2ぶっ潰す!
私は復讐を胸に固く誓った。でも、それを絶対に気づかれてはならない。
3年で子が出来なかったから離縁させる?ふざけてる?2年以上まともに交わった事もないのに。
いつだって忙しいんだ。疲れてるからまた今度。挙句の果てにはいつも遅くなるからマルティナがゆっくりできないだろう?寝室は別にした方がいい。
などなど‥
思い起こせばおかしな点はいくつもあった。でも、信じていたし好きでもあった。だから。
それが義理母と組んであのセシリーナを次の妻にするためにですって?辺境の娘を舐めてもらっては困る。
エドワードとの事を誤解されたことも腹立たしい。
シュタイアーの一族は先祖に竜人がいて魔力に長けている。このタムナール国に移り住んだのが曾祖父の頃だと聞く。
魔力が強いせいで隣国のニルブラ国では王族にいいように使われて愛想をつかしてこの国に移住したらしい。
だが、次第にタムナール国の王族からも一目置かれるようになって中央に出て目立つようなことはしたくないと言う事で辺境と言う地域に根付き国境を守る役目を負っているだけの事だ。
ただ、父が好きになったのはのナターシャ・オーデュン公爵令嬢だったため、母と婚姻して余計この国に頼られる羽目にもなったみたいだが。
そうやってでも一緒になりたかった母はすでに亡くなっている。私は母の髪の色オリーブ色と顔立ちを受け継ぎ瞳は父の色と同じ緋色の瞳をしている。
父マルクは黒髪で兄のハモンドも父と同じ色をしている。二人とも早くに母を亡くしたせいか私には極端に甘い。
私もそんな二人が大好きだけど。
ふわりと扉が開き風が入り込んだ。
アンナが足音を忍ばせて部屋に入って来た。
「お嬢様本当に離縁するおつもりですか?」
「ええ、ルキアスの本性を暴くわ。そして離縁する。私が浮気してるですって?冗談じゃない。自分がやったくせに!絶対許さないわよ!」
「まあ、それは同感です」
ガチャリ。
扉が開いてエドワードが入って来た。
「マルティナ様、申し訳ありません。失礼かとは思いましたがどうしても気になって。あの‥お加減はいかがですか?」
その手にはトレイがあってトレイの上には私が好きなイチゴがあった。
義理母との会話が外に漏れていたのだろうか?それともただ私の病状が心配で?いや、彼はただの監査役で仕事の上での付き合いで。
「ええ、エドワード心配かけてごめんなさい。少し熱も下がって楽になったわ」
エドワードの風貌はかなり美しく髪色は金色で瞳は琥珀。輝かしい容姿と家柄と人柄を持っているはずなのに、どうして我が家の監査役などをしているのかと尋ねたが、貴族の付き合いとかやり取りにはうんざりで自分にはこういう仕事が性に合っていると言われただけだった。
まあ、あれだけ騒いだロクサーヌ王女もすでに隣国の公爵家に嫁がれて昔のようにエドワードに言い寄る事もないはずなのに?
何度か聞くとエドワードはあからさまに嫌な顔をするようになってあれ以来その事には触れないようにしている。
使用人のようにトレイを持って来るとは思ってもいなかった。
「よかったらイチゴでもかがです?お好きでしたよね?」
「‥ええ!ええ、イチゴは昔から大好き。あ、ありがとうエドワード。頂くわ」
カタッ。トレイを置くと彼自身が自らイチゴにフォークを刺して私の口元に運んだ。
「あ~ん‥」
一瞬目が点。
「マルティナ様?どうされました?はい、あ~んです」
「マルティナ様せっかくですから、さあ‥」
アンナまで!
私はもはややけくそで口を開ける。
甘くてみずみずしいイチゴが口の中に。
ぎゅっと噛むと甘酸っぱい果汁が口に広がって幸せが心に広がる。
ああ、あの時エドワードと結婚していたら‥?
そんなあり得ない事が脳内に浮かぶ。
「エドワード。私の心配なんかより、あなたには心に決めた人はいないの?あなたもそろそろ身を固めたほうがいいんじゃなくて?」
エドワードのふにゃけていた顔がいきなり強張り眉間に皺が寄り難しい顔になった。
「マルティナ様、それはあなたに結婚を申し込んでもいいと言う事ですか?」
最期の言葉が疑問形になると彼の瞳がふわりと和らぎ口元が緩んだ。
「じょ、冗談はやめてよ。私は不倫はご免よ」
「でも、お母様は離縁しろとおしゃっていたとお聞きしましたが。ルキアス様には既に別の方がいらっしゃるとも。それでも離縁しないと?」
今度は私を突き刺すような冷えた視線で射抜く。
「それはあなたには関係ない事でしょう?私が離縁しようとどうしようと‥」
関係あると言って欲しい何て言えるわけがない。ずっと淡い恋心を抱いていたなんて。
「では、モリバート伯爵家をぶっ潰せばいいんですか?跡形もないくらい徹底的に!」
「エドワード。そんな事誰がしろと?それをするのは私の権利よ。散々やられたのは私なのよ!踏みつけて叩きつぶすのはわ、た、し。跡形もなくね」
ふふっ。
エドワードの琥珀色の目が面白そうに下がった。
「と言う事は、ついに離縁を決心されたんですね?」
「ええ、遅いくらいだわ」
「俺にも協力させてもらえますよね?」
私は目を見開いてエドワードを見る。
考えてはいけない期待が脳内をよぎる。
まさか‥エドワードううん、そんな事あるはずがない。
「でも、あなたは関係ないじゃない」
期待を裏切られる辛さに思わず声を荒げる。
「関係あります。マルティナ様が辛い思いをされて来たのをずっとそばで見て来ましたから協力したいんです」
ずっと?でも、エドワードが来たのは一カ月前なのに‥
「わ、わたしも。お嬢様」
アンナが口をはさんで思考が途切れた。
「マルティナ様、頑張りましょう!」
なぜかエドワードは私とアンナの手を取りそのまま三人で手を握り合う。
「ええ、ありがとう」
私は戸惑いながらエドワードが私に求婚してもと言った事をすぐに脳内から消し去った。
期待をしたらまた傷つくから。




