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冒険者 傾奇者  作者: 豊葵 月


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プロローグ

慶次がエクザリアの洋服に着替えました。

いよいよ、自分の立たされている環境に対峙します。

慶次ならどう答えるでしょうか?

どう生きていこうとするのでしょうか?


5 慶次、異国の服に着替える


重いドアを開くと煌びやかなドレスやスーツが

ハンガーにかけられて並んでいる。

大小様々な宝石が散りばめられたドレス。

ふんだんに刺繍が施されたスーツ。

スーツにも当たり前の様に

宝石が散りばめられている。

慶次は目をキラキラさせながらヴェイルに尋ねる。

「触ってみても?」

「はい、陛下の許可は

頂いているので大丈夫です。」

ヴェイルが言い終わると

慶次は楽しそうに一つ一つを丁寧に手に取る。

「この石、色んな色をしておるな。

しかも、何やら『圧』を感じる。」

「『圧』ですか?」

「そうだ。触った者を拒むというか。

これを着た者にはそういうものが

伝わらんのか?」

(加護魔法を感じるとは。

やはり、マエダ様には

相当の魔力量があるだろうな。)

「マエダ様が感じておられるのは

加護魔法だと思います。

着ている者を護る物ですね。」

「加護魔法とな?

それがこの着物の持ち主を護る?

しかし、加護と言うのは

人の気持ちを鼓舞するものではないのか?

護るとは?」

「そうなのですか?

こちらの国々では加護というのは

精霊に護っていただける事を言います。」

「成程、護ってもらうか。

精霊とは?初めて聞くな。まぁ、もう驚かん。

國によって本当に様々という事だな。」

「そうですね。

人の気持ちを鼓舞とは大変興味深いです。

それではマエダ様、服はどれにされますか?

『圧』を感じられておられる様ですが、

着たときに『圧』をまだ感じられ

着にくいのであれば、

私ども、剣士の服で良ければお貸しします。

剣士の服には加護の魔石は使用していないので。」

「ほぅ、剣士には加護が必要ないと?」

「まぁ、必要ではあるのですが、

服に魔石を付けると邪魔になるので

剣や鎧に付けます。」


「剣とはなんだ?この國の鎧も見てみたいな。」

「剣とはマエダ様が持たれているそれですよ。

鎧は明日にでも町を案内する時にでも

お見せできるかと。」

「ん?あぁ、刀か。

これは我が國では刀と言うんだ。

そう言えば、南蛮の者は

剣と言うておったかもしれぬ。

俺は本来なら槍の使い手なんだが、

いつ寝首をかかれてもおかしくない生活だから

懐には必ず刀を入れているんだ。

今回も役に立った。」

慶次は子供の様に笑った。

「槍ですか。

それならば槍も準備しないといけませんね。

ただ、行く場所によっては槍よりも剣の方が

戦いやすかったりしますから

槍と剣の両方を携帯される方が

いいのではないかと。」

「なるほど、確かに戦う場所によっては

槍は少々使いづらい時はある。

お、これは良さそうだ。

俺はここの世界では背が小さいようだから

ここにある服が大きすぎる。

しかし、これなら大丈夫そうだ。」

慶次は1枚の赤いブラウスを持った。

「これはどうやって着るのだ。

この丸い物を外すのか。

我が國の着物の様だと思ったが全く違う。

南蛮の物によく似てはいるが、

俺は着方を知らんのだ。

しかし、色は本当に綺麗だな。

ここまで鮮やかな着物を着ているのは

我が國では高貴な姫様ぐらいだな。

おぉ、そうだ。ヴェイル殿、

髪を整えたいのだが水油はあるかな?」

「水油ですか?マエダ様の髪を整える物ですよね?

ここでは、髪を整えるのは女性だけなので、

女性物になりますが、それでもかまいませんか?」

「この國では男性は使わんのか。

髪の毛が短い者が多いのか?

そう言えば、ヴェイル殿もそこまで長くはないな。

俺の國で髪の毛の短い者は

俗世を捨てた者だけだからな。」

ヴェイルは驚いて慶次の顔を見る。

「俗世とは?」

「ん?この世の中の事だな。

俺達、生きている者の世界だな。

坊主、僧侶は生きながら、

死んだ者として扱われるのだよ。

しかし、そんなに悲観するものではない。

寺の坊主はその中の代表格だな。」

「寺?坊主?」

「僧侶とも言うが、この國にはおらんのか?」

「坊主?僧侶?多分、おりませんね。

どんな仕事をされる方ですか?」

「人に生きる事の大切さを教える事。

まぁ、説法と言うが。

それから、死んだ時に死者の魂を

極楽に導く仕事だな。」

「という事は、我が国では聖職者ですね。

この国では聖職者を

死んだ者としては扱いませんが。」

「ほぅ。死んだ者として扱わんのか。

我が國ではそれでいろんな物を奪ったりするんだ。

戦さのない國には必要ない事か。

いやはや、本当に知らない國は

興味深い話ばかりだな。」

ヴェイルは慶次の話が正直言って理解できなかった。

話題を変えようと

「あ、ヘアークリームですよね。

ちょっと聞いてまいります。

マエダ様は服を探していてください。

もし、良い物があれば着てみてください。

マエダ様が言う『圧』が酷い様なら

私達の普段着ている物を持ってきますので、

それを着ていただきましょう。」

「分かった。面倒をかけるが、よろしく頼む。」

ヴェイルは部屋から出てブレスレットを確認する。

淡い光で光っている。

(正常に動いているようだな。

とりあえずはメイド長のアルグリットに

声をかけるか。)


ヴェイルは自分の部屋から

普段自分が着ているシャツとズボンを持って、

ハウスキーパー室に向かった。

『コンコン』

ヴェイルはドアを叩き、返事を待つ。

「どうぞ。」

中から、声が聞こえた。

「失礼する。

アルグリット、ヘアークリームはあるか?」

「あら、ヴェイル様。

こちらにございますが、どうされました。」

「召喚者様である、マエダ様が

髪を整えるのに欲しいと仰ってな。」

「そうでしたか。では、鏡も櫛も必要では?」

「あぁ、確かに。それもここにあるか?」

「ございますよ。

私が持って一緒に伺いましょう。

髪を整えるのであれば

男性より女性の方がよろしいのでは?」

「ん?そういうものか?

マエダ様はご自分でされる様な感じであったが。」

「ご自分で?それでは不便ではありませんか?

まぁ、マエダ様に直接、お伺いしてみましょう。」

「この国では男性は髪の毛を整えないが、

マエダ様の国では普通の様なようだ。

それに直接とは?貴方も行く気なのか?」

「当然です。しかし、男性ですか?

まぁ、女性用のヘアークリームで

大丈夫なのですか?」

アルグリットは驚いてヴェイルの顔を見る。

「ご本人が大丈夫と仰るから、

大丈夫なのではないか?」

「これだから、男の人は。」

アルグリットはわざと大きなため息をつく。

「い、いやしかしだな。」

ヴェイルは慌ててアルグリットを制する。

「マエダ様は大丈夫のお方だとは思うが、

陛下の許可も取ってかおらんし、

直接、会うとなると。」

「貴方が居てくれるのでしょう、ヴェイル隊長。

ならば、大丈夫でしょ。」

アルグリットは大袈裟に肩をすくめる。

「確かに、私も一緒には居るが。

何かあった時には遅いんだぞ。」

「本当に、近衛隊長なのですか?」

ヴェイルは汗をかきながら

「確かに私は近衛隊長ではあるが、

本来なら、陛下の守護以外の仕事は

普段はしないではないか。」

「だから、駄目だと言っているのです。

こういう事態の時にこそ、

貴方の裁量が問われるのでしょう?」

「本当にムチャばかり言う。

まぁ、だからこそのメイド長なのか。」

「当然です。

私の決定で陛下や皇后様が

異見を言われた事はございません。

私は私の仕事に誇りを持っておりますから。

貴方もそうではないのですか?」

「分かった、分かったから。本当に。

とりあえず、ヴェトティの間に行こう。

マエダ様がお待ちになってるだろう。」

「え?来たばかりの方を

1人にしているのですか?信じられません。」

「緊急を要したんだから、しょうがないだろ。

魔石の加護も見破られるし、

背が我々より低いから

陛下達の服では合わないんだよ。」

「言い訳は結構。さっさと行きますよ。」

ヴェイルはアルグリットに急かされ

慶次の待つ、ヴェトティの間に向かった。


ヴェイルはヴェトティの間のドアを叩いた。

「マエダ様、お待たせいたしました。

実は、メイド長のアルグリットが

マエダ様の髪の毛を整えたいと。

大丈夫ですか?」

「おぉ、ヴェイル殿。

大丈夫だ。それほど待っていないぞ。

服が色々あり楽しく見ていたよ。

それより、俺の髪の毛をか?

いや、自分で出来る故。」

その言葉を言い終わらないうちに

「私、メイド長の

アルグリット ヴァイスハルトでございます。

慣れない場所でのお1人での

身支度は大変でございましょう。

私がお手伝いさせていただきます。」

「あぁ。申し訳ないが、よろしく頼む。」

慶次はアルグリットの気迫に押されて

了承してしまった。

(どの國でも、女性の方が強いのだな。)


「マエダ様、大丈夫ですか?

お嫌でしたら断っていただいても…。」

その言葉に被せる様にアルグリットは

「ヴェイル様、黙っていていただけますか?

身支度を手伝うのはメイドの仕事です。」

ヴェイルは困った顔で慶次を見る。


慶次は笑いながら

「大丈夫だ。こういう体験は

もう、2度とないかもしれん。

アルグリット殿にお任せするとしよう。」

アルグリットは満足そうに頷き。

慶次の前に鏡を置き、髪の毛を結い始めた。

「マエダ様、『圧』が凄いと

仰っておられたそうですが、

今、着ておられる服は

加護を付いている物ですよね。

違和感はございますか?」

ヴェイルが尋ねる。

「ん?この着物か?

着てみたら案外いい感じだった。」

アシュレインの服を着た慶次を見た

ヴェイルは驚いた。

魔石の色が変わっていた。

(え?この魔石の色はこんな色だったか?)

「ん?似合わぬか?」

慶次が心配そうに尋ねる。

「マエダ様、すごくお似合いですよ。

では、髪の毛を整えましょう。

男性用のヘアークリームが

無くて申し訳ございません。

世の中は広うございますね。

マエダ様のお国では

男性も髪を結われるのですね。」

アルグリットは慶次の髪を

櫛で梳きながら話す。

「そうだな。それが正装の形だな。」

「そうなのですね。こちらの国の男性も

これぐらい綺麗にしていただきたいものですね。」

アルグリットはヴェイルをチラリと見て話す。

ヴェイルは汗が止まらない。

「アルグリット、お喋りはそれぐらいで…。」

「話していても手は止まっておりませんよ。」

慶次が笑いを堪えながら話す。

「この國の女子は強いのだな。

この國は安泰だな。」

ヴェイルは驚いて聞く。

「女性が強いと国が安泰になるのですか?」

「そうだな。俺の國も女子おなごは強いぞ。

腹がすわっておる。

そんな國は安泰するのが通例だな。」

「ふふふ。マエダ様、出来ましたよ。

マエダ様のお国の髪型では無いかもしれませんが、

大変、お似合いですよ。

服はその服で大丈夫ですか?」

「おぉ、ありがとう。これはまた。」

慶次は鏡を見ながら嬉しそうに笑った。

「服は大丈夫だった。着てみると、

『圧』が消えたんだ。」


身支度が終わった慶次は

誰が見ても神々しく輝いて見えた。

(このお方が聖女に成り代わって

この国を護ってくださるのかもしれない。)

ヴェイルは慶次の姿を見て思った。


「ヴェイル殿、お待たせいたした。

アルグリット殿、助かり申した。

では、行こうか。」

慶次は背筋を正して歩き出した。

アルグリットは深くお辞儀をする。

ヴェイルは慌てて後に続く。

「マエダ様、

陛下はこちらの部屋で待っておられます。」


慶次がソレイユの間の前に立った。


読んでいただきありがとうございます。

『いいね』も沢山いただき

本当にありがとうございます。

今回でやっとプロローグが終了します。

長く書いてしまいましが、

ここから本章が始まります。

慶次の新しい人生と

この国が必要とする『聖女』の

召喚はどうなるのでしょうか。




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