ふごごごごごっ
『六花彩湯国』の王都の『水仙』。
あらゆる獰猛な生物が一斉に唸り声を上げるような不気味な音を立てるここは、『六花の彩湯国』の中で、水量、高さ、勢い共に一番を誇る『雪中花の直瀑』。
直瀑とは、滝口から滝壺まで垂直に一気に落下する滝の事である。
もう一度言おう。
水量、高さ、勢い共に一番を誇る直瀑である。
(これは児童虐待になるのでは。いや。児童自ら進んで行っている場合はどうなるんだろうか?)
「よおし。泳ぐぞ」
「おおっ」
準備運動を丹念に行った推定五歳の芽衣と奏斗は、水面が暴れまくる滝壺へと飛び込んでは、直瀑へと一直線に泳ぎ始めた。
(ふごごごごごっ!? 痛い痛い痛い兎に角全身が痛いっ!!!)
推定五歳の芽衣に入り込んでいる精神体の箕柳は、あまりの激痛にのたうち回った。
実際の氷でできた身体だったら、即刻粉々になっていた事だろうと危惧すらした。
(初めの内は。だが。慣れてきたら俺も平気になるだろうが。しかしこれを俺に出会う前から行っているとは。朝陽が考えた特訓なのか? 推定五歳にはあまりにも酷………いや。朝陽がこのような過酷な特訓を行っていたか? もう少し、穏やかだったと思うが)
ほわりほわりほにゃらららん。
箕柳は村に着いてから芽衣と奏斗と一緒に受けた朝陽の訓練を思い出したが、やはり、ここまで過酷なものはなかったように思えた。
和気藹々としていたような。
基本的に穏やかで優しい時間が流れていたような。
(いや。特訓と称しているのに、似つかわしくない表現ではあるが。確か。そのような感じだった。はず。そもそも。朝陽が見当たらなかった。芽衣と奏斗の二人だけ。偶々居ないのか? よもや、朝陽もまだこの村に居なかったのか? 奏斗の実兄ではなかったのか? ふごごごごごごごっ!?)
「あ~あ。まだ泳げないなあ」
「でも芽衣ちゃんすごいよ。僕なんてまだ滝壺をほんの少ししか泳げないもん。滝まで辿り着けないや。芽衣ちゃんは滝を上って泳いでいるからすごいよっ!」
「まだまだほんのちょっとしか上ってないもん。泳いで上り切らないとっ! さあ。休憩は終わり。行こう」
「うんっ」
(こんなに幼い頃からなんて努力家なんだ。芽衣も。奏斗も。うっ。俺はそんなかけがえのない奏斗を。早くここから抜け出して、過去の俺の元にふごごごごごっ!?)
(2025.1.29)




