第25話 真夏のクレープ戦線
第25話 真夏のクレープ戦線
1
「いらっしゃいませ、この夏にピッタリのクレープはいかがですか」
「冷たくて美味しいですよ」
「ありがとうございました」
文化祭が始まって一時間、俺達のクレープ屋は早くも商売繁盛していた。
「すごい売れ行きだな」
「ちょっと俺も驚いているよ」
「もしかしたらあの二人が、商売効果をもたらしてるんじゃない」
あの二人とは勿論ルシアとローナ。俺はだいぶ慣れたが、周りから見れば意外に美人姉妹なのだ。意外とは失礼かもしれないが、それが効果をもたらしているのなら、こちらも更にやる気を出さなければならない。
「ありがとうございましたー」
そんな事を考えている間にもクレープの売れ行きは更に勢いを増してゆく。まさかこれほどの物とは思っていなかったが、成功に終わるならそれでいい。
「さて、どんどん売って、じゃんじゃん稼ぐとするか」
「イチゴスペシャルを一つ」
「はい、かしこまりまし…ぶふぅ」
次の客の応対をしようとした瞬間、俺は見覚えのある顔に吹き出してしまう。
「やめなさい、汚いでしょうが」
「な、な、何で母さんがここに居るんだよ」
何とその客は自分の母親だった。俺の実家からここまで半日はかかるというのに、わざわざ来てくれたのだろうか。
「何でって、自分の息子を心配して来てあげたのにその態度はないでしょ」
「連絡ぐらいしろよな」
「したわよちゃんと、千代ちゃんに」
「俺にしろよ! てか千代、お前知ってたのに黙ってたのか?」
「うん。その方が面白いかなって思ったから黙ってた、てへっ」
「てへっ、じゃねえよ」
本人に連絡を通さずに来るとは何という母親だろうか。流石に俺も驚いてしまった。
「おい雄一、イチゴスペシャル出来たからさっさと渡せよ」
「あ、悪い悪い。ほらイチゴスペシャル」
「ありがとう。代金は雄一が払わせておいてね」
「自分で払えよ!」
俺の反論も虚しく、母親はクレープを食べながら何処かへ行ってしまった。まだどこか回るつもりでいるのだろうか?
「久しぶりに会ったけど、騒がしいお母さんね」
「本当嫌になるよ、あのテンション…」
実の息子にお金を払わすし。
2
その後も売れ行きは低下せず、昼をすぎた頃には完売してしまった。
「すげえ、全部売っちゃったよ俺達」
「やりましたねパパ」
全部売れてしまったので、午後は他を回って楽しむ事にした。だがここでまた一つ問題が起きる。
「私がパパと二人きりで回ります」
「いや私よ」
「元カノの私にその権利があるの」
何だこれ…。
「なあ皆で回るという選択肢はないのか?」
『嫌!(です)』
うわあ、面倒な事になったよ…。
続く




