おっかねえ
『六花彩湯国』のどこか。
「ふふふふのふ。流石のエルフも優秀な竜であるわたすの幻影魔法には気付かないようだ。ふふふふのふ。わたすが優秀な竜だから仕方ねえっ。自分を恥じるんじゃねえぞ」
幻影魔法を使って姿を消していた琥紺は、同じく幻影魔法で秘湯に変えた奏斗を前に混乱している理瑚の近くへと飛翔してはそう呟いたのち、黄、白、桃、橙の花と、純白の冠毛の蒲公英が咲き乱れる、完熟した山葡萄色の祭壇の上に仰向けで寝かされた奏斗の元へと飛翔しては、魔法で小さくした奏斗をお姫様抱っこしてこの場から離れた。
「しっかし。おっかねえなあ。エルフってもんは。亡骸を吸収しようするなんて。死者と生者への冒涜だべ。安心しろ。亡骸はちゃんと仲間っこたちの元に返してやっからな。うん。しっかし。ああ。業務外の事をしちまったからなあ。相棒に叱られちまう。すまねえな。先に相棒に謝らせてくんねえか。奏斗。すぐに終わらせて、仲間っこたちの元へ連れてってやっからな。うん。しっかし」
ぐずっ。
琥紺は鼻水と涙を啜った。
「本当に死んじまったんだなあ。奏斗。秘湯屋に転職するって言い出すの、楽しみにしてたんだけどよお。わたすが何とか生き返らせられたらよかったんだけんど………相棒が知ってねえかな。あいつ。本の虫だし。知ってかもしんねえな。うん。よし。超特急で行くべ」
琥紺は翼を大きく羽ばたかせては飛翔速度を最高点にまで上昇させて超特急で向かったのである。
第三の首都の『紫陽花』に居る相棒の元へと。
(2025.1.28)




