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幻影魔法
『六花彩湯国』のどこか。
黄、白、桃、橙の花と、純白の冠毛の蒲公英が咲き乱れる、完熟した山葡萄色の祭壇の上に仰向けで寝かされた奏斗の顔を見下ろしていた理瑚が嬌笑できたのは、少しの間だけだった。
「な、によ。これ?」
ありえない変化を遂げた奏斗を目の当たりにした理瑚は、口元を引き攣らせた。
もしや幻影魔法でも使われたのかと本気で疑ったが、魔法が使われた形跡はない。
そもそも誰が幻影魔法を使うと言うのだ。
奏斗は本当に死んでいたのだ。
ほんの僅かだけ、吸血行為を行った乱斗に血を残されて、猛毒に侵されて、死んだのだ。
(………ちょっと待って。何であの子は血を残したの? こんな極上の獲物の血を残すなんてあり得ないでしょ。一滴すら残したくないはず。だったら何で? 奏斗に同情した? いいえ。何か細工をしたと考えるべきだった。だったら、ここに連れ帰ったのは迂闊だったかも。でも)
「これ。どうしたらいいのかしら?」
秘湯になってしまった奏斗を前に、理瑚は途方に暮れたのであった。
(2025.1.27)




