第86話
第86話です。
哀しい現実を受け止めなければなりません。
マルティナはどんな思いでいるのでしょうか。
では、楽しんでください。
マルティナは強張った顔でゼノンを見る。
「ゼノン、エルネーゼもどうしたの?まさか…。」
ゼノンは低い声で
「マルティナ、落ち着いて聞いてくれるか。
『艶紅の炎』が全滅した。
俺が討伐に行っていた所に
その場に居た冒険者が討伐に参加していた。
その冒険者から聞いた。
その冒険者も深傷を負い、
命からがら逃げ帰って来たそうだ。
その冒険者のチームも
その冒険者以外は全滅したらしい。」
それを聞いたマルティナは
大声を上げ泣き出した。
マルティナの肩をエルネーゼがそっと抱き寄せる。
「こうなるかもと覚悟をしていても、
いざとなればやっぱり駄目ね。」
ハンカチで涙を拭いマルティナが話す。
「何も持って帰って来てやれずに済まない。」
マルティナは首を振る。
「この報告をしてくれただけで大丈夫。
踏ん切りがついたわ。
何も知らずに待つ事だけに疲れてしまったの。」
ゼノンが頷き
「今後の手続きはギルドが責任を持って対処する。
幸いにも慶次が毎日ギルドに通っているから
慶次を通して連絡出来るようにしてもいいか?」
マルティナはしばらく考えて、慶次の顔を見る。
慶次はゆっくり頷く。
「そうね。マエダ様には
頼りっぱなしで申し訳ありませんが、
よろしくお願いします。」
「それは構わない。
それとマルティナ。
今、この話をする事は酷だと承知しておるが、
再度、この家で暮らす事を考えて欲しい。
当然だが、子らも一緒にだ。」
マルティナの顔に困惑の色が走る。
オズワルドが続ける。
「ソルメラの街もマエダ様が来られて
良くなっていこうとしてはいるが、
まだまだ安心できない。
それに、ソルメラよりも
プランタンシアの方が保護だけを考えても
比べ物にならないぐらい安全だ。
マエダ様が安心して家を空けられる様にと
考えて欲しい。子供達の学校は心配はいらない。
ここの学校にも平民は通っている。
確かに、貴族の中には
この間の件があったとしても
平民を見下す者がいるとは思う。
ただ、それを除いても
ここでの暮らしの方が安全だと私は思う。
今すぐに出せる答えでは無いのは
承知しているから、
ゆっくり考えて答えを出してほしい。」
「そうだな。
マルティナの想いを無碍にはせん。
マルティナの思っている安全と
俺たちの思っている安全が一緒ならそれでいい。
その時はこの家に住むと言うてくれたら
後はこちらで全てするから安心してくれ。
だから、マルティナの想いを聞かせて欲しい。」
マルティナは慶次とオズワルドの顔を見て
「子供達に聞いてみます。
私の今の願いは子供達が笑って
生活してくれる事だけですから。」
それを聞いて慶次は頷く。
「そうだな。それが一番だ。
今日にでも聞いてくれたらそれで良い。」
ゼノンがポツリと
「マルティナ、良い人に雇ってもらったな。」
と言った。マルティナは笑顔で
「そうなの。
子供達もこの家に
帰って来れる様にしてもらったし。
何よりも私たちの事を
真剣に考えてくださっているのよ。」
エルネーゼが
「マルティナ、幸せになってね。
子供達とちゃんと話し合って。
貴方の気持ちを子供達に話してね。
どちらの街に住むかは貴方と子供達が決めるのよ。」
「そうね。
私の気持ちをきちんと子供達に話すわ。」
マルティナは頷いた。
その時、ドアのノックする音がした。
オズワルドが
「どうぞ」
と声をかける。カティアがお茶を持って入って来た。
「カティア、ありがとう。グッドタイミングです。」
「オズワルド様の言われた通りに
持って来ただけですよ。」
とカティアが笑う。
オズワルドも手伝い、
お茶とクッキーがテーブルの上に置かれた。
「マルティナ。お茶を飲んで甘い物を食べて、
落ち着いてから仕事に戻ってください。
昼食は気にせずに。昼食ぐらいは作れると思う。」
オズワルドの言葉にカティアが
「そうですよ。私達でも作れますよ。
任せてください。」
と話す。
「ありがとうございます。」
とマルティナが答える。
オズワルドが
「では、私は席を外します。
それでは、マエダ様、手続きをして来ます。」
「そうだな。オズワルド、後は任せた。
みんなもゆっくりしていってくれ。
俺も馬屋に《松風》達の様子を見てこよう。」
部屋には3人だけが残った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
冒険者は死と背中合わせで生きています。
特に凶暴化した魔物は一筋縄では
いきません。
戦い方が分かったとしても
それぞれのチームに適した戦い方でないと
目の前に死が現れます。
哀しい現実に直面したマルティナが、
今後の生活を慶次達に促され考えていきます。
次回はマルティナの決断です。
では、次回を楽しみにしてください。




