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兄様との1日の始まり

僕は兄様が大好きだ。


キラキラ輝く金色の髪も、すっとした切れ長のきれいな瞳も、ふさふさのまつ毛も、控えめなのにすっと通った鼻筋も、血色のいいぷるんとした唇も……全部、全部大好き。


でも、兄様の魅力は顔だけじゃない。


学園ではいつも成績トップクラスで、剣術だって先生が太鼓判を押すほどすごいんだ。稽古をつけてもらうたびに、やっぱり兄様はすごいなって思う。


それに、今に満足せず、もっと上を目指して努力し続けるところも本当にかっこいい。


そんな兄様を尊敬して、好きにならないほうが無理だよ。


それに比べて僕は特にこれといったものはなくて、学園の友だちには、本当にあのファラン様の弟なのか??と言われてしまうほどの平凡なんだ。


兄様に相応しい弟になるためにこれでも頑張っているんだけどね。


そんな僕は朝日が登り始めた頃、今日も誰よりも早く起きて、寝巻きのままこっそり自分の部屋をでる。


「よし、誰もいない……」


人気の無い廊下をてくてくとすすんでいけば、とある部屋の前で立ち止まった。


今日も寝てますように……


心の中で祈りを捧げドアノブに手を伸ばす。


音を立てないようにゆっくりと捻り、扉を少し開けて中を覗き込めば


カーテンはまだ閉じられていて、日の光がまだ入っていない。


扉の隙間に耳を近づけて部屋の中から音がしないか確認する。


物音も……聞こえない……


「よし……兄様はまだ寝てる……」


扉の隙間をゆっくりと広げ、部屋に入り静かに扉を閉めた。


物音を立てないように、そっとベットの側へ近寄ると、そこには穏やかに眠る大好きな兄様が。


「兄様……おはようございます。」


小さな声でそっとつぶやく。


今日もなんて素敵な寝顔……


寝具に包まれて仰向けで寝ている姿は、絵本に出てくる眠り姫みたいだ。


もしかしたらあの絵本のモデルは兄様なのかもしれない。


寝台に広がる金の髪をそっと掬い取る。


兄様の髪……今日もきれい。


兄様の髪はすごく長くてお腹くらいまである髪をいつも一つに結んでいる。


寝る時だけ髪を下ろしているから、この姿もレアなのだ。


僕の一日の始まりは兄様の寝顔に朝のご挨拶をすることから始まる。


もちろん兄様には秘密。


もし、兄様にこのことがバレてしまったら


余計に兄様に嫌われちゃうかもしれないから


だからいつも兄様の寝顔を眺めるために必死なのである。


でも兄様は朝があまり強くないみたいで、


僕が部屋を覗くと絶対に寝ているのでまだ一度もバレたことはない。


そして、もう一つ


「えへへ……兄様……今日も大好き」


ちゅっ


兄様の額にちゅーをする。


これも兄様には内緒。


ちゅーは最大の愛情表現だって本で知った

その日から、兄様にバレないようにちゅーを続けている。


いつかバレてしまう日がくるかもしれないけれど、それまでは許してね兄様。


よし、そろそろ部屋を出ないと兄様が起きちゃうかもしれない。


名残惜しさを感じながらも朝の支度をするため、速やかに部屋を後にした。


起きてる兄様に会えるのは朝食の時間。


兄様に会えるし、シェフが作ってくれる料理はほっぺがとろけそうになるくらいに美味しくて僕は食事の時間が大好き!


「父様。兄様。おはようございます。」


「おはよう。」


「おはようございます。」


父様と起きている兄様に挨拶をした後、食事が始まる。


母様は僕を産んだ後、すぐに亡くなってしまった。


だから僕が大好きな兄様は僕のことを嫌っているんだ。


使用人が食事をテーブルに運び終われば、まずは父様が口に運ぶ。


それに続いて僕たちも食事を始めた。


僕は一番好きな、じゃがいものサラダを口にいれる。


んん~!おいしい!


僕はチラリと兄様を見れば、パンを一口サイズにちぎり、口へ運んでいる最中だった。


パンを口にすれば、ほんの少し兄様の表情がやさしくなる。


このパンは兄様の好物だもんね。


兄様が嬉しいと僕も嬉しい!


心がほわほわするが、ハッと思い出す。


あっ、いけないいけない。

兄様のこと見過ぎちゃだめ。

僕が兄様のこと大好きだってバレちゃう。


食事に目を向けなおし、ポタージュを一口。


これもおいしい!!


食事の間、聞こえるのはカトラリー同士がぶつかる音だけ。


みんな気づいているかな?挨拶以降誰も喋っていないことを。


僕の家族は全然会話をしない。


それを嫌だと思ったこともないけれど、父様も兄様もなに考えてるのかなって気になったりはする。


兄様も僕のこと考えてくれてたらいいのにな……なんてね。


そんなこと絶対ありえないけど。


父様が食事を終えると先に部屋をでた。


次に兄様。最後に食べ終わるのはいつも僕。


頭の中でいっつもおしゃべりしてるから、食事のペースもゆっくりになってしまっていた。


そろそろ僕も準備しないと!!


急いで完食し僕も学園へ向かう準備をするため自室に戻った。


兄様は17歳だから高等部へ、僕は11歳だから初等部だ。


「行ってきます。父様。」


「行ってきます。」


書斎にいる父様へ挨拶をしてから二人で一緒の馬車に乗り込むと馬車がゆっくり動き出し、家がどんどん遠ざかっていく。


この時間は1日のうち起きてる兄様と二人っきりでいられる最高に幸せな時間だけどもちろん馬車の中でも兄様との会話はない。


兄様は馬車に乗ると眠くなっちゃうみたいで、すぐに寝てしまうんだ。


学園までは馬車で30分ほど、なだらかな道でコトンコトンと気持ちよく馬車が揺れるから、僕も気を抜いたら寝てしまいそうになる。


だけど兄様のことをみていたいから頑張っていつも起きているんだ。


馬車が動き出して数分後兄様は今日も眠ってしまった。


んーーー。だけど前までは兄様は普通に起きていたのに、急に眠ってしまうようになんだよね。


なんでだろう?疲れてるのかなあ?


ちょっぴり心配だけど、寝てる時は兄様のことゆっくりみれるからこのままがいいなあ。


それに兄様は一回寝ちゃうとなかなか起きないから……


「んしょっと」


僕はバランスを崩さぬ様に立ち上がり、対面にいる兄様にそっと近づく


「兄様……今日もがんばってね」


ちゅっ


ほっぺにちゅーしたって起きたりしないのだ。


でも兄様は学園が近くなるとちゃんと目を覚ますんだよ。


僕が起こさなくたって起きちゃうから、少し残念。


だって兄様が起きなかったら僕が兄様に話しかける口実になるでしょ?


兄様は嫌かもしれないけど、一回くらい兄様を起こしたりしてみたいのに。


でも、そんな兄様もすごくて大好き!!







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