第6話 折り返し地点とボスベイビー
宝箱を見つけてからは気分よくダンジョンを探索できて予定の三日目には目標だった10層までたどり着いた。残念ながら宝箱はあれからひとつも見つからない。
最初に決めた通りに探索は10層までにして引き返すことにした。
俺としては『???のバックラー』を早く鑑定したいので問題ない。一応宝箱を探すため帰り道は全て別ルートを通って行く。
クリスタルゴーレム一号での宝箱サルベージは魔力消費が大きいのでやめておく。それに他の冒険者に見られると目立ちそうだからな。
「ご主人様、魔物です」
「どこだ?」
シャラが魔物を発見するが周囲にはいない。これは感知魔法で見つけたのかもしれない。
「ここから少し先の曲がった道です。このまま進めば気づかれずに通り抜けられると思いますが、一体だけで何か不思議な感じがします」
「不思議?」
シャラがそんなことを言うのは珍しいので俺も【ソナー】で周囲を探ってみる。
「…確かにいるな」
「どんなのか分かる?」
「…うーん、動いてないから分からないけど…多分でかい。それに魔力も多そうだから強い魔物かもしれないな」
「それって…」
セノビアは心当たりがあるのか、何かを考え始めた。
「それは倒しておきましょう。ボスベイビーかもしれないわ」
「「ボスベイビー?」」
何だ? その強いか弱いのかわかりにくい魔物は。
「ボスベイビーはダンジョンにいるフロアボスの子供よ。フロアボスよりは弱いけれどボス戦の練習にはちょうどいい相手よ。素材も高く売れるしね♡」
「へー、ボスにも子供っているんだな」
「なんだか倒すのが可哀想な気もしますね」
「子供と言ってもそこらの魔物より断然強いわよ。気を抜かないことね。
それにボス個体は宝箱を守る習性があるわ。もしかしたらそのボスベイビーのいる場所にも宝箱があるかもしれない」
「すぐ行こう!!」
ボスベイビー戦が確定しました。
二つ目の宝箱。俄然やる気が出ます!
ボスベイビーのいる場所まで歩いていく。普通なら通り過ぎてしまうような狭くて薄暗い道を行く。ここでもセノビアが宝箱のある可能性が高いと言っていた。
こういった道や視界が悪い場所は危険が高まり連携も取りにくいので普通の冒険者は敬遠するらしい。
俺も宝箱があるような気がして期待度が上がっている。
「あれです。ボスベイビーを見つけました」
シャラが小声で報告してきたのですぐに身を隠す。岩が多くあるのでその陰に隠れてボスベイビーの様子を見る。
円形に広がった場所で後ろには湖がある。
ボスベイビーは湖の近くで丸まっている。鱗があるので蛇が鰐型の魔物だと思う。
「ガイドブックには載ってないな…何か知っているかセノビア?」
「私もまだ分からないわね。けれどあの状態なら不意打ちができるわね」
「私の弓で様子を見ますか?」
「そうだな、ボスベイビーとはいえボス戦だと思って慎重にいこう。シャラが弓を放ったら少し様子見して倒せそうなら俺とセノビアで突っ込む。シャラは弓で援護」
「「了解」」
作戦も決まりシャラがボスベイビーに向けて弓を撃つ。風魔法で強化された弓は根元までボスベイビーの体に深々と刺さった。
「GYAAAAA!!」
「くるぞ!」
ボスベイビーは敵襲に気づき起き上がる。
その姿は巨大な二足歩行の鰐で右手には斧を持っている。
「あれはリザードマンの大型種よ! 頑丈で力が強いけど魔法や毒は使えないわ」
「よしっ! 突撃!」
「GYAAA!!」
ボスベイビーの特徴を聞いて問題ないと判断してセノビアと突っ込む。ボスベイビーの体長は5mで腕や胴回りも太い。近づいてみると巨人と対峙しているようだ。
「GYAAA!」
ボスベイビーは手に持った斧を振り下ろしてくる。
「セノビア!」
「任せて!」
それをセノビアが白刃取りの要領で受け止めた。
セノビアの両足が地面に陥没して戦闘用アームの肘部分からは蒸気が排出される。セノビアの両腕両足は俺の作った戦闘用アームとレッグだ。単純な近接戦ならパーティーで最強を誇る。
「GYA!?」
ボスベイビーは斧を振り上げようとするがセノビアが掴んだままで動かせずにいる。流石に力比べで負けるとは思っていなかったのかボスベイビーは困惑した。
勿論俺はその隙に懐に潜り込んでいる。
「くらえ! ジェットパンチ!」
ボスベイビーの左足の膝を俺の拳が打ち抜く。
骨が砕ける音がしてボスベイビーは体制を崩した。
「GYAAAA!」
ボスベイビーは俺に食いつこうとしてきたがシャラの矢が顔に刺さり邪魔をする。俺はもう一つの足の膝にもジェットパンチをお見舞いする。
肘部分から熱風を噴出させてボスベイビーの右膝も打ち抜いた。
「GYAAAAAAA!!」
両膝を折られは立つこともできず地に伏せる。倒れたボスベイビーの背中に飛び乗りアームをソードモードに変形させて赤い刃を心臓にめがけて突き刺した。背中腰からなので心臓に届いたかは分からない。
ボスベイビーは叫び声を上げながら俺を振りおろそうと暴れまくる。
「ぬおおぉっ! 暴れんじゃねぇ!」
「せぇぃっ!」
そこに止めと言わんばかりの衝撃がボスベイビーの頭に直撃した。
ボスベイビーが斧を手放したことでセノビアが加勢してくれたのだ。セノビアの拳はボスベイビーの頭部を陥没させた。
ボスベイビーは息絶えた。
「ふぅー! 確かに今までの魔物より手ごわかったな」
「そうね。それでもこの戦闘用アームならボス戦も大丈夫な気がするわ」
「やりましたねご主人様!」
「ああ」
ボスベイビーに突き刺していたソードモードのアームを引き抜く。赤い刃がさらに赤く染まっている。
血は後で洗っておかないといけないな。
「それより宝箱はないか?」
「う~ん」
シャラとセノビアは周囲を探し始める。俺も参加したいがまずはアームについた血を落とさなければならない。ボスベイビーの死体をアイテムポーチに収納してから布と水筒を取り出し、アームについた血を拭いていく。
「あっ! ありました!」
「ホントか!?」
シャラが宝箱を抱えてやってくる。
「やっぱりボスベイビーは宝箱を守っていたのね」
「二つ目の宝箱だあぁぁぁっ!!」
「開けてみてくださいご主人様!」
目の前に宝箱を置かれて早速開けてみる。
この中を見る直前のワクワク感はハンパねぇ!
バトルベビーの守っていた宝箱の中身は以下の内容だった。
・???の双剣
・銀の杯
・ネックレス
・指輪
・宝石×5
・銀貨×30枚
・半銀貨×60枚
・大銅貨100枚
・銅貨300枚
『???の双剣』以外は金品ばかりでレア武器や魔道具は少なかった。少し残念だけどお金がたくさん手に入るので損した気分にはならない。
これらを売ってレアな武器を買うっていうのもいいな。
それからダンジョン内を引き返していくが宝箱は見つからなかった。
再び地上に出たのは三日後の昼になった。
今回のダンジョンは6日という短期間ではあったが中々ハードだったぜ。
その分魔物の素材や金品はかなり手に入ったけど。
…今日はとりあえず家に帰って寝たい。




