第36話千代の異変
第36話 千代の異変
1
千代の様子を気にしながらも夕方まで海で泳いでいた俺達は、ホテルへ帰るころにはすっかり疲れてしまっていた。
「すぅ…すぅ…」
約一名ソファで爆睡している人が居るし…。
「って寝るの早いなローナ。お前は子供かよ」
「ローナはこれでもまだ子供の方ですよ」
「実の妹にその言い方はないだろ。 なあ千代」
「……」
千代に話を振るが、返事が返ってこない。先程からずっとこんな様子の彼女に、いよいよ無視できなくなってしまった。
「千代?」
「え、よ、呼んだ?」
「お前本当にどうしたんだ? あれからずっと元気がないぞ?」
「べ、別になんでもないから、心配しないで」
「心配しないでってお前な…」
「ごめん、私も泳ぎ疲れちゃったから少し寝るね」
「え、あ、おい!」
千代はそういうと寝室に行ってしまった。
「本当にどうしたんだよあいつ…」
明らかにあの様子はおかしい。絶対に何かあったに違いない。
「ちょっと心配です私」
「うーん、俺も心配なんだけど今聞くわけにもいかないから、後で個人的に聞いておくよ」
「お願いします」
個人的に聞くといっても、そのきっかけがないと難しいかもしれないが、そこはなんとかするしかない。
(全ては俺次第ってことか)
2
それからしばらくして夕飯の時間になった。
「おい千代、ご飯食べに行くぞ」
皆で一緒にご飯を食べに行くために、千代に寝室のドア越しで声をかけてみるが返事がない。眠っているのだろうか。
「入るぞ」
流石に三人だけでご飯を食べに行くわけにもいかないので、中に入る。二つのベッドが置いてある寝室は、片方は俺が寝る様、もう片方は千代が寝るようになっている。千代はその自分のベッドの上ででうずくまっていた。
「雄…一君?」
俺が入ってきたことに気がついたのか、千代はゆっくりと顔をあげた。
「なんだ起きているなら返事くらい…」
少しホッとした俺は彼女の側に行こうとしたが、千代の顔を見てその足を止めてしまう。
「お前…泣いているのか?」
彼女は大粒の涙を流して泣いていた。
「ごめんね…せっかくの旅行だから…我慢しようと思ったんだけど…我慢できなかった…」
「馬鹿、我慢なんてする必要ないのに…」
「私は…確かに馬鹿かもね…」
「え?」
冗談のつもりで言ったのに、真面目な返答がきたの思わず動揺してしまう。
「本当は…雄一くん…ううん、家族皆に話すべきことなのに…一人殻に閉じこもって…情けないな…。こんなのだからあいつからあんな事言われるんだ…」
「あいつ?」
「実は私ね今日、二人の母親に会っちゃったの」
「二人の母親って…まさか」
「そう。ルシアちゃんとローナちゃんの母親に会ったの私」
続く




