大丈夫93話
第93話です。
山の散策を一旦終えて休憩します。
魔物に関しての話を色々と聞きます。
では、楽しんでください。
「さて、少し休憩するか。
兵糧丸を食べてみろ。
これは中々の食べ物だぞ。
手軽に食べられてその上、旨い。」
エルネーゼは渡された兵糧丸を口に入れる。
「本当。これは美味しいですね。
マリエルが美容食と言っていた意味が
分かりますよ。」
「そうなのか?
ふむ、どの時代も女子
は理解出来ん。こんな物が良いとは。
手軽に食べられる物ならば
サンドイッチの方が旨いであろう?」
慶次は理解が出来なかった。
兵糧丸とは慶次にとっては
外で簡単に食べられる食べ物に過ぎない。
しかし、女性にとってはこれを食べると
肌艶が良くなり若返ると言われたら食べたくなる。
「え?女性なら当然ですよ。
肌の老化は女性の敵ですから。
どれだけ歳を重ねても
美しいと言われるのは嬉しいですから。
サンドイッチも良いですけど、
それとこれは別です。」
エルネーゼがクスクス笑って答える。
「そういうものなのか。」
「はい。そういうものです。」
《風魔》が兎を咥えて帰って来た。
『殿。ヴェンに教えてもらって獲れたよ。』
「おぉ、それは良かったな。
お前の獲物だ。お前が喰え。」
慶次は《風魔》の頭を撫でる。
「ヴェンに出会えて助かったな。
俺ではこうはいかん。」
「そうですね。
私達には狩りの仕方などは教えられませんから。」
エルネーゼも笑いながら話す。
《風魔》達は捕まえた兎を食べ
《松風》は草を喰んでいる。
《風月》は《風魔》の兎を狙っている。
「エルネーゼ、凶暴化した魔物とは
いつ頃から現れたのだ?」
「えっと、確か、
50年ぐらい前だったと思います。
最初はドラグレイヴの冒険者達が
こちらへ来てその情報を話した時に知りました。
でも、最初の頃はドラグレイヴの冒険者は
強い魔物の出現に大喜びしていました。
自分たちが強くなれるから
という話をしていたと思います。
そんな様子だった為
こちらも凶暴化が深刻な事態だと
思いませんでした。
他の3国は聖女様の保護で
被害が全く無かったのです。
だから、私達は他国の出来事と
軽く受け止めてていました。
国々を移動する商人達の被害は
聞いてはいましたが、
我が国の冒険者が護衛していたので、
魔物に襲われた程度の認識でした。
それが、5年ぐらい前に
ドラグレイヴの冒険者が
打撃が効かない魔物が出たと報告してきました。
それでも、私達には魔法があるので
あまり深く考えていませんでした。
それが、海から襲って来た魔物に
ネヴェリス街が襲われて死者が出た時に
陛下が他の4国と話して
かなり深刻な状態だと気付かれたのです。
この事は他の国にも大きな衝撃を与えました。
そして、その為に帝国にも
聖女様の召喚をという話が出てきました。
召喚に反対の貴族もいましたが、
陛下が民の保護の方が大切と押し切られて。」
「そこで召喚されたのが俺だったと。」
エルネーゼは頷く。
「そうです。
国民の大半はその事実に狼狽えました。
でも、陛下の言葉でとりあえず、
3ヶ月後を待とうと思い直して今があります。
だから、実は帝国の中は非常に不安定な状態です。
国民の多くは冒険者ではありません。
戦う術を知らない人達ばかりです。
兵士の数を増やしたと言っても
元は冒険者だったり普通の仕事をしていた国民です。
冒険者達は戦う術を身に付けてはいますが、
国民は今日の今から戦う術を身に付けて
国民を守る立場になっています。
ネヴェリア街には元冒険者と兵士の人達が
沢山行きました。
ソルメラの街の治安が悪くなったのも
志願兵が増えて兵士が弱くなったからです。
プランタンシアの街は
殆どが国民からの祈願兵士です。
プランタンシアは保護魔法を
街全体にかけてあります。
だから、志願兵でも対処できます。
しかし、
ソルメラの街はドラグレイヴの冒険者が
入国するので志願兵では騒ぎを
鎮静する事が難しいのです。」
「なるほどな。
だから、統制が取れていないと感じたのだな。」
慶次は独り言の様に呟く。
エルネーゼは黙って頷いた。
「これは、兵団の者達に
きちんと鍛錬をさせねばならんな。
グレゴール殿と話してみるか。」
「そうですね。
出来る事ならそうしてもらうと嬉しいですが。
でも、出来ますか?」
「ん?俺の國でも戦さになれば
農民が兵として駆り出されておった。
戦い方など習ってはおらん。
それでも、やっておったという事は
出来るであろう?」
エルネーゼは驚いて
「え?慶次の国は農民を兵士として
軍隊に加入させていたのですか?」
「そうだ。それが普通だったな。
足軽として活躍して
その功績を認められた者もおる。
今の将軍になられたのは農民から足軽で
戦さに出いた方だ。」
「農民が王様に?凄い世界ですね。」
「まぁ、強い者が正義の世界だからな。」
エルネーゼは慶次のいた世界の厳しさを
想像して怖くなった。
もし、自分がそんな国の中で生きていたらと
考えると鳥肌が立つ。
(私はこの現状が最悪だと思っていたけれど、
それ以上に過酷な世界があったなんて。)
そんなエルネーゼを見て慶次は
「そんな顔をするな。
そんな國でも楽しい事もあったからな。
確かに、昨日の味方は
今日の敵という考えもあったが、
それでも心から信用出来る友も居たからな。
勿論、アシュレイン殿の様に
お仕えしたいと思える君主も居られた。
そうそう悪く無い國だった。」
それを聞いたエルネーゼは頷いた。
「そうですよね。
陛下は本気に信頼出来る方です。
慶次にもその様な方が居られたのですね。」
「そういう事だ。もう、会う事も叶わんがな。
さて、もう少し歩くか。
今日は魔物に出会えないかもしれんが。」
エルネーゼは慶次がこの世界に来た事で
自分の祖国の地に再び立つ事が出来ない事を
痛感した。その気持ちを押し殺し
「そうですね。
歩く事で出会える可能性は増えますから。
慶次、ここから山を下ってみませんか?
別の草原に出れるはずです。」
「そうなのか?では、そちらに向かうか。」
慶次達は山を降りて行った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
戦国時代の当たり前にエルネーゼが驚愕します。
私達も驚いていませんか?
戦う(敵を殺す)事を知らない人でも
武器を持って向かってくる人に
その武器を向けられる世の中です。
戦争とはそういう悲劇を生むものですよね。
戦い方を知らなくても自分を守る術は
咄嗟の判断で出来てしまうのです。
そういう世界は無くなって欲しいと思います。
次回は山から降りて草原に向かいます。
では、次回を楽しみにしてください。




