第109話
第109話です。
ヴェルシアの様子を詳しく聞けたので
急いでエグザリア帰ります。
では、楽しんでください。
裏山からゴブリンを回収し、慶次は
「エルネーゼ、行きと同じ様にするから
ヴェンに跨ってしっかりと掴まっておれ。」
とエルネーゼに言う。
「分かりました。」
エルネーゼはヴェンに跨り
首にしっかりと自分の腕を巻き付ける。
慶次は
「ゲイル」
と詠唱し、自分自身も《松風》に跨る。
「では、帰ろうか。
この現状は急いで報告せねばなるまい。
ヴェン、《松風》頼んだぞ。」
ヴェンも《松風》も行きよりも速い速度で走り出す。
山を越えずに山肌を駆け抜ける。
山は風によって木々が唸る様に揺れている。
慶次達は日没したと同時にエグザリアに着いた。
正門を潜りギルドへ急ぐ。
冒険者ギルドには多くの冒険者達が
手続きをしていた。慶次は
「すまん。急ぎ故に許してくれ。」
と受け付けに割り込んだ。
並んでいた冒険者は呆気に取られ立ちすくむ。
慶次は受け付けで
「今ら帰った。村からの報告は受けておるか?」
「あ、マエダ様。
もう、帰られたのですか?
報告は受けております。
グラネイドの商人も報告しに来てくれました。
マエダ様が帰られたら
マスターから部屋に来てくださいと
言われております。
マスターの部屋へお願いします。」
「分かった。みんな、悪かったな。」
慶次は頷き、レオナの部屋に向かった。
ドアをノックし、部屋に入る。
「レオナ殿。今、帰った。」
「マエダ様、話は聞きました。
ヴェルシアが、壊滅だと。
詳しく話していただけますか?」
慶次達はヴェルシアで聞いた話しを伝える。
「そうですか。
とりあえずは街 ヴェルシアへの
復興支援要請は済んでいます。
明日には支援物資などを
届けに行く手筈を整えています。
しかし、オークとゴブリンが結託して町を襲うとは。
厄介な事になりました。」
「そうだな。
グラネイドには通達をしたのか?
魔物はその方向に向かっておったらしいぞ。」
「はい。
陛下に頼んでグラネイドへの連絡は済んでおります。
魔物は来ていないそうです。
聖女様へ保護魔法を強化してもらう様に
お伝えしました。」
慶次はそれを聞いて安心した。
「それなら襲って来たと言うても何とか防げるか。」
「そうですね。
マエダ様の帰りが思ったよりも早かったので
驚きましたが、後の事は大丈夫です。
で、何がありましたか?」
慶次は今朝からのゴーレムの出来事と
町の襲撃の話をレオナに話した。
レオナの顔色が変わっていく。
「それはどう受け止めれば…。」
慶次は
「起こった事実は変えられん。
今、すべき事を考えねばなるまい。
とりあえず、ゴブリンとクラーケルは
持って帰って来た。
オークは倒せんかったそうだ。」
「そうですね。
とりあえず、早急に鑑定に出しましょう。
クラーケルがエルネーゼの依頼の件ですね?
そして、これが町を襲撃したゴブリンと。
両方とも、凶暴化していたと。」
「そうだな。
ゴーレムの話しと町人の話しを聞く限りでは
そう思う。
赤い目という共通点は双方ともある。
しかし、襲った目的が分からん。
共通点が無さすぎる。」
レオナが頷く。
「確かにそうですね。
しかも、クラーケルは海の魔物。
そんな山奥に行く事は不可能だと思うのです。
誰かが運んできたのかと思ってしまいます。」
「そうですね。
私は薬草を採りに町の外を歩いていましたが、
オークとゴブリンが一緒に行動して
町に現れた痕跡はありませんでした。
突然、町の前に現れた様な感じがします。
襲われて日にちが経っているので、
見落としているかもしれませんが。」
「町人も言うておったな。
いきなり門の前にオークが現れたと。
しかし、そんな事は本当に可能なのか?
可能だとしたら、
俺達が知らない方法があるのではないか?
いきなり現れたと思っておいた方が良いと思うぞ。
物事はあり得ないと思う方を
残しておいた方が良い。」
慶次の言葉にレオナもエルネーゼも考え込む。
「オークとゴブリンの襲撃でも、
俺は最初聞いた時に
統制が取れておるのかと思っておった。
しかし、壊された門の中にゴブリンが入り、
そのまま町中を破壊し始めたと聞いて
統制など取れておらんと考え直した。
統制が取れておるなら門の中に入れば、
ますばオークの侵入を手助けするのが普通だ。
普通ではない事が実際に起きておる。
出現の事もいきなり魔物が現れたかもしれんし、
実は気が付かんかったという事もあると俺は思う。
これはいつもの事と決めつけるのは良くない。」
レオナが
「そうですね。
その可能性は残しておいた方が良いかもしれません。
色々な可能性を考えましょう。」
と話す。慶次が
「しかし、ここまでの厄介事とは思わなんだな。
見えている様で全く見えておらん様に思える。」
「そうですね。
まぁ、本格的に調べ出したのは昨日ですから、
情報としては十分です。
出現場所や出現方法などは
コツコツと調べるしかありません。
マエダ様には申し訳ないですが、
よろしくお願いします。」
「そうだな。
今は《風魔》の事があるから
中々思う様には動けんが、
次の月になれば《風魔》も独り立ちの準備として
ヴェンと離れる覚悟を持ってもらおう。」
それを聞いて《風魔》が寂しそうに
『ヴェンと離れるの?』
と慶次に聞く。
『そうだな。
いつまでもヴェンに甘えていると
《風魔》が大人になれん。
これは大切な事だぞ。
それに、ヴェンには仕事があるからな。
いつまでもという訳にはいかん。』
と《風魔》の頭をそっと撫でた。
母親を亡くし、今度はヴェンとの別れを体験する。
小さい体ではその現実は受け入れられない様だった。
ヴェンも心配そうに
《風魔》の鼻先へ自分の鼻先をくっつける。
エルネーゼは
「慶次、私は慶次の依頼に着いて行きますよ。」
と話す。慶次は首を振る。
「今回の事で身に染みた。
我が身だけなら何とでもなるが、
やはり女子連れでは
動きに制限がかかるからな。
危険な目にエルネーゼを遭わせる訳にはいかん。」
レオナも頷く。
「確かに貴方はAランクの冒険者として強い。
でも、マエダ様には遠く及ばないのは
分かっているでしょう?
マエダ様にお願いしているのは
危険と隣り合わせの依頼だから。
貴方が居なくなって困る人達が居る事を
忘れてはいけないと思う。」
レオナにそう諭されてエルネーゼは黙り込む。
「そうですね。
私がチームに入らないのも、
日帰りでしか活動しないのも
私が毎日ここへ帰らなければならないからでした。
色々な出来事を見て、
自分に出来る事を考えてしまいました。」
「それが貴方の良いところだけどね。
貴方が背負っているものを忘れては駄目。」
「そうですね。分かりました。」
「まぁ、何。
今すぐにどうこうという訳ではない。
暫くはヴェンに《風魔》がフェンリルとして
生きて行く術を教えてもらわねばなるまい。
ただ、期間を決めておかねばと思うたまで。」
「あ、それからマエダ様に
聖女様召喚の話しを陛下から
お伝えする様に言われておりました。
日はまだ決まっておりませんが、
召喚時はマエダ様もご一緒していただきたいと。」
「そうなのか?分かった。
召喚の時に俺が居ても大丈夫なのか?」
「詳しい事は分かりませんが、そうだと思います。
本来なら聖女様の召喚時は現聖女様が
ご一緒されているそうです。
マエダ様に聖女様の代わりに
同席して頂きたいと言われておりました。」
「そうか。では、オズワルドに確認してもらおう。」
レオナと話しを終えてギルドを後にした。
いつも読んでいただきありがとうございます。
凶暴化した魔物の形が少しずつ
見えて来ました。
まだまだ、分かっていない事も多いですが
事実を事実として調べる必要があります。
次回は呑みます。
仕事終わりには必ず呑みます。
では、次回を楽しみにしてください。




