名前
『六花彩湯国』の第一の首都の『藤』。
「なあ~~~。勇者一行から抜けるなんて言うなよ~~~。聖月。あっ。そうだ。俺がその頭に生えている藤をむしり取ってやる。きれいさっぱり。そしたら、骸骨にならずに済む。つまり、聖月は勇者一行から抜けなくてよくなる。よし。痛いかもしれないけど、一瞬で終わらせてやるからな安心しろ」
「嫌です。止めて下さい」
「え~~~」
『藤』に居る僧侶に話を聞きに行った箕柳と三樹矢、そしてどこかに行ってしまった奏斗を待つ中、芽衣は聖月を引き留めようとしていた。
「なあなあなあなあ~~~。聖月が居ないと俺は強くなれないんだよ~~~」
「鬱陶しいですよ、芽衣さん」
芽衣は聖月の歩みを止めるべく、聖月の周囲を前後左右に素早く飛び跳ねまくっていた。
「なあなあなあなあ。聖月。頼むよ。俺の傍から離れないでくれよ。ずっと傍に居てくれよ~~~。俺が強くなる為に傍に居てくれよ~~~。俺が死ぬまで傍に居てくれよ~~~」
「芽衣さんはわたくしが居なくても強くなれますよ」
「ああ。そうだな。俺は聖月が居なくても強くなる。けど、聖月が居たらもっともっともっと強くなれるから傍に居てくれ」
「嫌です」
「何でだよ~~~」
「わたくしはもう他人の為に自分を費やしたくないんですよ。自分の為に自分を費やしたいのです。分かりますか? 芽衣さんの為にわたくしの貴重な命が費やされているのですよ」
「うん。俺の為に聖月の貴重な命を費やしてくれ」
「………あなたはまったく、」
悪びれもなく天真爛漫に笑って見せた芽衣に、頭痛がしてきた聖月。芽衣に言葉で分かってもらおうとしたのが間違いだったと思いつつも、体力では当然敵うわけもなく。
(最大級の結界で足止めをするか、もしくは最大級の治癒魔法を使って、体力を削るか。だめですね。芽衣さんの体力は無尽蔵。わたくしが先にへばってしまう)
「「聖月」」
不意に名を呼ばれた聖月は追い払おうとしていた芽衣の腕を咄嗟に掴んでは、自分を背負ってここから離れてほしいと頼んだ。
「お願いします」
「おう。任せろ」
芽衣は理由を尋ねる事なく、聖月を背負うや否や、颯爽とここから立ち去ったのであった。
(2025.1.19)




