‐Ⅳ.テコ入れが高じてバトルものになったらそれまでの購買層が見限るから注意せよ‐ 2
二人は商店街を並んで歩き出した。彼女の出演する番組の中では活気のある商店街も、実際は新しい時代への変遷に取り残されたシャッター街だ。
寂れた通りを、どーしたものかと思案する男と、表面的には気のないそぶりの少し浮ついた少女が黙々と歩いていた。
「お」
「?」
自分の最初の目的を思い出して声を上げる。弱点や醜聞を探ると言う、とても有意義にして俗悪なミッションを遂行しなければならないのだ。
と言っても本人からスキャンダルのたぐいを聞き取ることはできないだろう。それは彼女を知る人物から情報を引き出すことになる。本当なら周辺を洗って情報収集に取り掛かるつもりでいたが、聞きようによっては本人から収集できるものもあるかもしれない。
「シャオリンさん。いや、ふぇむとさん、がいいのかな」
「は、はいっ!?」
ビクーン、と大げさに反応して距離があく。それは名前を呼んだからなのだが、ヨキには少女の心の機微など察することはできなかった。
「あ、なんでもないです、なんでも。名前は、えーっと」
自己主張は消え入りそうな声だった。
「ふぇむとでいいです。っつか、シャオリンって役名で名前じゃないし」
落ち着きのない自分に戸惑っている彼女だったが、ヨキは気にしなかった。
「迷惑なファンっている?」
「まだ無名なので多くないだけですけど、ファンの方はみなさんとても常識的ですよ。変なものを送ってくることもないですし。あ、食べ物は送られてきても食べないように事務所から言われてますけど」
「ふぇむとさん、嫌いな食べ物ってあるの?」
「肉とかはニガテです。ペットにあげちゃいます」
「ペット飼ってるんだ」
「雑種の小さな犬が、その、います。コジュウロウってゆう」
とてもスムースに目的を遂行しつつ、ヨキはすでにどうやって戦場を離脱しようかと考え始めていた。怪しまれるまではさらなる情報を可能な限り収奪し、機を見て帰るという計画だ。さすがにいきなり消え去ることはできないが。
交番に到着したのは、ほどなくのことだった。
「誰もいませんね」
「ふぅむ。どうやらあの事故の実況見分に立ち会っているようだ」
「ホントだ」
少しはなれたところ、タイムリーなことに商店街の向こうで自転車と車の接触事故があったようだ。すでにパトカーも救急車も到着しており、自転車に乗っていたらしい学生も自分の足でヒョコヒョコ歩いて担架に乗るのが見えた。
「もう終わるころなんでしょうか」
「事故である以上、警察は調書やらの書類を作成しなければならない。交番の警察官が現場を預かっていたなら、書類作成につき合わされるだろう。でもまぁ、聞いてみるか」
「???」
無遠慮に近づいて警察官に落し物があったことを伝えてみると、拾得物の書類作成があるのでできれば一時間後に交番に来てほしいとのことだった。




