第1話
いよいよ、本編に進みます。
召喚の事。慶次のこれからの生活の事。
魔物の凶暴化。
問題は山積みですが、今はゆっくりと。
ソレイユの間に慶次が到着した。
部屋に入ってきた慶次を見て一同は息を呑んだ。
その姿は精霊王の様だった。
我に返ったアシュレインが話し出す。
「ンホっ。
マエダ様この国の服はいかがですかな。」
「最初、手に取った時に『圧』が凄くてな。
着るのが無理かと思うだが、
着てみると心地よくてな。
この國の着物は本当に良い品だな。
メイド長と言われたか?
アルグリット殿にも大変お世話になり申した。
この髪はアルグリット殿が結うてくれてな。」
「それは良かった。
明日にでも、服を見立てに行ける様に
手配します。」
「お願い申す。
それから、ヴェイル殿にも言うておったのだが、
槍と後、キセルが欲しいのだが、
この國にはあるかね?」
「キセル?ですか?それはどんな物でしょう。」
「煙草を吸う道具でな。
なければ作っていただきたい。
ここの國の魔法とやらは形が分かれば
作れると聞いてので大丈夫なのではと。」
「煙草ですか。マエダ様の国では
煙草を道具を使って吸われるのか。
成程、それなら槍を頼まれる時に
言ってもらえれば可能だと思いますな。
カイラス、ぜフィールズのロイへ
話を通して差し上げてくれ。
そこで作れないと言われたら、
フェアリーズの店で作れるやもしれぬでな。」
「心得ました。
マエダ様、私は兵団長の
カイラス バーネットと申します。
明日、第一兵団の者に街の案内を頼む予定です。
その時に必要な物は
それぞれのお店で注文してください。
料金はこちらでお支払いいたしますので、
安心して必要な物を購入してください。」
「おぉ、本当かね?それはありがたい。
あれが無いと口寂しいてな。
明日は楽しみだな。」
慶次は嬉しそうに言った。
「さて、本題に入ろうか。
先ずはマエダ様、今回の召喚の儀について
こちらの事情を申し上げます。」
アシュレインは少し険しい顔で話し始めた。
「マエダ様には多大なる
ご不便をおかけし申し訳ない。
申し訳ない事だが、
マエダ様の居られた世界には
お帰り願えない故に、そこはご理解いただきたい。
マエダ様には今後はこちらで
生活していただく事になります。
こちらでの生活の援助は
全てこちらでさせていただきます故、
ご心配には及びません。」
アシュレインは慶次の顔を
真っ直ぐ見つめて話を続けた。
「マエダ様には、初めて聞かれる言葉などが
沢山出るとは思うのですが、
最後まで聞いてくださるとありがたい。」
「分かり申した。
ここの國で生きていく覚悟は決まっておる故に
お気になさるな。」
アシュレインは軽く頷き話を続ける。
「この国では、ここ数年、魔物の凶暴化が
頻発しておりまして、
我が国でも我が帝国を守る為、
『聖女様』を召喚しようと
アクアリュミエ王国の召喚士に依頼し
召喚の儀を執り行ったのだが、
マエダ様が召喚されたという事で、
この召喚が何を意味するのかは
今のところ我々にも分かっておらぬのが現状で。」
アシュレインはリオレンの顔を見る。
「リオレン公爵、
今の現状を話でいただけるだろうか。」
リオレンは頷き、話し始める。
「明日の凛様の話で今の環境が
変わるかもせれませんが、
今のところ何も分かっていない状態です。
男性の召喚も過去の文献を調べる必要はあります。」
アシュレインは頷き慶次に話す。
「まだまだ、分からない事が
多いのが現状なのですが、
マエダ様にはこちらの世界で
冒険者として生きて行って頂きたい。
こちらの生活を理解して頂くために
1間週間はこちらの世界の話をさせていただき、
生活基盤を整えて頂くつもりでおります。
勿論、住む場所の提供もさせていただきます。
ここまでで、何かご質問はありますかな?」
アシュレインは慶次の顔を見て尋ねた。
慶次は少し考えて話し出す。
「なるほどな。聞きたい事は沢山あるが、
ヴェイル殿、俺の人となりはどう感じたのだ?」
慶次はニヤリと笑ってヴェイルを見た。
アシュレインとヴァは動揺してしまった。
「マ、マエダ様は気づいておられたのか?」
アシュレインが思わず、立ち上がった。
「アシュレイン殿、そこは冷静に対応する事を
お勧めするぞ。
アシュレイン殿と態度で
この國に争いがない事が分かったがな。」
慶次は笑いながら話す。
「マエダ様は気づいておられたのですね。
私は気づかれておられないとばかり。」
ヴェイルが額の汗を拭う。
「俺にはそういう小細工はしない方が良い。
まぁ確かに、先程も申したが、
俺がどういった人間かは分からないのだから、
疑われるのは仕方ない事と理解はしておる。
しかし、俺は武士と前に
『忍び』として育てられておるから
そういう動きは全てお見通しよ。
どういう原理かは分かってはおらんが、
腕に付けている物で俺の事を見ていたのであろう?」
「確かにマエダ様の話を聞いてはおりましたが。
まずは、『忍び』とはなんですかな?」
ヴェイルが尋ねる。
「そうだな。俺の國には相手の國や
武将の事を探る仕事があってな。
俺は本来はその仕事をするはずだった。
しかし、母が前田家の当主に嫁いで、
俺は前田家の当主になるべく
武士として教えを
義父から教わったんだ。
まぁ、当主には色々あって、ならなかったがな。」
慶次は少し寂しそうに話す。
「だから、今更、生活が大きく変わるなど
何も思わん。
俺の國でも普通にある事だからな。」
「なるほど、マエダ様は
ご自分の国でも生活が一変した事が
おありだったか。」
アシュレインは驚き話す。
「俺の國では普通の事よ。
明日になれば殺される事も普通にある。」
その言葉を聞いて一同は驚いた。
確かに通信機では聞いていた。
人と人が殺し合う世界。
しかし、完全に理解した訳では無かったと痛感した。信用していた者に裏切られる世界。
この世界では考えられない生活だった。
明日の自分の生活が保障されていない事など、
この国、この世界では考えられなかった。
(マエダ様は凄く厳しい環境で
生き抜いてこられたのだ。)
みんなの思いは一緒だった。
アシュレインが話を続ける。
「マエダ様、こちらの世界では
その様な事は絶対に起こりません故に
安心して生活してくだされ。
私達の無礼もこの場で謝罪致す。申し訳なかった。」
アシュレインは深々と頭を下げた。
慶次は笑いながら答えた。
「良い、良い。ヴェイル殿にしても、
当然の行動だと俺は理解している。」
「その言葉、有り難く。」
アシュレインは再び頭を下げる。
ヴェイルも座ったままで頭を下げる。
「そういう事で、驚きが大きいが、
戦闘経験もおありになる様なので
マエダ様にはこちらの世界で
冒険者として魔物を退治して頂きたいと
思うております。」
「冒険者という言葉はヴェイル殿からも出たが、
魔物とは?凶暴化という事は何かの生き物か?」
「そうですな。
お答えするのに難しい質問なのだが、
魔物とはこの世界におる生物で、
ドラグレイヴ王国には絶対に
必要な生き物なのです。
詳しい話は申し訳ないが、
この世界の歴史を話さねばならないので、
追々でよろしいかな?
冒険者として生活していただく故に
きちんと順を追って話したいと思っております。」
「成程、分かり申した。
今はまだ分からないままで聞いておこう。」
慶次は頷いて答えた。
「ありがとうございます。
とりあえずはこの召喚の儀が
私達にも思いがけない不足の事態であります故に、
共に整理しながら生活していただくという事に
なります。」
慶次が頷いた。
「分かり申した。」
アシュレインは胸を撫で下ろした。
(お怒りにならなくて良かった。
このお方は、我々が考えている以上に
過酷な生活を送ってこられたのだ。
真摯に向き合い、話していこう。)
「マエダ様、今日はこれから歓迎の宴を
用意させていただきます。
準備をしている間に
グレゴールにこの世界の事を
少しだけ聞いていていただけませんかな?
明日からは宰相補佐のユリウスという男が
相手をする予定です。」
「おぉ、宴をしてくれるのか。
それでは、それを楽しみに
この世界の話を聞くとしよう。」
慶次は目をキラキラさせながら頷く。
「そう言えば、この國には筆と墨はあるか?
もちろん、紙もなんだが。」
「筆?墨?ですか?」
アシュレインはグレゴールの顔を見る。
グレゴールは首を振る。
「この世界には紙に
何かを書き記したりはしないのか?」
慶次は驚いて聞き返す。
「記録には魔道具を使用し、
紙などは使わないのですが、
キセルなどの絵を描いていただく必要があるか。
グレゴールはペンとインクを持っておったか?」
「あ、それならご用意できます。
マエダ様、ペンとインクと紙でよろしいでしょうか?この国では子供の勉学には使いますが、
我々は魔道具にで記録保存しますので。」
「魔道具?記録とは残しておくという事か?
まぁ、俺の概念では通用しない事だけは分かった。
その、ペンとインクという物を
用意していただけるか?」
アシュレインは満足そうに頷き立ち上がった。
「マエダ様、それでは準備が整い次第、
お呼びします。」
慶次は頷いて、頭を下げる。
「よろしく頼む。宴が楽しみだな。」
アシュレインはヴェイルを引き連れ
部屋から出て行った。
レオニスはこのやり取りを呆然と見ていた。
(このお方、俺の小賢しい小細工なぞ、
通用せんとみえるな。ここは…。)
レオニスは立ち上がり、手を出しながら話した。
「マエダ様、私はこの国の皇太子の
レオニス ザイファルと申します。
マエダ様とは個人的に色々と話したいと思いました。これから、よろしくお願い申します。」
慶次も立ち上がり、頭を下げる。
「俺は前田慶次と申す。」
握手を拒否されたレオニスは少し驚いて
「あ、こちらこそ。」
とだけ言い、部屋を出た。
(握手をしないだと?
あの男の国ではしないという事か?
そういう感じはしていたが。)
残された慶次は
少し考えてグレゴールに尋ねる。
「俺は失礼な事をしてしまったかな?
レオニス殿は少し驚かれていた様だが。」
グレゴールは苦笑いを浮かべ
「皇太子様は握手をされようと手を伸ばされました。マエダ様が、頭を下げられたので
驚かれたのでしょう。」
「ふむ、握手とな?それはどういう行為なのだ?」
「この国では、挨拶をする時に
相手と手を握り合います。
マエダ様の国ではその習慣は無いのでしょうか?」
「手を取られたら殺されるやもしれぬからな。
なるほど、この國では挨拶の時に
手を握り合うのか。
本当に色々と学ばねばならんな。」
慶次は深く頷いた。
読んでいただきありがとうございます。
いいねも、本当にありがとうございます。
これから、色々な事の核心に迫って行く予定です。
慶次の冒険者としての生活。
『聖女』召喚。
プロローグより、投稿が遅くなるかもですが、
のんびり待っていただけたら幸いです。
頑張って描いていきます。
それでは、本編を楽しんでください。




