っげ
『六花彩湯国』の第二の首都の『蓬』。
「箕柳。大丈夫?」
「だいじょばない」
「おいたわしや。箕柳さん」
「もうさっさと『蓬』は通り抜けて、『紫陽花』に行っちまおうぜ。このままここに居たら箕柳が蒸発しちまう」
頭部に垂れ耳のような羽毛がある、両の掌に乗る大きさの純白の梟と成り果ててしまった箕柳に、風の魔法を使って速度を上げながら駆け走る芽衣と、芽衣に負ぶさる聖月の視線が集中した。
芽衣の風の魔法によって速度を上げて、箕柳を肩に乗せて駆け走る奏斗は、芽衣の意見に賛成だと言った。
「とりあえず『紫陽花』まで行って芽衣は箕柳とそこで待機。僕と聖月で『蓬』で情報収集するから。ほら。劉吉の情報によると、『蓬』に魔物が出現しているって言ってたし。乱斗かどうかは分からないけど、素通りはできないし」
「だったら、俺を連れて行けよ!」
「やだよ。芽衣を連れて行ったら戦力的には有難いけど、一人で突っ走ってどっかに勝手に行くから。それに箕柳の傍には芽衣が居てくれた方がいいと思うし。僕の傍には聖月が居てくれた方がいい。すぐに治癒してもらえるし」
「十歳のわたくしにこの蒸し地獄に舞い戻れと言うのですね。鬼畜」
「ごめんって。聖月」
「だいじょばない」
「おい。箕柳がそれしか言わないぞ」
「よっぽどきついんだね。早く『蓬』を抜けないと。芽衣。風の魔法でひとっとびできない?」
「今使っているのが目一杯だってよ。やっぱ。この白い湯煙。魔物の仕業なんだろうな」
「だいじょばない」
「わたくしの結界を突き抜ける事ができるのです。よほど暑苦しい魔物なのですね」
「暑苦しさこそ正義!!!」
「おっ!」
「っげ」
「最悪です」
噂をすれば何とやらである。
奏斗、箕柳、芽衣、聖月の前に魔物が出現した。
しかし、湯煙で姿は見えない。
(2025.1.22)




