第12話 ローナと二人きりの日
第12話ローナと二人きりの日
1
夏休みを目前に控えたある日の休日、
「じゃあ私達買い出しに行ってくるね」
「いいのか? 本来は俺達の仕事なのに」
「パパは毎日頑張ってますなら、たまには休んでください」
「わ、分かった」
「じゃあ行ってきます。雄一君、ローナちゃん。お留守番よろしくね」
俺とローナの二人きりで留守番をする事になった。
二人が買い物に行ったのは今から二時間前。今は丁度昼頃。
「とりあえず飯でも食べるか?」
「嫌!」
「そこは断るなよ…」
先日ちょっとした変化が見られた事を期に、少しは話せるようになるのかなと思ったが、ローナの態度はこの通り、俺に対して冷たい。
「じゃあ俺一人だけで食べるからな」
「あ…」
「何だよ、食べたいのか?」
「う、うん…」
「チャーハンでいいか?」
「何でもいい」
「はいはい」
何ですぐに素直になれないんだろうかこいつは…。
それから十分後。昼食を取りながらローナとコミュニケーションを試みた。
「なあローナ」
「……」
会話終了のお知らせ。
「せめて話しかけられたら、返事くらいしてくれよ」
「面倒臭い」
「そうですかい」
人に質問されてるのに面倒臭いとは、どんな教育されてきたんだよこいつ。あとでルシアにちゃんと聞いた方がいいのかもしれないな。
「じゃあ答えなくてもいいから聞いてくれ」
「……」
「俺にはお前が喋りたがらない理由が分からない。けどなコミュニケーション取らなければ人は生きていけない。お前はそれを完全に断ち切ってしまっている。俺はそんなお前をいつまでも見ていられないよ」
「そんなの私の勝手」
「ああそうだな。お前の勝手だよ。けどな、それがいつまでも通用しないのが世の中なんだよ。お前が住んでいた元の世界はどうだったか知らないが、こっちの世界に来たからには…」
「何も知らないくせに」
「え?」
急にローナの声色が変わったことに俺は驚く。こんなローナの声、初めて聞いた。
「何も知らないくせに、何でもかんでも言わないで!」
ローナはそれだけを言うと自分の部屋に閉じこもってしまった。
「あ、おい、ローナ!」
やばい、俺何か触れてはいけない事に触れてしまったのかもしれない。
「これは弱ったな…」
2
「え? ローナが部屋に閉じこもったまま出てこないんですか?」
「ああ」
夕方になって千代とルシアが帰って来たので、俺は先ほどの事を一番の理解者であるルシアに話した。
「もしかしてパパ、何かまずい事言いましたか?」
「いや、思い当たる節がないんだが…」
一応先ほどのやり取りの内容を話す。
「やっぱりですか…」
「え? 俺何かまずい事言ってた?」
「はい。パパはあの子がなぜ喋らないか聞きましたよね?」
「直接ではないけど、遠回しに言っていたかもしれないな」
「それがまずいんですよ」
「何で?」
「えっと、それはですね…」
言い難そうな顔をするルシア。俺が知るべきではないって事か…。
「分かった。話にくいのならいいよ」
「え? でも…」
「俺自身の手で、あいつの心を開いてやる」
続く




