11 紫銀色 その六
「そういえばユーリ様、先程渡す物ある、と言っていましたがなんでございましょう?」
「ああ、君が願った皇宮への立ち入り許可証だよ。門にいる兵士に見せれば、入れるから」
そう言ってユーリ様が差し出したのは、白いカードに青で文字が書かれているものだった。
文字を見れば、“立ち入り許可証”という文字とわたくしの名がしっかり書かれていた。
なんというか実物を見て改めて思うけれど、随分安直な名前よね?
「ありがとうございます」
お礼を言い、受け取ろうとカードに触れると、突然カードが光り魔法陣が浮かび上がった。数秒程光った後は、光も魔法陣も消えカードだけがそこにあった。
わたくしはなにがなんだか分からず、数回瞳を瞬いてしまう。
「これで君にしか使えないから」
ユーリ様は何事もなかったように、わたくしの手にカードを握らせた。
「あ、あの、一体なにが………」
「今、君の魔力を登録して君にしか使えないようにしたんだ」
「そうなんですの?」
わたくしにしか使えないようにした、ということはこれは魔道具ですのね。いえ、しっかり魔法陣を見ていますので当たり前の事ですが、思考が上手く働いていませんの。
決してわたくしの理解力が低いとかではないんですのよ?
このカードは図書館の“入館許可証”と似たようなものということですね。
でも突然過ぎて、驚きましたわ。
「すまない、驚かせた」
「あっ、いいえ、大丈夫です。ありがとうございます。大切に扱わせて頂きますわ」
無くしてはいけないと両手で持ち、胸の前で握りしめる。そこでふとあることに気付く。
「あの、わたくしにしか使えないということは、わたくししか入れないのですか?アルメリアと共に行きたいのですが?」
わたくしがそう言うと、ユーリ様はちらりとアルメリアを見て、次いでわたくしに視線を戻しました。
「貴族の従者は、皇帝陛下の許しがない者は門を入って直ぐの所にある建物の部屋で、待つようになっている。そこは騎士や兵士達の詰め所にもなっている」
成る程。従者がなにかしないか、見張りも兼ねておりますのね。でもそんな所にアルメリアを一人で待たせて大丈夫でしょうか?アルメリアは子供でしかも女の子ですわ。
けれどあの家に一人で帰す、という選択肢もとりたくありません。なにか有ってからでは遅いのです。
「………私なら大丈夫ですよ、ラティーニア様」
わたくしが俯いて悶々と悩んでいると、正面から声が聞こえた。
「私なら大丈夫です。ラティーニア様がそんなに悩まれることではありません。気になさらずとも結構ですよ」
それはどちらに対しての“大丈夫”なんですの?一人で待つことに?、それともあの家でなにか有っても耐えられる、と?
「……………分かりましたわ。ではアルメリア、一緒に皇宮へ参りましょう。わたくしが図書室で勉強している間、貴女も勉強するのですよ。一緒に、ね?」
「………はい」
アルメリアは驚いた顔をし、そして小さく笑いました。可愛いです。とっても可愛いですわよ、アルメリア!
「話は決まったか。先程も言ったが、門の兵士に許可証を見せれば、図書室まで案内してくれるだろう。そちらの侍女も、兵士が部屋まで案内する」
「分かりました。態々ありがとうございます」
というかこれって皇子殿下がすることではないわよね?普通は兵士か文官の方の仕事よね?
なんで皇子殿下が?態々?
取り敢えずこの場は、そのまま図書館をユーリ様と共に出ました。帰り際、ユーリ様が「何時から来るのか」と問われましたので、正直に話しました。ちょっぴり恥ずかしかったですが。
するとユーリ様が「なら、一緒に勉強しよう」と言われて、あれよあれよという間に、翌日より皇宮の図書室にて共に勉強することになりました。
ふぅ………わたくし、まだほとんど勉強できておりませんのに。皇宮の図書室に勤めている方々に、無知を晒すのは恥ずかしいのに。でも考えてみると、わたくしはまだ五歳。無知でも許されるかしら……………なんて思っても、わたくしの侯爵家令嬢というプライドが邪魔をする。
もう少し、せめてこの国の歴史くらいは習得しておきたかった!
けれど悔やんだところで後の祭り。それにどうせわたくしには、ユーリ様の提案を断ることなんて出来ないのですから、結果は変わらなかったでしょう。
ということで、わたくし腹を括りますわ‼
読んで頂いてありがとうございました。
なかなか更新できず、しかも短くて申し訳ありません。




