ごめんな
『六花彩湯国』の第三の首都の『紫陽花』。
「芽衣さん」
芽衣を結界で閉じ込めたと言っても、隙間なく密着させて身動きできぬようにさせているわけではなかった。形を定めない結界は十分に動ける余地を残して形成され続けていた。
芽衣の攻撃にも柔軟に対応できるようにである。
けれど。
「ごめんな」
芽衣はいつもと変わらず快活に笑いながら、聖月に謝罪した。
結界の中で地面に腰を下ろして。
結界を壊そうと動こうとはしていなかった。
「ごめんな。本当に。聖月に甘えてばっかりで。でも。どうしても。闘いたい欲求が抑えられないんだ。どうしても。こうして、聖月の結界に閉じ込められでもしないと。抑えられない」
「芽衣さん」
「ごめんな。ごめん。てめえにばっかり負担をかけてる。本当に。俺も。箕柳も………奏斗も。情けない大人だ。守られてばっかりだ」
「………全くですよ。わたくしはまだ十歳なのですよ。育ち盛りなのですよ。負担をかけ過ぎたら、わたくしの成長に悪影響を及ぼすのですよ」
「うん」
「………もしかして、奏斗さんの仇である箕柳さんを討ちたいのですか?」
「そんなの、考えた事もない。ただ。闘いたいだけだ」
「そうですか」
聖月は芽衣に張り巡らせた結界を解いた。
芽衣は目を丸くした。
「言ったでしょう? わたくしに甘えてばかりいないで下さい。そう言いました。なので、わたくしの結界がなくても耐えて下さい。耐えられずに、動かずにいられないのならば。それが、ご自身の欲求を満たす為ではなく、箕柳さんの為になると思ったのならば。そうして下さい。わたくしにしてくれたように。して下さい。わたくしは箕柳さんに集中します」
聖月は座り込む芽衣に背を向けて、箕柳に向かい合ったのであった。
(2025.1.29)




