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第38話 本当の家族の形

第38話 本当の家族の形

1

ルシアが怒った。

彼女が今まで表す事のなかった怒りの感情がその口から発せられた。

「……そうよ 今の話は全部本当なの。私はあなたの母親に会って、そして色々言われた…」

「何でそんな大事な事を黙っていたんですか?」

「そんなの…からに決まってるでしょ」

「何ですか? 理由があるならちゃんと教えてください」

今の彼女はいつものルシアではなかった。まるで何かに怒りをぶつけてるかのように、彼女は次から次へと言葉を放っていく。

「ルシア、いくらなんでもお前怒りすぎだろ。千代の気持ちを少しは考え…」

「怖いからに決まってるでしょ!」

その状況を無視できない俺は、ルシアを止めようとするが、今度は千代が声をあげた。

「怖い? 何がですか?」

「私の話を聞いていたなら分かるでしょ? 私は…私は…」

そこで再び声をつまらす。話を聞いていたルシアならそれを知っているはずなのに、なぜ彼女は敢えて聞くのだろうか?

「そんなに私、信用ありませんか?」

「そ、そういう訳じゃ…」

「じゃあこの際だから私から、いや、私とローナから言わせてもらいますけど」

「ん? 何だ?」

「私達は雄一さんと千代さんを、自分達の両親のように思っていますから」

「え…?」

「私のお母さんはあんな事を言っていますが、私とローナにとって雄一さんはお父さん、千代さんはお母さんです。でなければこんなに長く四人で暮らしてなんかいませんし、何よりエルフと人間がこうして一つ屋根の下に居ないと思いますよ」

「ルシア…」

聞くのが怖かった質問の答えが、こうして彼女の口から言われた時、俺は嬉しさのあまり涙を流しそうになってしまった。

この二人に出会うまでは、自分が父親になるだなんて考えもしなかったし、四人で暮らし始めてからも実感があまりなかった。父親としてどうあるべきか分からず、友人からも怒られる始末。そんな俺がずっと求めていた言葉。今までパパと呼ばれてきた中で、最も心がこもった『お父さん』という言葉。

(何て素晴らしい言葉なんだ…)

「私もお姉ちゃんと同じ」

いつの間にか部屋に入ってきていたローナが、言葉を紡ぐ。

「最初は知らない誰かと触れるのがすごく怖かった。すごく頼りない人だなって思った。けれど、パパはどんなに私が素っ気ない態度をとっても、頑張って触れ合おうとしてくれた。それが私にとってすごく嬉しくて、自分も少し変わってみようかなって思えた。だからパパには感謝している、勿論ま…ま…ママにも」

恥ずかしそうに語るローナ。その姿はとても愛おしくて、今まで彼女に対してしてきた事が全て報われようとしていた。

「何かこんな事言われると、私恥ずかしいんだけど」

「安心しろ、それは俺もだ」

この時初めて家族の形が成り立った気がした。本当の家族の形が…。

続く

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