥様も泣いていた。エド様に至っては、私をギュッと抱きしめてくれた。エド様の温もりを感じていたらなんだか落ち着きを取り戻り、最後まで話すことが出来た。
「王妃もルイードも公爵も全ての人間が許せない!八つ裂きにしてやりたいくらいだ!そもそも、父上は何をしていたのだ。マリーがここまで酷い扱いを受けていたというのに、本当に役立たずなのだから!」
いつも穏やかエド様が声を荒げて怒っている。
「エドワード、お父様の事を悪く言わないであげて。あの人は国王の立場上、何も言えなかったのでしょうから…それにしても、酷い人たちばかりね。マリオネット様が私にマリーちゃんを託そうとした理由がよくわかるわ。それなのに私は…ごめんなさい、あなたを守る事が出来なかった。マリオネット様には、返しきれない程の恩があるというのに…」
そう言って涙を流す奥様。
「奥様、過ぎた事はもういいのです。ただ私は、もうあの様な人たちがいる場所で暮らしたくはありません。だからどうか、この地においてもらえないでしょうか?」
「あんな人間のいるところに、誰が大切なマリーを返すものか!マリー、君はずっとここにいればいい。この9年、本来であれば僕たちの傍で幸せに暮らすはずだったのに、本当にごめんね。これからはずっと僕たちと一緒だ!」
「ありがとうございます。お坊ちゃま」
屋敷に戻って来たのだから、やはりここはお坊ちゃま呼びがいいだろう、そう思ったのだが…
「マリー、もうお坊ちゃまと呼ぶのは止めてくれ。君は今日からメイドでも何でもない。僕たちの大切な家族なのだから」
「そうよ、マリーちゃん。私の事も奥様なんて呼ばないでね」
そう言われてしまった。でも私は…
「私はこの地に来て、沢山の人から優しさを頂きました。だから出来れば、今までの生活スタイルを壊したくはないのです。どうかこのままの生活をさせていただけないでしょうか?」
2人に頭を下げる。
「何を言っているのだ。そんな事…」
「分かったわ、マリーちゃんがしたい様にすればいいわ。でも…万が一の事を考えると、やはり安全上の都合から、この屋敷に住んだ方がいいと思うの。もし自宅にいるときに追手が来たりしたら、大変でしょう?この屋敷にいれば、私たちが守れるわ。それにね、実はこの屋敷には護衛たちもいるのよ。普段は身を潜めているけれどね」
確かにもしお父様たちが探しに来た時に自宅にいたら、すぐに連れ戻されるだろう。でも…この地で出会ったルーマさんやその家族たちと、今の関係を続けていきたい。それに、私は今は平民なのだ。
「奥様、やはり私は、今後も平民として生きていきたいと考えております。公爵家を出るとき、私は平民として生きると決めましたので…ただ…娘の様に可愛がってくれているルーマさんには、いつか折を見て真実を伝えようと考えております。ですから、どうかこのままで居させていただけないでしょうか?お願いします」
奥様とお坊ちゃまに頭を下げた。
「…分かったわ。マリーちゃんの好きな様にすればいいわ。ねえ、エドワード」
「そうだね、マリーは今まで、散々嫌な思いをして来たのだから。君が平民でいるというのなら、僕もこの地でずっと暮らすよ。正直君がいない王都に何て戻っても、仕方がないから。ねえ、母上」
「そうね、私ももう、敵ばかりの王宮には戻りたくはないわ。この地で、3人でのんびり暮らしましょうか」
そう言ってお坊ちゃまも奥様もほほ笑んでくれた。
「ただし、僕の事だけはお坊ちゃまと呼ばないでくれ。お坊ちゃまと呼んだら、振り向かないからね!」
どうやらお坊ちゃまは、お坊ちゃまと呼ばれるのが嫌な様だ。
「分かりましたわ。では、先ほどの様にエド様とお呼びいたしますね」
「う~ん、エドワードと呼んで欲しいな。僕はね、いつかマリーにきちんと名前を呼んでもらえる日を楽しみにしていたんだよ。君と僕が出会った時はまだ君は2歳だったからね。エドまでしか覚えられなかったんだ。今日はマリーに僕の事を思い出してもらうきっかけを作りたくて、エドと呼んで欲しいと伝えたんだ」
そう言ってエドワード様が笑っていた。
「分かりましたわ。それでは、エドワード様と呼ばせていただきますね」
正直まだ過去の事を完全に思い出したわけではない。それに私の正体もバレてしまった。それでも今後もこの地にいられることが、嬉しくてたまらない。
奥様とエドワード様の顔を見ながら、そう思ったのだった。
次回、ルイード視点です。
よろしくお願いします。




