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学園での兄様

学園が見え始めると、兄様は目を覚ましたようだ。


そろそろ兄様と二人っきりでいられる時間に終わりが見えてくる。


兄様は馬車が止まると僕のことなんて気にせずに馬車を降りた。


「あぁ、行っちゃった」


高等部と初等部は校舎が離れてるため、兄様と会うことはない。


兄様の後を追いかける様に僕も馬車から降りるが、人気者の兄様は既にご学友達に囲まれて距離ができる。


兄様と途中まででもいいから一緒に歩きたかったな……


「はぁ……」


さっきまでの幸せな気分はどこかへ行ってしまった。


「おはよ。フラン」


「あ、ルカ。おはよう。」


「今日も、ファラン様の人気はすごいな。」


一人で教室へ向かっていると同じクラスのルカが声をかけてくる。


ルカは僕の唯一の友人だ。


この国1番の大商会の息子で、爵位持ちだけど貴族ぽくないところが好きだ。


「兄様と一緒のクラスの人達が羨ましい。

僕も兄様と一緒に学園生活したいのに……」


「相変わらずファラン様大好きだなあ。」


「ルカだってセラ様のこと好きでしょ?」


「いや、そりゃ兄貴のことは好きだけど、フランとレベルがちがうっていうか、そんなにずっと兄貴のことなんて考えてないし」


ルカのお兄さんのセラ様も成績優秀で兄様と同じ生徒会に所属している。


とても素敵な兄様がルカにもいるのに、兄様のことを考えたりしないなんて!!


「ルカはまだ愛を知らないのね」


「はあ!?なんだよいきなり!まっ、まさかフラン恋してるのか!?」


「あぁ。はやく兄様に会いたい……」


「いや、話きけよ!!てか、さっき別れたばっかだろ」


「もう兄様と離れて8分23秒経ってるんだよ?」


「いや、細かすぎて怖いわ!」


そんな調子でルカと一緒に教室に入れば、僕は口を閉じる。


兄様の魅力は僕だけが知っていればいい。


だから、クラスでは兄様への愛は語らない。


すると僕の口数は減ってしまう。


僕達は空いてる席に並んで座った。


先生が来るまでの間、本の続きを読もうかな。


カバンから本を取り出せば


「ほんっと、ファラン様以外の話してくれないよな」


と言われる。


「んー、だってなに話していいかわからなくて」


僕の頭の中はいつも兄様のことをでいっぱいなんだもん。


「そんな難しく考えなくていいのに。まあ、いまさらだけどな」


ルカはそう言うと机に突っ伏した。


どうやら授業が始まるまで寝るみたい。


♢♢♢


ゴーン!ゴーン!


午前中の授業が全て終わり


昼休みのチャイムがなる。


「ルカ!はやくはやく!」


「はいはい。わかってるって」


はやく席を確保しないと!


早足でルカと一緒に食堂へ向かう。


「わざわざ昼食まで会いに行かなくても、家でいつでも会えてるだろ。」


「でも、学園での兄様は学園でしかみれないよ!」


そう。目的は兄様である。


はやく、兄様に会いたい!


食堂に辿り着くと


「よし!今日も座れた!」


「急がなくてもいつもこの席だけ誰も座らないじゃん。」


「席が決まってるわけじゃないんだから、誰か座るかもしれないだろ」


「でも、俺らほとんどこのテーブルじゃん」


確かに…


兄様は生徒会に所属していて、昼食も生徒会の人と食べていることが多い。


食堂は、どこの席に座ってもいいんだけど生徒会の人達が座るテーブルはここって暗黙の了解?になってるみたい。


だからその周りのテーブルは倍率が高くて

なかなか座れないはずだったんだけど。


「僕たち……なんでこの席に座れてるんだろう?」


入学したての時は、座れなくて兄様から離れた席で泣く泣く食べていた時もあったのに……


ルカと首を捻り合うがわかるはずもなく


「とりあえず注文してくるわ。いつものでいい??」


「うん。お願い!」


ルカが席を離れテーブルには僕一人になった。


兄様まだかな……お待ち侘びていると


次第に周りがざわめき始めた。


兄様が来たんだ!!


「セラ、今日の議題のことなんだが……」


「ん?なになに?」


兄様はルカのお兄さんのセラ様と一緒になにやらお話しをしながら注文しに向かっている。


「あー腹減った……」


「フィン!!注文よろしくー!俺Bランチ!」


「俺はCランチで」


他の生徒会の人たちもぞろぞろとやってきて隣のテーブルが人で満たされていく。


フィン様はいつもパシられてるな。


「ほい。本日のおすすめランチ」


兄様の姿を目で追っているとルカが料理を運んできてくれた。


本日のおすすめランチは、僕のお気に入りで毎日注文している。


以前はたまに他のメニューも頼んでいたんだけど、いつからか兄様も本日のおすすめランチを注文するようになって、それからは毎日これだ。


「ありがと。今日もおいしそう。」


トレーには鶏肉のソテーとほうれん草のポタージュとパンのセットがのっていた。


早速食べ始めていると、兄様がトレーを持ってご学友達の元へやってくる。


あ!兄様もやっぱり今日のおすすめランチだ!!


「お前、先にずるいぞ。」


「ずるいと思うなら自分で取りにいけばいいだろう?その分はやく食べれるぞ」


「えー。だってめんどくさいしー」


「そうそう。」


「なら、我慢するんだな」


席に座り、皆んなよりも先に食べ始める兄様。


自分のことは自分でやる兄様!!カッコいい!!


兄様のテーブルの会話に耳を澄ましながら心で兄様を称える。


ご学友と普通に会話をする兄様は相変わらずの無表情だけど、お家にいる時より口数が多い。


僕もあんな風に兄様にお話してもらいたいなあ。


「はぁ……」


「なんだよ。ため息なんかついて」


ルカがパンを齧りながら聞いてくる。


「兄様にお話ししてもらいたい。」


「普通に話しかけたらいいんしゃないのか??」


「それは無理だよ。嫌われてるんだから」


「そうかあ?なんで嫌われてると思ってるわけ?誰に対してもファラン様はドライだろ?」


「それは……」


僕が5歳。兄様が11歳の時ーーー


兄様と二人で部屋で過ごしていた時だった。


すでに兄様が最高にかっこよくて素敵なことに気づき、大好きで、その気持ちを抑えられず急に兄様に抱きついてしまったの。


「にいさま……」


「……っ!」


ぎゅむっと兄様の腰に抱きついた僕は、兄様にくっつけて嬉しかったんだけど、次の瞬間僕は思いっきり突き飛ばされたんだ。


僕はいきなりのことでなにが起こったかもわからなくて放心している間に兄様は走って部屋を出てしまったんだ。


「うっ……うう。ふぇ……」


一人取り残された僕は大好きな兄様に拒絶されたショックで父様が来るまでずっと泣いてた。


「ほーん。そんなことが」


「だから僕は兄様が大好きなことをバレないようにしないと!っておもったの」


「んー。俺はファラン様がお前を嫌ってるとは思わないけどなあ。」


「気を使わなくても大丈夫だよ。僕は平気だし」


ふと気づけば生徒会の人達が食事を終え、兄様もトレーを返却しに行く所だった。


「まあ、例えお前がファラン様に嫌われてても、俺はお前のこと大好きだからな!」


ルカは明るくそう告げた。


きっと僕のことを励ましてくれてるんだ。


ルカの気遣いに嬉しくなる。


「僕もルカのこと大好きだよ」


そう答えると


ガシャン!!!


不意に大きな音が食堂に響いた。


「わあ!」


急な音にビクッと方が飛び上がる。


驚きながらも音の方へ目線を向ければ、


「すまない」


それは兄様がトレーを落としてしまった音だった。




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