第41話
第41話です。
いよいよ、慶次の馬が決まります。
名前は勿論です。当然です。
冒険者としての準備も着々として行きます。
では、楽しんでください。
城の外に出て馬舎に着く。
「マエダ様。ここが馬舎です。
今日は誰がいるのかな。」
ヴェルダーが馬舎の戸を開く。
馬舎には馬が居なく、
馬舎の中を女性が掃除をやっていた。
ヴェルダーはその女性に
「アマリエ、ファルネスはいるかい?」
声を掛けたれた女性は顔を上げてこちらを見る。
「あら、ヴェルダー様。こちらにはどうして?」
と言い、慶次を見る。
「あら?こちらの方がお噂の?」
「そうだ。今やソルメラ街の
有名人、マエダケイジ様だ。」
「前田慶次だ。よろしく頼む。」
「お会い出来て光栄です。
厩舎長ですね。ちょっと待ってください。
呼んできますね。」
アマリエは馬舎の外に出て行った。
しばらくすると白髪混じりの
年配の男性が馬舎に入って来た。
「ヴェルダーか。どうした。
ここに来るなんて珍しいな。」
「まぁ、普段は用事がないからな。
今日はマエダ様を連れて来たんだ。」
「かの有名なマエダ様か。
私は厩舎長のローデリク ファルネスです。
よろしくお願いします。
ここには馬を見に来られたのですよね。
陛下からお聞きしていますよ。
今は馬を牧場に離しているのです。
もう直ぐ戻す時間ですので
ちょっと待ってください。」
ローデリクは掛け声を出した。声が牧場に響く。
しばらくすると蹄の音がして、馬が戻ってきた。
馬達はローデリクには甘えて
顔をくっつけて離れない。
ローデリクは嬉しそうに馬達の頭を撫でる。
「こら、お前達。今日はお客様だぞ。
さぁ、お前らの誰がマエダ様の馬になるのかな。」
そう言われて馬達はローデリクから離れる。
その様子を慶次は眩しく見ていた。
京の都に置いてきた松風を思い出した。
(今度の馬もお前の名前を貰うか。)
慶次は何となくそう考えていた。
馬達がきちんと並んで慶次の方を見ている。
ローデリクは
「今、城にいるのは6頭です。
この国で産まれて育った馬が3頭。
野生の馬を連れて来たのが2頭。
親とはぐれて動けなくなっていたのです。
そして、最後の一頭が魔物で、
調べるとアンヴァルだという事です。
性格が穏やかだったので
他の馬達と一緒でも問題はないだろうと
ここで生活させています。」
慶次はそれぞれの頭を軽く撫でる。
アンヴァルと呼ばれた魔物も
同じ様に撫でようとすると《空蝉》が発動した。
『前田様。この馬にしましょう。
契約をすれば契約獣として
前田様の力になる事、間違いありません。』
『ん?この馬か?』
慶次は
「ローデリク殿。この馬にする。」
それを聞いたアンヴァルは嬉しそうに跳ねる。
「マエダ様、私に殿は要りませんよ。
そうですか?この馬にされますか?
分かりました。
では、その様に陛下に報告します。
では、名前をつけてやってください。
魔物ですから契約獣としてマエダ様にお仕えます。
風の様に早く走り
主人の身を護ると言われています。」
「なるほど。名前は既に決めておるのだ。
俺の國の馬の名前だ。」
「なるほど。お聞かせいただいても?」
「《松風》」
慶次はアンヴァルにそう告げた。
アンヴァルの体が光り輝く。
『ありがとうございます。
私はこれから貴方様にお支えします。
あぁ、なるほど。では、殿と。』
《松風》が慶次に頭を擦り付けて甘えている。
ヴェルダーが呟く。
「会話していそうだな。」
それを聞いて慶次はサラリと
「《松風》とか?話をしたよ。
契約獣と話はできるだろ?」
と当然の様に話す。
ヴェルダーはビックリして
慶次とローデリクの顔を交互に見る。
「ん?まぁ、私は話せんよ。
馬がそういう気持ちだろうなと
考えて世話をしているだけだ。」
ローデリクは嬉しそうにそれを見ていた。
「では、《松風》。
明日、迎えに来るからな。
お前の馬具を頼まないとな。」
《松風》は少し寂しそうに慶次を見送った。
慶次はヴェルダーと一緒に馬舎を出た。
「マエダ様。見て直ぐに決断されましたね。」
「ん?何。
《空蝉》がそれにしろと言うのでな。
何かあるのだろう。」
慶次は当然の様に答える。
「あぁ、なるほど。それなら大丈夫ですね。
では、マエダ様。
明日から頑張ってください。
武勇伝を楽しみにしていますよ。」
ヴェルダーは馬舎を出てソルメラに帰って行った。
慶次は自分の部屋に戻る途中で
グレゴールに出会った。
「あ、マエダ様。ちょうど良かったです。
今、伺う途中でした。」
「グレゴール殿か。どうした?何かあったのか?」
「はい、マエダ様の家を何軒か見つけてきたのです。
カティアも一緒に見てもらおうかと。」
「おぉ。それは有り難い。
カティアは部屋におるか?」
「どうでしょうか。
まぁ、まだ家には戻っていないと思います。」
「そうか。では、部屋で見るとするか。」
グレゴールと部屋に戻ると
カティアは部屋を出るところだった。
「カティア、ちょうど良かったぞ。
グレゴール殿が、家を探してくれたらしい。
一緒に見てくれるか?」
「あ、ケイジ様。お帰りなさいませ。
ケイジ様の物件ですか?私で大丈夫ですか?」
カティアは心配そうに話す。
「カティア達が一番長くこの家に居るのだから、
カティアが見て決めてくれると有り難いが。」
慶次は当然という感じで話す。
グレゴールも頷いた。
カティアは少し困惑して部屋に戻って
渡された紙を見る。
「候補は3軒。場所はブランタンシアの中です。
場所的には色々ですが、
そこまで不便という事は無いと思います。
カティアはどうする?
ここに通うか、ここに住むか。」
グレゴールはカティアに聞いた。
「え?私は通いで…。」
と言い掛けた声を遮り慶次がサラリと話す。
「ここに妹のミレーナと住めば良かろう?
それなら俺も安心して家を空けられる。
執事も一緒らしいが、大丈夫か?
カティアが嫌でなければ一緒に住むか?」
それを聞いたカティアは思わず笑ってしまった。
「ケイジ様。それってプロポーズみたいですよ。」
「え?いや、そういうつもりでは無いが、嫌か?」
慶次は慌てて尋ねる。
「いえ、ミレーナにも聞かないと。
あとは執事様はどなたに決まられたのですか?」
カティアが恐る恐る尋ねる。
グレゴールが優しく話す。
「カティア、大丈夫だ。
あの様な事にならない人物を選んだ。
その事でカティアが困る事は無い。
昼の侍女達は全て明日には城から居なくなる。
数日は掛かるだろうが、
この帝国からも居なくなる。」
その言葉にカティアは驚いて慶次を見る。
慶次は黙って頷く。グレゴールは続ける。
「あの者達はカティアは知らないだろうが、
聖女様召喚反対の者達だったのだ。
陛下も前々からどうすべきか
考えておられた中での出来事で、
直々にヴェルナー侯爵に話をして
ドラグレイヴ王国への帰国で話をつけた。
まぁ、奥方様は全員あちらの出身で
帰国するのは簡単だろう。
もう、この帝国に戻って来ることもない。」
グレゴールの話を聞いてカティアは泣き出した。
慶次はその様子を見てオロオロする。
「カティア、大丈夫か?
もう、嫌な思いはせずに済むんだぞ。」
カティアは涙を拭い少し笑って
「違うのです。
私達平民の思いをも考えて下さって、
嬉しかったのです。」
グレゴールは少し笑って
「今は私達も貴族と言われているし、
結婚はドラグレイヴ出身の方とする事が多いが、
歴代の陛下方はドラグレイヴの出身者とは
結婚をされた事は無いと思う。
陛下の魔法保有量が多いのがその表れだ。
気持ちは私達よりもカティアと同じだと思う。」
それを聞いたカティアは益々、涙した。
「陛下が私達と同じって畏れ多いです。」
慶次はカティアの優しく頭を撫で
「アシュレイン殿は
この國の誰よりも民の気持ちを
最優先に考えておられる。
それは俺は前回の店の件でも
今回の件でも良く分かったぞ。
素晴らしい君主だ。」
それを聞いてグレゴールも満足そうだ。
それを見てカティアも安心した顔になった。
「さて、カティア。ここにミレーナも呼ぶか。
早く基盤を作る事に越した事はない。」
慶次はグレゴールに頷く。
グレゴールはブレスレットに話しかける。
「誰かミレーナに声を掛けて
マエダ様の部屋に来させてくれ。」
ブローチから声がする。ダリウスの声だった。
「分かりました。ミレーナに伝えます。」
暫くして外からパタパタと足音がした。
ドアの前で止まる。
ドアがノックされミレーナが入って来た。
「お呼びと伺いましたが、どうかされましたか?」
部屋の中にグレゴールが居るので
驚いて固まっている。
「ミレーナ、ケイジ様の家の事で呼んでもらったの。
物件をグレゴール様が探して下さって。どれが良い?
私達次第で住み込みでとも言われているの。」
ミレーナはそれぞれの顔を交互に見て
「え?それってオイシくない?
お金、浮くでしょ。決まりよ、決まり。」
と話して、ハッと我に返った。
「えっと、どうしようかな〜。」
と誤魔化す。カティアが大笑いして
「いや、もう遅いでしょ。」
ミレーナは照れ臭そうに物件を見る。
「お姉ちゃんはどれを良いと思ったの?」
カティアが慌てて物件を見る。
その様子を見ながら慶次はグレゴールに聞く。
「執事殿は誰に決まった?」
「はい。この帝国の貴族で子爵の
オズワルド フェルナークと言います。
大変有能な男ですから、
マエダ様のお役に立つと思いますよ。」
「そうか。
まぁ、カティア達が安心して
生活して仕事出来る者ならば全く問題ない。」
「それならば、大丈夫です。
明日にでも紹介しようと思っていたのですが、
マエダ様の明日のご予定は?」
「そうだな。
朝から冒険者ギルドに行って
魔法の鍛錬をする予定だ。
それでギルドマスターからの
合格が貰えれば昼からは城の外だ。」
「なるほど、もう冒険者達として
活動をされるのですか。それは頼もしい。
それでは、帰られたら私の所へ来ていただけますか?
執事の紹介をさせていただきますね。
物件も今日にも決まりそうですから。」
グレゴールは笑いながらカティア達を見る。
カティアとミレーナは3軒の物件を交互に見ている。
「そうだな。
物件はカティア達に決めてもらおう。
俺は何処でも構わんしな。」
それを聞いたカティアとミレーナは
顔を見合わせ1枚の紙をグレゴールに渡す。
「私達はこの物件が良いです。
ちょうどお城と門の中間ですし、
私達の買い出しも
ケイジ様の鍛錬にも問題ないかと思うのです。」
グレゴールはカティア達が選んだ物件を見て
「なるほど、これは良い物件ですね。
あちこちに程よい距離感です。」
慶次も物件を見て
「馬屋も良いな。家の中にある。
ここに決めるか。」
カティア達も嬉しそうに頷く。
グレゴールは
「分かりました。
では、明日にでも契約して
明後日には家に入れる様にしておきますね。」
「そんなに早くで大丈夫か?
まぁ、それなら、明後日は
予定を入れないでおこう。」
物件も決まり慶次は湯浴みをして食堂に向かった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
馬が決まりました。
慶次にはキセルと《松風》がセットですよね。
キセルを手に入れたのですが、
今の世の中で街中でキセルって
等と思うと描写が出来ません。
まぁ、イベント多すぎて
キセル描写が出来ないのも
事実ではありますが。
次回は食堂での話です。
では、次回もお楽しみにしてください。




