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正義よ 傲岸なるその悪を討て!  作者: 斉放
‐Ⅶ.悪の総統は相当な悪‐
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‐Ⅶ.悪の総統は相当な悪‐ 3

 硬質な骨を叩く剣戟の音が絶え間なく続く戦場。見渡す限りの巨大な屍の群れに、いつまで続くともしれない醜悪な敵軍の襲来に、少女たちは本能的な恐怖心を隠しきれていない。

 ヨキとセラフが前線に出て武器を振るっていたが、いたずらに体力を消耗するばかりで敵は増え続けている。なるべく囲まれないように立ち回っていたが、ひしめく敵に逃げ場を塞がれてしまっては防御するしかない。だが自動車のような重量と速度で襲い来る巨大な腕は、衝撃の全てをいなせなかった。

 小さいとは言え人一人を抱えているのならなおさらだ。

「ぐ、ぉっ……!」

 ヨキは何度目かの破壊的な一撃を受け、とうとうよろめいているところにクリーンヒットしてしまった。大の大人が文字通り車に轢かれたように弾き飛ばされる。腕に抱えていたシャオリンのことは、すんでのところで投げ捨てることができた。セラフも何度か攻撃を食らっていたが、衝撃吸収の光子が噴霧して彼女を守っていたのだった。それでも顔色が優れないのは、一撃を食らうたびに損耗率が著しく低下しているのが分かるからだろう。

 ほどなくしてエメラルドの結界が展開する。しかしヨキは、敵のまっただ中で正座して悲鳴を上げているシャオリンをかっさらいつつ、叱責しながら駆け寄った。

「全力と言ったぞ! 何が起こるか分かっているはずだ、手を抜くな!」

「なっ、なんて言い草! そんなことしたら私は──!」

「ぬんっ!」

 その掛け声は、小脇に抱えていたシャオリンを力任せに投げあげるためのものだった。星になるのではないかという勢いで悲鳴が遠ざかっていくのを見上げたエメラルドだったが、ぽんと肩を叩かれて前に向き直る。

「えっ?」

「案ずるな。無防備になっても私が守ってやる」

 真面目くさった顔で告げるヨキと、エメラルドは至近距離でまともに見つめ合っていた。彼女はハッとなって目をそらし、赤面したのをさとられないように両腕でガードしながらなんとか言葉を返す。

「そ、それなら、いい、けど……」

「頼んだぞ」

 シャオリンが遥か上空から衛星兵器のように敵を焼き払うのを背景に、シニカルな笑みを浮かべるヨキ。エメラルドは頭を振って、「もうっ!」と悪態をついてからもう一度結界を展開するために精神統一を始めた。

 そして、悲鳴を上げながら落下してきたシャオリンを難なく抱きとめるヨキ。シャオリンは気の毒になるくらい涙を流してガタガタ震えていた。

「怖かったあああああ! オバケの真ん中に落ちるかと思ったあああああああ! 怖かったよおおおお!」

「そうか。すまんな」

 顔面に抱きつく少女の首根っこをネコのように掴んで丁寧に引き剥がし、ヨキは恐るべき声量に魂を削られる覚悟で自分の方を向かせた。シャオリンは本当に毛を逆立たせたネコのようにして、怒りと恐怖がない交ぜになった顔で悲痛な叫びを上げる。

「すまんで許すか! 冗談じゃなくてボクはオバケとかトラウマなんだぞ! 心的外傷後ストレス障害なんだからな! 許さない! こんな扱いとか、諸々ひっくるめて許さない! 絶対に許さないからな!」

「良かったな、トラウマを克服するチャンスだぞ」

「ちょっ」

 ヨキの死刑宣告の意味を理解したシャオリンは、一転して悲壮感に覆い尽くされてしまった。何一つ言葉を言い放ついとまもなく、再びお空の星になる。やけに賑やかな星だ。彼女は敵陣深くに投げ込まれるのがよほど恐ろしいのか、死にものぐるいで空中から敵を焼き払っていた。


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