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第37話母親ごっこ

第37話 母親ごっこ

1

「もしかして、あなたが千代さんかしら」

あの時トイレを済ませた私は、雄一君達の所に戻ろうとしたの。けどその途中見知らぬ誰かに声をかけられたの。

「あ、はい。私千代って名前ですけど。あなたは?」

話しかけてきたのは銀髪の女性だった。その時にはもう分かっていたのかもしれない。彼女が雄一君の言っていたルシアちゃん達の本当の母親だってことを。でも偶然かもしれないとも思ったから、私は彼女の次の返事を待つことにした。

「やっぱりそうだったのね。私の子供に対して母親ごっこをしているって聞いたから、一度会ってみたかったのよ」

「初対面の人に対して言う言葉とは思えないのですが…」

『母親ごっこ』

そんなことを言われた私は、カチンときてしまった。でも彼女が言っていることが間違っているとは言えない。なんせ私は、ルシアちゃん達と全く血の繋がりがないただの母親もどきなのだから。

「あら、勝手なことをしているあなた達に対してピッタリの言葉だと私は思うけど」

「うっ…」

だから正論を言われても反論ができなかった。

「まあ何にせよ、近いうちにあの子達は私の手元に戻ってくるし、せいぜいごっこを楽しんでなさい」

「え? それはどういう…」

「自分と向き合えないような子に、他人の子供に対して母親なんて名乗る資格なんてないってことよ」

「自分と向き合えない…私が…?」

「はぁ、何であの子達はこんな人を母親だって思っているのかしら。いや、本当は思ってないのかもしれないわね」

「そ、そんなこと…」

「じゃあ聞いてみなさいあの子達に。答えなんか分かりっているけど」

そう言うと彼女はどこかへ消えてしまった。

一人残された私は、何もできずにただ呆然とそこに立ち尽くしていた。

(二人が私のことをどう思っているかなんて…分かるはずがない)

だからといって聞くことなんてできない。

そう、これは恐怖心

ただただ私は怖かった。もう自分がどうにかなってしまいそうなくらい怖かった。その恐怖に耐え切れない私は、皆の前であんな態度とったり、終いには泣いてしまっていた…。

2

「ねえ雄一君、私はどうすればいいの? 怖いの、どうしようもなく怖いの。私雄一君に散々言ったくせに、自分のことになるとどうしようもできなくなって…」

彼女も俺と一緒だった。血の繋がってないことから恐怖心が湧き出てきて、どうすればいいか分からなくなる。今の俺だってそうだ。陽介にああ言われてから、微妙に彼女達との接し方が分からなくなっている。だから今回旅行を発案したのはその恐怖心を少しでも忘れようとして…。

「千代さん、今の話本当ですか? 私のお母さんが…」

俺の背後から声が聞こえる。

「ルシア、お前先に行ってろって…」

「本当なのか私は聞いているんです!」

続く

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