第35話家族だけの時間
第35話 家族だけの時間
1
海に入る前から疲れる羽目になってしまったが、久しぶりにやってきた俺と千代は勿論、初めてやって来たルシアとローナもまだ朝早いというのに、テンションマックスの状態だった。
「雄一君、早速だけどどっちが先に、あっちまで泳げるか勝負しない?」
「お、いいな。お前から勝負をしかけてくるなんて思っていなかったけど」
「失礼ね。私これでも結構泳げるのよ」
「初耳だけど、本当か?」
「雄一君は私が泳いでるところを実際に見たことがないから言えるんだよ」
言われてみれば千代が泳いでるところってあんまし見たことがないけど、実際はすごく泳げたりするのかな?
まあ実際に見てみないと分からないので、とりあえず勝負!
「さあ勝負よ!」
先行かんとばかりに千代は海へ向かって走り出す。
浮き輪を片手に持って
「待て待て、その片手に持っている浮き輪は何だ?」
「何って、これは私の泳ぐときに必要なアイテムだけど?」
「期待していた俺が馬鹿だったよ」
「な、何よ失礼ね。浮き輪だって立派な道具よ」
「普通に泳げないなら泳げないって言えよな」
「べ、別にそういう訳じゃないのに…」
「じゃあ実際は何メートル泳げるんだ?」
「じゅ、十五メートルくらい」
「よくそれで勝負しようと思ったなお前…」
道理で泳いでいる姿を見たことがないわけだ。
一方のルシアとローナはというと、砂浜で何やら城みたいなのを作っていた。
「見てくださいパパ、これ私達が作ったんですよ」
いや、みたいな物ではなくまさに本物に近いものだった。
「す、すごいなお前ら」
「それほどでもない」
「いや充分すごいと思うんだけどな」
「そうですか? 昔からこういうの作るの好きだったんで、これくらいの物を作るのは簡単ですよ」
「砂でよくここまでのクオリティ出せるよな」
「何々、どうしたの雄一君…って、何これ?!」
その凄さに驚いていると、泳ぎから戻ってきた千代がそれを見て思わず声を上げていた。
「二人が作ったんだって」
「え? これ砂で作ったの?」
「はい、私達が作りました」
「す、すごいね二人とも」
「それほどでもないですよ」
そう笑顔で答えるルシアはどこか嬉しそうだった。
2
そんな感じで家族だけの時間を過ごしているうちに、お昼の時間になったので海の家で食事を取ることにした。
「って、昼飯はかき氷かよ」
「いいじゃない。ルシアちゃん達が食べたいって言うんだから」
「いいんだけどさ…」
かき氷っておやつで食べるようなものじゃないのか?
「わあ、すごくおいしそうです」
「いちごシロップ…おいしそう」
でもまあ、二人が幸せな顔しているから別にいいか。
「あ、私ちょっとトイレ行ってくるね」
「もう腹でも壊したのか?」
「そんなわけないでしょう!」
「冗談だって。ここに居るからさっさと行って来いよ」
「うん」
そう言うと千代は一旦席を外した。
だが彼女が再び戻ってきたのは、それから約一時間がが経った後だった。
「遅かったじゃん。どうかした?」
「ちょっとトイレが混んでたから、遅くなっちゃった。待たせてごめんね」
「混んでたなら仕方がないけど、お前様子がちょっとおかしくないか?」
「え? ふ、普段通りだと思うけど」
「そっか」
うーん、千代の様子が少し変な気がするのは俺だけなのだろうか? トイレを待っていたにしては長すぎるし、一時間の間にルシアがトイレに行っていたけど、千代を見てないって言ってたしな…。それに何かさっきより元気がないような気が…。
もしかしたらトイレに行っている間に何かあったとか…。
(まさか…な)
とりあえず今は考えないでおこう。
続く




