第111話
第111話です。
魔物の話しが複雑になります。
思い込みは足元を掬われます。
では、楽しんでください。
慶次達は店に戻った。
《松風》が
『殿。人様に迷惑をかけるのは…。』
と諫める。《風魔》と《風月》は
『ご主人様、大活躍でしたわね。』
『殿。カッコ良いです。』
と慶次を称賛する。慶次は笑って
『まぁ、やられたらやり返すだけだ。』
とご満悦だった。エルネーゼが笑って
「慶次、カインが困っていますよ。」
と話す。
「ん?まぁ、酒は気持ちよく呑みたいからな。」
と平然な顔で話す。初めて見るヴィクトルが
「マエダ様はいつもあぁなのか?」
とカインに聞く。笑いながらカインが頷く。
「慶次に会ってから毎回俺は
慶次が絞め落とした誰かを縛ってると思うぞ。」
と話す。慶次が
「そうか?それは言い過ぎだと思うぞ。
そこまでは無いはずだぞ。」
「いやいや、毎回絞め落とした誰かを
俺が縛ってますって。」
カインが笑いながら慶次を責める。
「ふむ。という事は揉め事はカインが
持って来ておるという事だな。」
慶次がニヤリと笑う。
それを見てみんなが大笑いする。
「え?そんな事ないですよ。
正門の時は俺は居ませんでしたよね?」
「あぁ、あれは。縛っておらんからな。」
と慶次は涼しげな顔で話す。
それを見てみんながまた大笑いする。
慶次の席はいつにも増して賑やかだった。
慶次の席にバントが来た。
「マエダ様、今日もありがとうございます。
マエダ様が来られてから
店での揉め事が本当に無くなりました。」
カインが
「という事はバルト。何か奢ってくれるのか?」
「カインは活躍してないからな。
マエダ様になら奢れるけどな。」
「え?俺も手伝ったよ。
慶次は毎回締め落とすだけだからな。」
慶次は笑いながら
「俺に喧嘩を売った奴から買っただけだ。
そうだな。カインも五月蝿いから店主。
何か酒とここの一番のおすすめを持って来てくれ。
俺からの奢りよ。」
「え?ありがとうございます。
店を守っていただいたのに。
カイン、漢ってのはこうなんだよ。」
「え?ちょっと待ってくれ。
俺、格好悪いじゃないか。」
カインの言葉にバルトは笑って
「そうだな。格好悪いな。
では、マエダ様、少々お待ちください。
とびきりの物を作ってきますね。」
バルトは厨房に戻って行った。
カインは頭を抱える。慶次が真顔に戻り
「で、カイン。先程の続きだが、何を言いかけた?」
「いや、俺の勝手な憶測ですよ。
魔物がドラグレイヴの為に
造られたとは聞いてますよね?」
慶次は頷く。
「造れたのであれば操れるのではと。」
「ふむ。カインの話しは一理あるが、その目的は?
あそこの冒険者達も倒されておるではないか。
わざわざ、自国の民をその様な窮地に立たせるか?」
慶次とカインの話しを聞いて
みんなが困惑した顔をする。ヴィクトルが
「慶次には分からないかもしれない。
しかし、あの国だとやりかねんと思いますよ。」
「それは何故だ?」
「あの国が我がの強さのみが一番大事だからです。
そして、強い者にしか従わない。
あの国で1年に一度、
武道大会が行われると知っていますか?」
慶次は頷く。
「その順位が身分制度を決めている事も?」
「そうだな。ユリウス殿との話しで聞いておる。
それが今回の事と何か関係があるのか?」
「あると言えばあります。
その武道大会で順位が低い者は
どうなると思います?」
「どうなるとは?
お主達の祖先の行動が関係しておるのか?」
「そうですね。関係はゼロではありません。
順位が低い者は冒険者になるしか道が無いんですよ。
他の生活の術は殆ど分かりませんから。
例えば、畑を耕す。物を作る。
そんな事はあの国の国民には出来ません。
そんな生活をしていたら暴走が止まらないのです。」
慶次は納得した。
「が、しかし。
それが凶暴化した魔物とどう繋がる?」
「今までの魔物では暴走が止まらなくなったとか、
強きを求める者達なので物足りなくなったとか。」
カインが続ける。
「俺的にはあの国はやりかねないって事です。
他国の存在を全く気にはしていません。
それは事実です。
でもそれは言い方を変えれば他国は
どうなっても良いと考えている可能性があります。」
「なるほどな。
自国の為に他国を蔑ろにしておると。」
「そうですね。
まぁ、これは俺が勝手に思っている事です。
国では襲われたのはここしかありませんから。」
カインの言葉にみんなが黙り込む。
それぞれが色々な感情と向き合っている様だった。
「ふむ。それは推測という事だな。
確実に分かるまでは公にしないほうが良いだろうな。
では、討伐の話しを聞いても良いか?」
慶次がみんなに尋ねる。
「討伐はギルドの依頼だったのだな?」
「そうです。
ここへ向かう商人や他の王国の者達が
出会って襲われたという情報を
こちらで報告してくれるのです。
そして、マスターが判断し、討伐隊を編成します。
今回は最初の情報ではオークが
商人を襲ったという情報で討伐隊が編成されました。
オークの数が多かったと聞いています。」
「普段でもそういう依頼が来て行くのであろう?
魔物が情報にある場所には
既に居ないのではないのか?」
「そうです。
だから、目撃情報からオークが
移動したであろう場所を割り出します。
現地での情報も大切です。
現地に着けばそれぞれがどう動けば効率が良いか。
それを判断して動く事が多いです。
討伐隊を任されるリーダーはマスターが
Sランクの冒険者の2人中からから選びます。
討伐隊のリーダーになった者は
各チームのリーダーと連絡を取り
メンバーを動かします。今回もそうでした。
今回のリーダーはゼノンでした。
オークなのでそこまでの
移動距離は無いと思っていました。
だから、オークの目撃された場所を
重点的に探していたのです。
でも、現地に着くと魔物の群れの情報が
オーク以外も居る事が分かったのです。
その中には人を襲うはずのない魔物や
ここに居る筈の無い魔物が居たのです。
その魔物が人を襲ったと。」
「魔物自体、人を襲う事は無いのではないのか?
襲う事もあるという事か?」
「そうですね。例えば、オークは雑食です。
あの巨体を維持するのに何でも食べます。
当然ですが、私達も捕食対象です。
動物で言うと熊に近い感覚ですね。
まぁ、見た目は豚に近いですけどね。」
「という事は腹が減っておると人も襲うと?」
「はい。冬は特に食べ物が少なくなりますし、
人が対象になる事が多くなります。
今回の討伐でオークが人を襲ったと聞いて
確かに違和感がありました。
まだ、晩夏でしたから。
食べ物が無くなるなんてあり得ません。」
「確かにな。
だが、違和感を持ったままで向かったと。」
「そういう事になります。
人が襲われたのは事実ですから。」
「それで現地に着くと情報が違っておったと?」
「違うと言うかオーク単体では
無かったという事ですね。
あり得ない話ですが、
オーク目撃情報の少し離れた場所で
複数の魔物が集結していたという感じです。
あの光景は未だに忘れられません。
魔物同時が歪み合う事も無いまま
一つの場所に集まり
何かを待っている様に見えました。
慶次が言う様にあの光景は
確かに操られていたと思えました。」
討伐に行った者達は頷く。
「そうだな。
あれは異様な光景だったな。攻めるのに躊躇した。」
ヴィクトルが
「確かにな。あんな光景は初めて見たな。」
と話す。
「なるほど。
とは言え、統制が取れておらん魔物が
集結するとは…。
だが、情報が少なすぎるな。
決め付けは良くないか。」
慶次もカイン達の話しに困惑していた。
「厄介な事だな。
独りで動く方が良いかもしれんな。
エルネーゼ、最悪の場合
《風魔》を預けても良いか?」
エルネーゼが
「わたしは構いませんが、
《風魔》は大丈夫ですか?」
慶次は《風魔》の顔を見る。
《風魔》は泣きそうな顔をする。
《松風》とヴェンが《風魔》の顔に
自分の顔を近づける。《松風》が
『殿。それは《風魔》が可哀想です。
まだまだ幼いのですから。』
慶次はその言葉に悩む。カインが
「慶次、焦る気持ちは分かりますけど、
《風魔》はまだ幼くて親が必要ですよ。
慶次が親なのですから。」
慶次は大きく溜め息を吐く。
「そうだな。焦ると碌な事が無いな。
少し落ち着いて考えるか。」
慶次は酒を呑みながら考える。
魔物の事、《風魔》の事。今、大切な行動は…。
《風魔》がおずおずと慶次に
『殿。僕、ヴェンと一緒に居て
大人になれば良いの?』
と聞く。慶次は
『すまん。《風魔》それは流石に無理だったな。
色々とあり過ぎて混乱しておった。』
と《風魔》の頭を撫でる。
「すまなかった。暫くはこのまま動く事にする。
エルネーゼ、すまんかったな。少し焦っておった。」
エルネーゼは慌てて
「慶次、大丈夫ですよ。
一度に大きな事が起き過ぎました。
明日にはまた違う依頼があって
今の状態が変わると思います。
私達ですら、最近の魔物の情報に
振り回されていますから。」
「そうだな。功を焦り過ぎた。
地道にいくのが情報収集の鉄則だ。」
カインが
「慶次独りでやるにはこの事柄は複雑すぎます。
俺達ですら、分からない事が多いのですから。
独りとは言わずにみんなでやりましょう。」
と話す。みんなが当たり前だという様に頷く。
「そうだな。俺にしか出来んと思い過ぎておった。」
慶次の言葉にみんながホッとした顔をした。
「今日は楽しく呑もう。
明日の事は明日考えれば良いじゃないか。」
とヴィクトルがグラスを上げた。カインも
「そうだよな。色々有り過ぎた。忘れよう。」
と戯ける。慶次もつられて笑う。
「そうだな。考え過ぎるのも良くないな。
今の言葉は忘れてくれ。明日の事は明日考えよう。」
慶次達は今日も楽しく呑んだ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
元凶はドラグレイヴ王国なのでしょうか?
強さを求めると周りが見えなくなる事もありますよね。
次回は聖女召喚の話を聞きます。
では、次回を楽しみにしてください。




