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冒険者 傾奇者  作者: 豊葵 月


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第72話

第72話です。


いよいよ、魔物の調査が始まります。

どんな魔物に会えるでしょうか?


では、お楽しみにしてください。

「慶次。あれは駄目だよ。凶暴化しているよ。』

フェンリルは全く気にせずに慶次を引っ張る。

《松風》は戦闘態勢に入りながら

慶次の後を追いかける。

林の奥から唸り声が聞こえた。

慶次は《風牙(ふうが)》を構えたままで

フェンリルについて行く。

『慶次、気を付けて。

あれはフェンリルが凶暴化しているよ。

えっと、土属性で倒せると思う。』

『《松風》、コイツと話せるか?どんな感じだ。』

《松風》は慶次の前に立つ。緊張が走る。

『殿。フェンリルは頼むと。』

『頼む?何をだ?』

『その子の事を頼むと言う事みたいです。』

『そうか。それ以外は?

凶暴化した理由などは聞き出せるか?』

《松風》は再びフェンリルと話そうとするが、

フェンリルが急に暴れだした。

『慶次。このフェンリルは無理だよ。

もう、自我が残っていない。』

それを聞いた慶次は《風牙(ふうが)》に

「アルカ アースウォール ヴェル」

と唱え、フェンリルに振り下ろす。

フェンリルは飛び上がりそれを避ける。

慶次はそのまま上に振り上げた。

フェンリルの肩に《風牙(ふう)》が刺さる。

肩から血飛沫が上がるが、

フェンリルはそのまま向かって来た。

慶次は

「アルカ アースウォール ゲイル ヴェル」

と唱え横に薙ぎ払う。

フェンリルはそれをまともに喰らい、

後ろを吹っ飛んだ。

そして、そのまま倒れ込んだ。

『殿。フェンリルが礼を言うております。

それから、霧が、頭の中に誰かの声がと。』

《松風》がそれを伝えた後、

フェンリルは動かなくなった。

フェンリルがその周りを

哀しそうな声をあげてくるくる歩き回る。

慶次は《風牙(ふうが)》を鞘に収めた。

『《空蝉》、どう考える?』

『そうだね。分からないけど、

霧の中の声に惑わさせたのかな?

連れて帰った方が良いかも。

調べてもらうのが大切だと思う。』

慶次は頷き、アイテムBOXに

フェンリルとシルファットを入れた。

フェンリルの子供を抱き上げて

《松風》の背中に乗せる。

フェンリルの子は大人しく《松風》の背に乗った。

慶次はフェンリルの頭を撫でる。

《松風》に

『このフェンリルと話せるか?』

と聞く。《松風》はフェンリルに話しかける。

『ママを助けてくれてありがとうと。

一緒に行っても良いかと聞いております。』

『そうか。連れて帰るか。』

フェンリルの子は大人しく《松風》の背中に座った。

慶次は

『まぁ、とりあえず。薬草を探すか。

《空蝉》魔物検知も忘れるな。』

と話す。

『分かった。じゃ、薬草を探しましょ。』

慶次達は林の奥に歩いて行った。

『慶次、ここにある。』

地図に緑の点を指し示す。

慶次は地図の指し示す場所を探って行く。

ヨモギとドクダミが手に入った。

慶次は手に入れたヨモギをすり潰し

フェンリルの足に塗ってやる。

フェンリルは臭いを嗅ぎ、顔をしかめる。

慶次の笑って

『傷に良い物だと言うてやれ。』

と《松風》言う。

フェンリルは嬉しそうに鳴いた。

《空蝉》が

『慶次、これは?』

慶次はそれを摂る。

「これは?オオバコと何だ?」

「センブリだね。腹痛に効くよ。」

『これがセンブリか。

俺の國では虫除けだったな。』

『とりあえず、待って帰れるだけ摂るか。』

慶次は採取した薬草をアイテムBOXに入れる。

『もう少し探すか。

もう少し珍しい物も探したい。

魔物の情報も、もう少し欲しいな。』

『分かった。もう少し広範囲に探るよ。』

《空蝉》は探索範囲を広げる。

『《松風》、フェンリルの子に

先程の話ができるか?詳しく聞きたいが。』

《松風》はフェンリルと話している。

『殿。この子は母親と一緒に歩いていて

母親が急に唸りだしたと。

そんな中で母親に逃げろと言われたと

言っております。』

『ふむ。霧に、霧の中の声。

何を意味するかは全くもって分からんな。

霧が凶暴化させるのかそれとも声がさせるのか。

両方揃わなければ凶暴化しないのか。

やはり、もっと情報を手に入れねば解決は出来んな。

シルファットは混乱していて話せなかったのか?』

『どうでしょうか?申し訳ありません。

分かりません。

スライム達の話は話が通じ合い、

きちんと話せましたが。

今まで、他の魔物と話した事が

無かったので話せなかったとしか。』

確信的な情報が見出せず、

慶次達は薬草探しに焦点を当てる。

《空蝉》が次々と薬草の自生場所を示す。

慶次達は薬草を採取していく。

カズラやハッカ、ナンテン、

アンズ、オオバコも手に入った。

『中々、手に入ったな。

魔物の出現も無さそうだな。』

『そうだね。居るには居るんだけどね。 

《松風》が怖くて隠れてる。』

『ほぅ。その魔物は話せるかな。

そういう魔物とも話をしてみたいものよ。』

『う〜ん、どうだろうね。

《松風》から話しかけるのは?』

《空蝉》に促され《松風》が話しかけてみる。

草むらからヒョコリと長い耳が出てきた。

《空蝉》が

『レポリンだね。肉や毛が素材だよ。

攻撃は打撃で十分だよ。』

『まぁ、今日は情報収集するだけにしよう。』

慶次が話す。

頷いて《松風》はレポリンへ話しかけてみる。

レポリンは鼻をヒクヒクと動かし、

何やら《松風》と話している様だ。

『殿。先程のフェンリル親子の事を

草むらから見ていたそうです。

子供に狩りを教えていたらしいのですが、

急に霧が出てきてフェンリルを取り囲み、

その後に全身が紅く光って唸りだしたと。

そして、シルフェットの巣を襲った様ですね。

シルフェットは普段ならそのまま逃げるのですが、

シルフェットも執拗に

応戦していたと言っております。』

『ふむ。それはどういう事か?』

『多分だけどね。

巣を襲われて子供が死んじゃったからじゃない?

そういう時の親は誰よりも強いから。』

『なるほどな。

まぁ、二体とも持って帰るから

ギルドで調べてもらう事にしよう。』

慶次は薬草のヨモギを一掴みレポリンに渡した。

『《松風》、最近のここ周辺の様子は

変わりないか聞いてみてくれ。

些細な事でも構わない。』

《松風》がレポリンに聞く。

『殿。最近、目の紅い魔物が増えていると。

その魔物が襲う筈の無い魔物を

襲う事があると聞いているらしいです。』

『その時は今回と同じ様に霧が出ておったのか?』

『レポリンの話では、分からないと。

そういう話を仲間から聞いたと言うております。』

『中々の難題だな。

こういう情報収集に優れている者がおると

便利なのだが。』

『そうですね。

そういう事はやはり鳥が一番優れていると思います。

空からの情報収集は簡単で便利ですから。』

『慶次、それならカラスが良いんじゃない?

頭も良いし。』

『カラスか。少し休んでから探すか。』

慶次はレポリンに薬草をもう一掴み与えて

その場を離れた。

木陰でマリエルから貰った兵糧丸を食べる。

《松風》は草原の草を食む。

フェンリルにも兵糧丸を渡してみる。

臭いを嗅いで口に入れた。

『《空蝉》、カラスが居るか分かるか?

本来なら雛のカラスを育てた方が良いのだが。』

『そうだね。

その方が懐きやすいし、言う事を聞きそうだけど。

時期的に雛は居ないよね。』

『ここの月が何か分からんが、

もう直ぐ秋に差し掛かろう?

夜が寒い時がある。長月の初めくらいか?』

『慶次の国ではそれぐらいだと思う。

この国ではヴェルディアの月って言うの。』

『なるほど。当たり前だが、

月の名前も覚えなければ駄目だな。』


いつも読んでいただきありがとうございます。


凶暴化したフェンリルに会いました。

しかし、魔物の情報が思う様に集まりません。

凶暴化した魔物は自我が崩壊するので、

その時の様子を簡単には引き出せません。


もう少し、魔物達に情報を聞き出せれば

状況が見えると考えた慶次達は

カラスを手に入れる事にしました。


次回はカラスを探します。


では、次回も楽しみにしてください。

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