兄様との一日の終わり
学園が終わり、帰宅の時間。
「じゃあな!」
「ん、また明日」
校門前でルカと別れて馬車に乗り込む。
兄様はほぼ毎日生徒会があるので、帰りは僕一人で寂しく馬車に乗って帰らなければならない。
「今日は珍しい兄様がみれたなあ」
完璧な氷の王子様と呼ばれている兄様がトレーを落とすなんて滅多にないことだったから、他の生徒会の人にだいぶ揶揄われていてちょっと鬱陶しそうにしていた。
兄様だって人間だもん。そんなことをだってあるのにね!
でも、鬱陶しそうにしている兄様も素敵だったなあ。
心の中でうっとりしていれば、とある事を思い出す。
あっ、そうだ!
もうアレがなくなったんだった!
買いに行かないと!
「あの店によってほしい」と御者に伝えてたどり着いたのはなんの変哲もない文具屋。
馬車を降りて、お店の中に入ると紙の匂いとインクの匂いがふわりと香る。
「いらっしゃい」
ペコリと文具屋の店主に会釈をして、店の奥へ進んだ。
「どのデザインにしようかな」
立ち止まったのは日記帳のコーナー。
いま使ってるのは花のデザインだから、次は動物のデザインがいいかも。
一つ、二つと手にとり中身やデザインを確認していく。
「あ、これ……かわいい」
目に留まったのは白い猫さんが描かれている日記帳。
その白い猫は美しく凛々しい佇まいでどことなく兄様に似ていた。
「よし!これにしよう!!」
兄様に似てるということで即採用。
とても気に入った!!
この日記帳は兄様への愛を誰にもバレずに語るための大切なものである。
毎日欠かさず記録して、これで7冊目。
「ありがとうございました。」
会計を済まし、満たされた気分で僕はお家に帰った。
お家に着いた後は、兄様が帰ってくるまでに宿題を頑張って終わらす。
兄様の自慢の弟になるためにちゃんと勉強もしてるんだ!
気合いを入れて宿題に手をつけるが、
「早く兄様帰ってこないかなあ」
兄様不足で途中で机に突っ伏してしまう。
んー!だめだめ!兄様の自慢の弟になるんだからあ!!
気合いをいれてまた進めるけど
「ううー!!兄様ー!!」
またバタンと机に倒れ込む。
それを、繰り返しながらやっと宿題を終えることができた。
「やっとおわった!」
うーんと伸びをすれば、
カラカラカラカラ
外から馬車の音が聞こえてくる。
「兄様だ!」
僕はすぐさま課題を閉じて、急いで玄関へ向かった。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
玄関に辿り着けばちょうど兄様が使用人達にお出迎えされているところだった。
2時間ぶりの兄様!!
ちょっと気怠げ……。生徒会忙しかったんだろうな。
疲れている兄様も……色気があって素敵……。
玄関から見えないであろう位置に隠れながら兄様を陰ながらお迎えする。
「お食事もご入浴もすぐご用意できてますが」
「あぁ、先に食事を頼む」
今日は先に夕食かあ。
昨日も一昨日も兄様と夕食を一緒にとっちゃったから……
夜は皆んな、お家に帰ってくる時間がバラバラだから夕食はバラバラで食べてるんだ。
だけどどうしても兄様と夕食を食べたい僕は、適度な頻度で偶然を装い食事の時間を合わせてたりする。
そのための情報収集として、玄関での張り込みは重要なの。
玄関から兄様の姿が見えなくなり、流石に今日はずらしたほうがいいなと感じ僕はお風呂に向かうことにした。
♢♢♢
「ふぅ……お腹いっぱい」
入浴と食事を済ませて自室に戻って来た。
後はもう寝るまで自由時間だ!
早速今日買って来た日記帳を開き、今日の兄様への気持ちを綴る。
9月17日
今日は珍しく兄様が食堂で、トレーを落としていた。
トレーを落としてもスマートに拾い上げて何事もなかったかのように、トレーを返却
していた兄様は、流石だった。
学校にいると兄様と会える時間は減るけど、家では見れない兄様がみれるのは嬉しいな。
今日も明日も兄様にバレずにご挨拶できますように
「できた……」
思いを込めた日記帳閉じて、引き出しにしまう。
「まだこんな時間か……」
ふと時間を確認すれば、22時。
まだ少し、早い。
兄様への夜のご挨拶は22時半頃におこなっている。
兄様は規則正しい生活を心がけているので夜更かしはしないのだ。
それまで、明日の予習でもしてようか。
机に向かい直し、勉強に集中していると次第に瞼が重くなってくる。
「んん……そろそろ限界……。」
時計を見れば23時前。
集中しすぎた……
椅子から立ちあがり、うとうとしながらも兄様の部屋を目指して歩き出す。
部屋を出れば廊下はひんやりと冷たい。
眠い目を擦りながらなんとか兄様の部屋の前へたどり着いた。
ゆっくりとドアノブを捻り扉を開ける。
そこには朝のような慎重さはなかった。
「ん……大丈夫そう……」
部屋が真っ暗になっていることを確認すれば、とぼとぼとベットに近づく。
「にいさま……」
ちゃんと寝てる……
兄様はいつも通りの美しい寝顔でスヤスヤと寝息を立てていた。
「おやすみ……なさい。」
ちゅーーー。
兄様の額から唇を離す。
いつもならすぐ部屋に戻るが、眠すぎて欲望がむき出しになり
兄様といたい気持ちがそれを防いだ。
早く戻らないといけないとわかっているのに……もどりたくない…
「もっかいちゅーしたらもどろ」
ちゅーーーーーーーーーーー。
今度は長めに頬へ。
兄様のほっぺ……。
つるつる、すべすべ。
もっとしていたい……。
でも、はやくもどって寝ないと……
うとうとしていた僕はそのまま、ボフンと!ベットに倒れ込んだ。
「んみゅ…….」
フカフカ。気持ちいい。
もう、瞼開かない……。
そのままベットに身を委ねると
頭をゆっくりと撫でられる感触がする。
んゆ?
「今日はなかなか来ないと思ったら……」
あれ??兄様の声?
「このまま寝かせてあげたいが、朝起きたら驚くだろうからな」
兄様の声に耳を傾けているとふわりと身体が浮く感覚と知っている匂いがした。
兄様の匂いだ……。
柔らかくて、甘すぎない落ち着く匂い。
兄様……どうしてここに……居るの……。
ゆっくり、ゆっくりとぼくの意識は落ちていく。
「おやすみ。フラン。」
最後に暖かいなにかが、頬に触れた気がした。




