第29話
第29話です。
ここでこの帝国の成り立ちを書きました。
読んでいただき、皆さんが色々と
考えてくだされば嬉しいです。
慶次はドアの前に立ち
みんながしていた様にノックした。
中からユリウスの声が聞こえた。
「はい、どうぞ。」
慶次はゆっくりとドアを開けた。
「あ、マエダ様。おはようございます。」
「ユリウス殿、おはよう。今日もよろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
では、今日は昨日の続きから始めたいと思います。
あ、その前にマエダ様の今後の家ですが、
マエダ様はブランタンシアとソルメラの
どちらで生活されるのがよろしいでしょうか?
家には侍女であるカティアも一緒に行きます。
後は、執事として誰かが同行すると思います。」
「執事とな?それは何だ?」
「執事とはですね。
マエダ様の家の事や今後の予定を管理して
マエダ様のお手伝いをする者です。
マエダ様は冒険者として
毎日、城の外へ出られますので、
城での予定の確認などは執事が行い、調整をします。
そして、調整した内容をマエダ様に報告して
こちらの行事などに参加していただきます。
お金の管理もそうですし、
食事などの生活全般の予定も
執事に管理してもらいます。」
「な、なるほど。
中々、大変な仕事ではないか?
俺は好き勝手に行動する故に。」
「マエダ様はいつも通り、
生活していただいて構いませんよ。
それをも管理するのが執事の仕事ですから。」
ユリウスは涼しい顔で話す。
「今後、マエダ様に冒険者として
仲間が増えれば同じ屋根の下での
生活になるやもしれませんから、
執事は必要ですね。」
「そういうものなのか。
まぁ、俺は食事は家で摂らんだろうし、
そこまで世話をしてもらう事も
無いと思うんだが。」
「マエダ様は普通の冒険者の者達とは
違う立場ですので、
絶対に必要な者ですよ。」
ユリウスの顔には譲りませんよと書いてあった。
慶次は笑いながら
「分かった、分かった。
では、カティアもおるし、
ブランタンシアの方がいいと思うが。
鍛錬にも城の修練場に行きたいからな。」
「そうですね、その方が良いですね。
分かりました。では、その様に手配いたします。」
ユリウスは頭を下げた。
「では、本題である
この国の最後の王国と我が帝国の
話をしましょうか。」
「そうだな。よろしく頼む。」
「マエダ様、昨日の王国の話で
分からなかった事はありますか?」
「昨日の王国か?それは大丈夫だ。
あの本も読みやすくて分かりやすくて助かった。」
「それは良かったです。
では、まずは最後の王国である
ドラグレイヴ王国の話をします。
この王国の精霊王はサラマンダー様です。
そして子達は竜人種族です。
この王国には聖女様は必要ないので
居られません。」
「ほぅ、必要ないとな?」
「はい、この国の存在が昨日もお話した
魔物が必要な理由なのです。
この国の国民は魔法保有量はゼロです。
魔法を使えない種族なのです。
そして、己の力のみが
自分の力を誇示し、
ドラグレイヴ王国の全国民に
自分を認めさせる事ができるのです。」
それを聞いた慶次の顔がキラキラと輝く。
「それはまた興味深い國だな。
己の力のみが自分を表せるものなのか。」
「そうです。
現在の国王はアルフォンス ヴェルディア様です。
そして、毎年王国の男性全員で武道大会を行い、
それに最後まで勝ち進んだ者が
次の国王になるという
他の王国にはない理念があります。
女性はその強き者の伴侶になる事が
自分の存在を国民に認めさせる事ができるのです。」
「武道大会とな?」
「そうです。
一番、力の強い者がこの王国の国王として
この王国の国民に認められるのです。」
「では、毎年、国王が変わる可能性があると?」
「そうです。
まぁ、それでも強い者はやはり強いので
そうそう覆りません。
現国王が在位されて1000年ぐらい経ちます。」
「1000年とな?竜人種族は長命だな。」
「そうですね。
この世界での一番の長寿は
ドラグレイヴ王国の国民です。
ドラグレイヴ王国の国民で
寿命が2000年ぐらいです。
その次に長寿なのが、
アクアリェシエ王国の国民で
寿命が1500年ぐらいです。
次がシルヴァディア王国の国民で
寿命が1000年ぐらいです。
そして最後はグラネイド王国の国民で
寿命が500年ぐらいですね。」
「この世界の国民は全てが長寿という訳か。」
「はい。そして召喚された聖女様が
大体、100年ぐらいの寿命だと聞いています。」
「100年でも俺の國より長いぞ。
俺の國の寿命は50年ぐらいか。
まぁ、稀に80年ほど生きる者もおるが。」
「かなり、短命ですね。
まぁ、概ね聖女様と同じぐらいですね。」
「ちょっと脱線しましたが、
そんな国ですので、魔物を倒して
己の力を試す、自分が魔物に勝つ事で
強くなるのに必要なのです。
そして、これはこの国民だけに
起こる事なのですが、
魔力が無いから起こるのかは、
はっきりと分かっておりません。
自分の力を制御出来ずに『オド』が
暴走してしまうのです。
この世界の人の体内には
『オド』という物があります。
ドラグレイヴ王国の者達は
その『オド』の暴走を日々の魔物狩りで
止めているのです。
他の国民には何故か暴走が起こりません。
その為、我が帝国とドラグレイヴ王国以外に
冒険者ギルドはありません。
ただ、それだけでは暴走を止める事が難しいのと
気質的に強い者に従うという事があり、
毎年武道大会にて強い者を決めているのです。」
「なるほどな。
だからこそ、魔物が絶対に必要なのだな。
ユリウス殿、『オド』とは何だ?」
ユリウスが頷く。
「その通りです。
あ、『オド』は自分の体内に
蓄えているエネルギーですね。
そして、『マナ』という物が有ります。
『マナ』は自然界に
蓄えられているエネルギーの事を言います。」
「すまん、ユリウス殿。エネルギーとは何だ?
分からん言葉が多くて申し訳ない。」
「大丈夫ですよ。他の国から来られたのですから。
分からない事はその時に聞いていただく方が
他の事も理解が早く出来ると思います。」
ユリウスが笑って答える。
「エネルギーとは簡単に言うと
力であったり精気であったりします。」
「なるほど、精気とは?気骨だろうか?」
「そうですね。人が生きていく上で
必要な精神とでも言いましょうか。」
慶次は頷いた。
「脱線ばかりですまんな。」
「構いませんよ。それぐらい複雑な背景があるので、
一つ一つを理解してもらわないと難しい事ですし、
この世界の話には時間がかかるので。」
ユリウスは話を戻して続けた。
「そして、より強い者を誕生させるために
ドラグレイヴ王国の国民は
『番』としか結婚できませんし、しません
というよりもしようともしませんの方が
正しいでしょうか。
ドラグレイヴ王国の国民は
会えばお互いに『番』と認識して
結婚して子供を産みます。
しかし、『番』は絶対に居るとは限らず、
結婚出来ずに死んでいく者もいます。」
「『番』としか結婚できんと。
中々、難しい国民だな。
結婚出来ずに生きていくのは辛くは無いのか?
まぁ、それをユリウス殿に聞いても分からんか。」
ユリウスは黙って頷いた。
「しかし、弱い者も居るだろ?
その者はどの様にして生きていくのだ?
その話の流れだと
『番』は強い者にしか現れないと聞こえるが。」
「そうですね。その通りです。
だからこそ、この帝国が誕生したのです。」
慶次は少し困惑した。
「という事は、この帝国は
元々、ドラグレイヴ王国の国民だったと?」
「そうです。
この帝国が誕生したのは
ドラグレイヴ王国の理念のせいです。
『番』も居らず、勝てなかった者達が
王国を逃げる様に王国を捨て、まずは村を作り、
それがやがて帝国になったのです。」
「しかし、この國の国民は
色々な種族が居ると言うて無かったか?」
「そうです。逃げる様に王国を後にし、
他の王国で生活したりする内に
お互いが好きになってその王国の者と結婚する。
そして子供が産まれる。
その子達が結婚して子供がと、段々と
竜人種族の『血』が薄くなっていきました。
それでも、竜人種族の『血』が残っています。
だから、冒険者ギルドがあり
暴走を止める様にしています。
血が薄い分、魔物を狩る事で
暴走が起きる事は殆どありません。」
「そういう事なのか。
いや昨日、カティアが言った事が
頭から離れなくてな。
意味も分からんからどうしようかと
思うておってな。」
「カティアがですか?」
「そうだ。まぁ、こんな事を
言っていいかは分からんが、
自分の血を抜きたいと。」
ユリウスが驚いて頷く。
「それがあの時は何を意味するかは
分からんかったが、今はそれを理解できた。」
「そうなのですね。カティアが。
しかし、それはこの帝国民全員の思いです。
ドラグレイヴの国民が
この帝国で問題を起こす度に
帝国民は身を切られる様な思いでいます。」
「そうだろうな。」
慶次はカティアの涙を思い出していた。
この国の闇を見た様な気がした。
「では、この帝国の話をしましょう。
この国はご存知の通りエグザリア帝国と言います。
精霊王はへリアデス様です。
昨日もお話ししましたが、
そういう訳で私達はエクザリア帝国の
精霊王の子ではないのです。
私達がドラグレイヴ王国から逃げ出し、
追われる様にあちこちを転々としました。
その中には勿論、『番』のいない女性もいました。
他の王国にも迷惑はかけられません。
弱いとは言え、暴走は起きますから。
それでも、他の王国に助けてもらいながら
自分達の生きていける土地を探しました。
そして、この土地を見つけたのです。
グラネイド王国の国民は
他の種族とは結婚はしませんが、
物作りに長けておりますから、
色々と手助けをしてくれて、
他の王国の国民は私達を
同じ人として接してくださったそうです。
だからこそ、この帝国民は
沢山の王国民の血が交わり
他の王国とも助け合って生きてきたのです。」
「それは深い。
この國はこの世界には
無くてはならない國なのかもしれんな。」
「そうなのかもしれませんね。
私達はドラグレイヴでは
厄介者だったかもしれません。
力が弱い、『番』がいない。
それでも、この世界で生きていく術を
身に付けながら、
この帝国で有り難く加護を受けて建国し、
今があります。」
「誇らしいな。
この國は俺にとっては今や故郷、当然。
その國が大変な時には
当然の様にみんなで助け合って
生きてきたんだな。
それは素晴らしい事だな。」
ユリウスは嬉しそうに頷いた。
この国の成り立ちが
ドラグレイヴ王国との決別から始まった事。
そして、他の王国の優しさから
ここまでの大国になった事。
慶次は改めてこの世界の複雑さを痛感した。
「さて、マエダ様、これで
この世界の成り立ちや国の話は
全て終わりました。
ここまでで分からない事はありましたか?」
「大丈夫だ。
色々と複雑で、そして難しい問題を
抱えているのも分かった。
俺はこの國に何故呼ばれたかは
いまだに全くもって分からんが、
俺の出来る事をやるだけだ。
自分の事は自分で決める。」
慶次は改めて自分の立場を自分に言い聞かせた。
「そうですね。私達も全力でお力添えします。
こんな時間になってしまいました。
マエダ様、少し遅くなりましたが、
昼食にしましょう。
今日はその後に冒険者ギルドに行っていただきます。
昨日の事がありますから、
カティアは行かない方がいいですね。
私からグレゴール様に伝えておきます。
他の者が同行すると思いますので、
よろしくお願いします。」
「そうだな。俺もカティアに
今朝、そう言っておった。
その方がカティアにとっては良いと思う。
では、ユリウス殿。色々とかたじけない。」
「とんでもございません。
私もこの2日間、楽しかったです。」
慶次はユリウスと別れて食堂に向かった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
やっと、ここまで書けたなと
私自身がホッとしています。
私事ですが、ついこの間、運営様より
『五万字達成!』
とお知らせいただきました。
つらつらの深く考えず、書けたのも
読んでくださってる方がおられると
書いていて嬉しいなという想いが
ここまで書いてこられました。
改めて本当にありがとうございます。
これからも頑張ります。
では、次回を楽しみにしてください。




