第87話
第87話です。
哀しい現実から
これからの現実に
歩いて行かなければなりません。
日々は何があっても流れていきます。
哀しいからと立ち止まれません。
マルテォナの考えたこれからの生活は?
では、楽しんでください。
「マルティナ、本当に大丈夫か?
無理をしたら駄目だぞ。」
「え?無理?」
エルネーゼは笑いながら言った。
「マルティナは自覚が無いかもね。」
マルティナはそう言われてもピンとこなかった。
「私、無理なんかしてないわよ。」
「いつもそう言ってたよね。
子供の頃から、ずっと。
おじさんが亡くなった時も
おばさんが倒れた時も。
私は大丈夫よって。
全然、大丈夫な訳ないじゃない。」
マルティナはエルネーゼにそう言われ顔を伏せた。
エルネーゼは続ける。
「大丈夫じゃないんだから、私達に話して。
ゆっくり自分の本当の気持ちを口に出して。」
ゼノンも頷く。
「そうだ。
マルティナ、今ここで優等生に
ならなくても良いんだ。
俺達は子供の頃から、
ずっと一緒に育ってきたじゃないか。
今、慶次に言われて本当は何を思ったのか。
これから、どうしたいのか。
子供の気持ちも勿論大切だ。
でもな、お前の気持ちはどうなんだ?
今の話を聞いて最初にどう思った?
それはとても大切な事だぞ。
その気持ちを隠してまで
子供の考えを尊重しなくても良いと俺は思う。」
マルティナはゆっくりと目を閉じた。
大きくため息をついて
「私は…。ここで子供達と暮らしたいわ。
カティア達も居るから安心できるの。でも…。」
エルネーゼはマルティナの方をそっと抱きしめた。
「貴方の気持ちも分かるわよ。
子供達が学校で嫌な思いをしたらって
思ってるでしょ。」
マルティナはゆっくりと頷く。
「確かにね。
子供の頃に聞かされて育ったもんね。
ここに住む平民の子供達の話。
ソルメラに引っ越しして
ここからプランタンシアに
仕事に行ってた人も多かったし。
でも、最近は昔と違って
そう言う話を聞かなくなってない?」
「そうだ。今の陛下に変わってから
随分ここの街の雰囲気も変わった。
俺にもエルネーゼにも
ここに通う子供が居ないから
詳しくは分からないが、
引っ越ししてくる人も
かなり減っているじゃないか。」
「確かにそうね。
この町で働いている人は
この街に住み続けているわね。
学校も私たちの時よりも
過ごしやすくなっているのかしら。」
マルティナは
それでもまだ心配だという感じで話す。
エルネーゼが
「じゃ、学校に様子を見に行くのは?
あの子達が入る前に一度見るのも一つの手よ。
でも、保育園や幼稚園はそんな話を聞かないわよね。
でもまぁ、私達の子供の頃にもそんな話を
聞かなかったけどね。」
と笑いながら話す。
「そうだったわね。
学校に上がると考え方が
変わるのかしらってよく話していたわね。」
マルティナも笑って答えた。
「マルティナ、
オズワルド様に見学の話を話して来たらどうだ?
宰相様に話してくれるかもしれんぞ。
俺達、冒険者の立場も
今の陛下になってかなり上がった。
親父の時など、貴族の連中は。」
とゼノンは顔を顰めた。
「あの時はかなりドラグレイヴから
奥様を貰った人が多かったものね。
あの国はやはり異質なのよ。
まぁ、私達のご先祖様の国でもあるんだけどね。」
マルティナを笑って
「ふふふ、確かにね。
嫌な人達って思っても同じ先祖なのよね。
まぁ、私達は親にドラグレイヴの人は居ないけどね。
今でも時々、この国へ生活する為に
来る人も居るけど、
ここで相手を見つけて結婚する人、少ないわね。」
「そう言えばそうね。
1人でこの国に来る人なんて
冒険者以外は居ないわよね。何故かしら?」
エルネーゼも不思議そうに話す。ゼノンが
「そりゃ、この国で
幸せになれる保証が無いからだろ。
同じ祖先を持つが、
冒険者のせいであの王国の国民は
嫌な奴ってここには先入観があるからな。
そう考えると、貴族も俺達も
一緒なのかもしれないな。」
それを聞いてマルティナは
「本当ね。私も貴族の人達と同じなのかもね。
そんな風に考えた事無かったけど。」
と話す。エルネーゼが
「だからと言って差別はしないでしょ。」
と言う。ゼノンが
「そうだ。
しかし、入ってくる人にはそれは分からない。
ここで生活して初めて気が付くんじゃないか?」
マルティナは2人のやり取りを見て考え込む。
「私の先入観で、
子供達が不幸になるのかもしれないわね。」
と呟く。
「マルティナ、考えすぎも良くないわ。
子供達がどういう風に感じるかは
母親である貴方がちゃんと見てあげないと。」
「そうね。
子供達も気持ちと私の気持ちを
きちんと話をして決めないといけないわね。
ゼノン、エルネーゼ、本当にありがとう。」
マルティナの話に
ゼノンもエルネーゼも安心した顔になる。
「そうだ。色々ありすぎて不安な気持ちで
あれこれ考えてもマイナスの気持ちしか出ないと
俺は思う。
色々な人の話を自分の中で
整理して答えを出せば良いと思うぞ。
慶次も急がないと言ってくれただろ?
今の生活で何が守るべきものなのか
きちんと考えて答えを出した方が
いいんじゃないか?」
「本当にそうね。
私達が幸せにならないと
ガルヴァンに怒られるわね。」
ゼノンもエルネーゼもマルティナの笑顔に安心した。
「マルティナ、子供達はお前が思うより
強いと俺は思うぞ。」
エルネーゼも
「そうね。私もそう思うわ。
貴方の気持ちをきちんと受け入れてくれるわよ。
そして、自分の気持ちも
きちんと話してくれると思うわ。
子供は親が思うより強くて
きちんと周りを見ていると思うわ。」
「そうなのかしら?
でも、私の気持ちをきちんと話さないと
子供達に余計な心配をされるかもしれないわね。」
ゼノンとエルネーゼは頷いた。
「ゼノン、エルネーゼ、ありがとう。
私、きちんと子供達と話せる勇気が出たわ。
あら、やだわ。こんな時間。
みんなのお昼を用意しないと。
みんな、私の料理が美味しいと言ってくれるのよ。
母の国の料理が好評なのは嬉しいのよね。
この国の人達、あんまり食べないと
思っていたのだけれどね。」
「そうなのね。
私もマルティナのお母さんの作る物は好きよ。
優しい字がするわよね。
でも、カティア達がお昼は
任せてって言ってたじゃない。」
「そうなんだけどね。気になるし。」
「マルテォナは相変わらずね。」
そんな話を聞きながら、ゼノンは
「そうなのか?俺は肉で良いよ。」
エルネーゼとマルティナは
「野菜も食べなきゃ。」
と笑った。ゼノンは苦笑いを浮かべ
「いや、野菜はちょっと。」
と話す。
マルティナどうエルネーゼはそれを見て笑い出す。
「子供じゃないんだから。」
マルティナが
「こんなに笑ったのって久しぶりかもしれない。
昔はみんなでよく笑って話していたわね。」
「本当にね。
大人になると笑う事って限られてくるのよね。」
「まぁな。
子供の頃よりも色々なモノが
見える様になるからな。」
「マルティナ、何かあったらいつでも言ってね。
私、今日からしばらくは
マエダ様と一緒に行動するから。」
「そうだな。
俺もしばらくはここに居るから何でも言ってくれ。
次の討伐がいつになるかは分からんが、
何かあれば周りの人を頼れば良いと思うぞ。」
「そうね。ありがとう。
貴方達のおかげで前を向いて行けそうよ。
じゃ、私は仕事に戻るわね。」
マルティナ達は部屋を出て
ゼノンとエルネーゼはリビングに通された。
「ここで待っていてカティアか
ミレーナにマエダ様に声を
かけてもらってくるから。」
マルティナは部屋で出て行った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
哀しい現実に翻弄されつつ
マルテォナは前を向く覚悟を決めます。
良い方向に向かうと良いですよね。
人々の生活は日々変化します。
しかし、変わらないモノも当然あります。
マルテォナはどうするのか?
次回は慶次達はギルドに向かいます。
では、次回を楽しみにしてください。




