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冒険者 傾奇者  作者: 豊葵 月


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第13話

第13話です。


知らない事を頑張ってする時って

本当に大変ですよね。


戦国時代の前田慶次が

異世界の生活を少しだけ

困惑しながらやって行きます。


知らない世界は本当に疲れますよね。

それでも、前を向いて歩いていこうとする姿は

憧れですね。


シャワー室では慶次が悩んでいた。

(これが体を洗う物で…。)

手にボディソープを受ける。

(これは体につければいいのか?)

慶次は手を体に擦りつける。

泡が立ち慶次は驚いた。

(なんだ、これは?

この泡は『ぼでぃそーぷ』の役割りか?)

シャワーの蛇口を捻り、洗い流す。

次はシャンプーを手に受ける。

(これで髪の毛を…。)

ボディソープと同様、

泡がモコモコと立つ。

(え?これはこういう物なのか?

泡が凄いのだが。)

シャワーで洗い流し、

トリートメントを付ける。

(髪の毛が滑るんだが。

これでいいのか?)

そして、そのままコンディショナーをつけた。

(なんだか、ヌルヌルしておるが。

これはこういう物なのか?)

困惑してシャワー室を出た。

シャワー室を出ると

女性が何やら用意をしていた。

「ん?お前は誰だ。」

急に声をかけられ

「キャッ。」

カティアは驚いて手に持っていた服を落とす。

「す、すまん。誰も居らんと思うて。」

素っ裸の慶次が慌てて近寄ろうとする。

「キャー。しょ、召喚者様。何か着てください。」

その叫び声を聞いてか、

グレゴールが慌てて部屋に入る。

「あ、マエダ様、上がられましたか?

これを羽織ってください。」

グレゴールは慌ててバスローブを持ってくる。

「あぁ、すまん。

まさか、女子おなごが居るとは思わなんだ。」

慶次は受け取ったバスローブを腰に巻く。

「マエダ様、これはこの様に。」

グレゴールが慌てて、

バスローブを慶次に羽織らせた。

「マエダ様?コンディショナーの後に

シャワーで流されましたか?」

「ん?あの後に流すのか?

いや、そのまま出てきたぞ。」

そのやり取りを見ていた

カティアはクスリと笑った。

「召喚者様、コンディショナーをつけた後に

もう一度シャワーをかけて洗うのです。」

カティアが言う。

「そうなのか?流してくる。」

慶次はシャワー室に戻る。

シャワーで髪の毛を洗い流して

バスローブを羽織り部屋に戻る。

「中々、難しい作業であったな。

そう言えば、ふんどしを洗うたのよ。

代えはあるか?」

ふんどし?ですか?

ふんどしとは?

あ、下着ですね。ちょっと待ってくださいね。」

グレゴールは再度、部屋から出て行った。


慶次は疲労困憊だった。

いつもは湯をかけ、蒸したむろ

入って終わりだったからだ。

石鹸で体を洗い、

髪の毛までも洗うなどありえなかったが、

しかし出ていた時にはスッキリしていた。

今までに無い感覚だった。

「やれやれ、慣れるまで大変だな。」

慶次は思わず弱音を吐いた。

それを知ってか知らずか、カティアは

「召喚者様、それではこちらにお越しください。」

鏡の置いてある椅子に手を差し伸べる。

「ここに座るのか?何をするんだ?」

慶次は訝しげに椅子に座る。

「今日の晩餐は宴ですので、

召喚者様が主役ですから。」

カティアは話しながら

素早く髪を乾かし、整える。

「これはありがたい。

しかし、この國の女子おなごは器用よな。

誰でも髪結いが出来るのか?」

「メイド達はそれが仕事ですから当然ですよ。」

「なるほど、仕事か。 

そう言えば、ちと聞くが。

この『しゃんぷー』とか『ぼでぃそーぷ』は

匂いのしない物は無いか?

いい匂いだと思うが、

ここまでの匂いは敵にも見つかるし、

敵の匂いや気配も感じられん。」

「えっと、敵ですか?えっと。」

カティアは困惑した。

が、とりあえずはと思い

「香りのしない物を聞いてまいります。

あるとは思いますが。

召喚者様、敵とは何ですか?」

「慶次で良い。敵とは敵だな。

俺に向かってくるやつだ。

そうだな。

戦さを仕掛けてくるやつがって言うのが、

一番分かりやすいか。」

「戦さ?ですか?

えっと魔物の事ですか?

なるほど、確かに香りがあれば

魔物に見つかるかもしれないですね。

明日の入浴にご用意できる様に

確認しておきます。」

カティアは手を動かしながら答えた。

「そう言えば、

お召し物はどれになさるのでしょう。

ケイジ様が気に入られた物を仰ってください。」

「そうだな。

しかし、俺はこの國の宴の

『仕来り』などは知らぬぞ。」

「確かにそうですね。

しかし、グレゴール様がご準備された物ですから

ドレスコードは大丈夫かと。」

「『どれすこーど』とな?」

「はい、場所によって着る服を

決めてある事ですね。

今回の宴でケイジ様が着る服は

グレゴール様がご用意されたので、

全く問題ないと思います。」

慶次はカティアの後ろについて服を見に行った。

ベッドの上に綺麗に並べられた

見た事もない服がある。

全て魔法石が付いて

慶次には『圧』を凄く感じる。

(これは凄いな。保護魔法だったか?

俺には必要ないと思うのだが。

まぁ、借り物だからな。

着るとそこまでとは言え、

見るだけで『圧』を感じると疲弊するな。)

慶次は一番手前の服を手に取った。

「これでいいかな?」

カティアは頷く。

「こちらにされますか?

分かりました。

では、こちらに来ていただけますか?」

カティアは大きな姿見の前に慶次を誘導する。

「服はこれで宜しいですか?」

「そうだな。一度、着てみよう。」

慶次は選んだ服に袖を通した。

見ると『圧』が凄いが、

以前同様、着ると変わる。

「どうだ?おかしくはないか?

この國の服の良し悪しの基準が

全く分からんが故に気になるな。」

「ケイジ様、素敵ですよ。

絶対に大丈夫です。」

カティアは目をキラキラさせながら言う。

「そうかな?他の物も着てみたほうが良いか?」

「そうですね。折角ですし、着てみられますか?」

カティアは別の服を持ってくる。

今、着ている服とはまた別の感じの服だった。

(ふむ、この國ではこういう服が良いのか?)


袖を通した瞬間、魔石が輝く。

カティアはそれに気が付かない。

慶次もそこまで気にしていなかった。

(着る前と着てからの服の着た感覚が

変わるのが面白いな。

着ると着る前の『圧』が消えるというのは。)

「これはどうだ?おかしくはないか?」

慶次はカティアに尋ねた。

「ケイジ様!これ、凄く素敵です。

魔石がキラキラ反射して。」

カティアが歓声を上げる。

その時、ドアの叩く音がした。

「マエダ様、服の方はどうですか?

体に合いますか?」

グレゴールは手に下着を数枚と

ペンとインクを持って帰ってきた。

「あ、忘れとった。

ふんどしはあったか?」

「申し訳ありません。この国には無くて、

この国の下着を持って来たのですが…。

それから、ペンとインクも持ってきました。

最初は書きづらいかもしれませんが、

書くうちに慣れると思いますよ。」

「これがペンとインクか。

書いてみてもいいかね?」

「そうですね。

少しだけなら大丈夫かと。」

「では、上着は脱ごうか。

汚れたら大変だからな。」

脱いだ上着をカティアが受け取る。

慶次は置かれたペンにインクをつけ

紙に書こうとしたが、

ペン先が引っ掛かりうまく書けなかった。

「これは中々難しい物だな。

これから少しづつ練習するか。」

「そうですね。

マエダ様、ペン握り方はこの方が描き易いかと。」

「なるほど、筆とは違うな。」

再度、カティアが選んだ服を着た。

グレゴールには、

服を着た慶次を瞬い光が包んでいる様に見えた。

グレゴールは感情を出さない様に言った。

「マエダ様、先ほどの服よりもお似合いですよ。」

(これも先ほどの服も陛下の物。

先ほどの服は普段着であったが、

今回のは祭事用、威厳があるのは分かるが。

あの時に感じた以上の…。)

グレゴールは、言葉に言い表せない感情を抱いた。

(陛下より威厳があるのも…。)

「やはり、この服では駄目か?」

慶次の言葉にハッと我に返った。

「い、いえそのような事は。」

(駄目だ。このお方は人の感情を読める方だ。)

「やはり、駄目か?

俺はここの『仕来り』が分からんと

言うておったのよ。」

「え?でも、素敵じゃないですか。」

カティアがキョトンとして話す。

「素敵と言われて嬉しいが、

それと『仕来り』は別よ。

グレゴール殿、俺の今の服は

『仕来り』に合うておるか?」

「そうですね。大丈夫かと思いますが、

マエダ様的には大丈夫そうですか?

何やら、『圧』がと言う話を

聞いておりますが。」

「そうなんだが、

着ると心地よく変わるのだが、

不思議な感覚だな。」

「なるほど、と言う事は

肌に馴染むという事ですかね?

やはり、殿下の物である事が

『圧』に繋がるのでしょうか?」

「それはどうだろうか?俺には分からんな。

まぁ、この着物もそこまで悪くないな。」

「そうですか。では、それになさいますか?」

「これは『仕来り』的には大丈夫か?」

「勿論です。陛下がマエダ様にと

お渡しになった物ですから。」

(マエダ様は別の世界から来られた方、

威厳など、あって当然。)

グレゴールは開き直った。

「それでは下も穿いていただいて。」

「お、忘れとった。

ん?これは憤怒し(ふんどし)ではないのか?

これはどう穿く?

この穴に足を入れるのか?」

「こちらが前なので。

ズボンはこちらを。」

慶次は下着とズボンを穿いて立ってみた。

その姿は先ほどの服よりも着心地が良く。

『圧』が無くなった分、

気持ちも軽くなった様な気がした。

「では、マエダ様、行きましょうか?

陛下がお待ちになっております。

部屋に入られる時は陛下の後ろに

続いて入っていただきます。

それから陛下のお話と乾杯、

その後にマエダ様は来客にお話を。」

「何を話すんだ?話す事は無いぞ。」

「まぁ、簡単な自己紹介で十分です。 

マエダ様の名前と顔を来客に

覚えて貰うためですから。」

「そうか。分かった。」

グレゴールの後を慶次が続く。

気が付けば、日もすっかり落ち、

城の外は闇が広がっていた。


読んでいただきありがとうございます。

いいねも本当にありがとうございます。


前の後書にも書きましたが、

いつものお風呂と違うお風呂って

疲れますよね。

慣れればなんて事のない事柄ですが、

アレコレと使う事が無い時代から

アレコレと使う時代への

変化は慣れるまでは苦行でしかないと

私的には思います。


では、次もお楽しみにしてください。

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