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勇者から秘湯屋に転職します  作者: 藤泉都理
肆 第二の首都の蓬篇
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依り代





 雪と氷で形成された身体が徐々に徐々に蒸発していく。

 濃厚な白い湯煙の所為だと思っていた。魔物の力が加わって威力を増したそれだけの所為だと。


 違った。

 違ったのだ。




(これは、蓬の力が強すぎる所為で。蓬の所為で。俺の身体が、崩れていく)




 雪と氷で形成された身体が徐々に徐々に削られていく。

 削られては、崩れて、消えていく。

 消えていくのだ。




(みなを守っていた強固な依り代が、)




 粉々になった時ですら、雪と氷で守られていた。

 それが今、破られる。

 雪と氷の結界が今、破られてしまうのだ。




(忘れていた? いいや。知らなかったのだ)




 露わになる事のなかった本来の姿が。




(奏斗。芽衣。聖月。『蓬』の住民たち)




「だいじょばない」


 逃げろ。


「だいじょばない」


 逃げろ逃げろ。


「だいじょばな………か。な、」


 俺を置いて今すぐに逃げてくれ。

 それが叶わないならば、


「かな、と。おれ。を、こ………ろ、」




 殺してしまう前に、俺を殺してくれ。











(2025.1.24)




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