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第17話 クレープな夏休み

第17話 クレープな夏休み

1

『雄…一…君!』

誰かが俺を呼んでいる。千代?

『パパ、起きてください!』

ルシア?

『パ……パ』

これはローナの声。あれ? 俺どうしたんだろう。とりあえず目を開けてみよう。

暗闇から光が差し込む。目の前に映ったのは見慣れた顔達。

「お前ら…どうしてここに?」

「それはこっちのセリフですよ。散歩から帰ってこないから、心配して探したらこんな所に倒れてるんですもん」

「あ、ああ。そっか…」

ついさっきまで俺は、彼女達の母親と戦ってたんだ…。思い出した途端身体中に痛みが走り、立てなくなってしまう。

「だ、大丈夫ですか?」

「悪い体が動かねえから、肩貸してくれないか?」

「いいですけも、本当に大丈夫ですか?」

「心配すんなって」

ルシアと千代の肩を借りて歩き出す。ローナはその後ろをついて来るだけだった。

「それにしてもこんな所で倒れてるなんて、何があったの? 」

「えっとそれはだな…」

ここで二人の母親と会ったことを話すべきか迷う。ここで話したらこいつらはどんな反応するだろうか? 自分の事を責め始めるかもしれない。それを避ける為にも今は話すべきではないと俺は決めたのであった。

2

それから数日後、期末テストを乗り越えた俺達に夏休みというイベントがやって来た。

「まあ半分はクレープ作りで潰れるけどな」

「そういう事言うなよ。この前のクレープ思い出しちゃうじゃねえか」

「トイレ行ってくれば?」

まあ文化祭が夏休みの半ばにあるという事で、半分は文化祭の準備に潰れる(その分の休みはちゃんとあるが、多くはない)。

「とりあえず今日は、屋台作りだから、気合いいれていけよ。後でクレープも食べるんだから」

「結局は食うんかい!」

「何を当たり前の事を言っているのよあんたは」

「この前、真っ先に家に帰った姉貴だけには言われたくなかったよそのセリフ」

「まあまあ二人とも」

とりあえず今日から夏休み。文化祭の準備も本格的に始まる。午後から三人も合流するのだが、俺には一つ気がかりな事があった。実はあの事件の後からルシアの様子がどうもおかしいのだ。どうしたのかと聞いても答えないし、何となく理由が分かっていても俺からは話を切り出せない。何て話せばいいのやら…。


そんなぎくしゃくした空気の中で夏休みに突入してしまったわけだが、やっぱりルシアの事が気になったので思い切って彼女を俺の部屋に呼んだ。

「なあルシア、お前本当は何か隠し事してるだろ?」

率直に俺は尋ねた。彼女から返って来た答えは…。

「ハパこそ、本当は私達姉妹に隠し事をしていませんか?」

その答えに俺は、確信した。彼女はやっぱり分かっていた事を。

「いつから知ってた?」

「パパの傷のつき方ですぐに分かりました。あれは弓矢がかすった時にできる傷です。それにあの時立てなかった理由はもう一つありますよね?」

流石はエルフ族。ちゃんと状況を見て、何があったのかよく理解できている。だからこそ俺は、黙っていた自分が情けなくなった。

「お前が考えている通り、この傷はお前の母親によって傷つけられたやつだ。立てなかったのも勿論そうだ」

だから俺は、あの日の晩の事を素直に話す事にした。

続く

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