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勇者から秘湯屋に転職します  作者: 藤泉都理
肆 第二の首都の蓬篇
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62/199

激変




 『六花彩湯国りっかのさいゆこく』の第二の首都の『蓬』。


 水仙、藤、蓬、紫陽花、向日葵、撫子、彼岸花、蒲公英の植物が彩られ、国王からそれぞれに直接手渡された通行許可物である印籠を検問所の役人に見せてのち、第一の首都の『藤』から、第二の首都の『蓬』に無事に入る事ができた勇者一行を待ち受けていたのは。




「熱い暑い」

「熱い暑い」

「熱くて暑いです」

「………」




 目前の景色すら覆い尽くしては見えなくさせるほどに、濛々と立ち込める白い湯煙と蓬の香りであった。




「前にここを通った時はこんなに湯煙も蓬の香りもひどくなかったよな?」

「ええ。こんなにも白い湯煙で視界を遮られるところは稀でしたし、蓬の香りもここまで強くはありませんでした」


 呼吸するたびに、やわく丸められて蓬の汁を漬け込んだ綿を鼻や口や喉道を無理矢理に通って、肺に押し込まれているような感覚に陥るほどに、湯煙も蓬の香りも濃厚過ぎるほどに濃厚であった。


聖月せいげつに結界を張ってもらってるけど、大丈夫? 箕柳みやぎ


 奏斗かなとは何も言葉を発さない箕柳に話しかけた。

 雪男とはいえ温泉に入る事ができるくらいに熱さと暑さに強い上に、聖月が箕柳の周囲に結界を張ってくれたので大丈夫だとは思っていたが。


「だいじょばない」

「ぎゃあああああ!? 箕柳がっ!? 箕柳が!?」

「溶けちまったか!?」

「結界が効果がなかったのですか!?」


 芽衣めいが風の魔法で周囲の白い湯煙を散らせて、全員の姿が明確に見えるようにしたところ。


「箕柳!?」

「箕柳!?」

「箕柳さん!?」


 激変していた箕柳の姿がそこにはあったのである。











(2025.1.22)




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