ちっぽけな
『六花彩湯国』のどこか。
(とりあえずは、と)
理瑚は腰を下ろしていたゴーレムの花びらを三度叩いては、ゴーレムとゴーレムに寄生する水仙の葉の動きを止めさせた。
「ちょっとちょっともう。その怖い目を向けるの、止めてくれない?」
理瑚は目尻を人差し指で持ち上げては吊り目を作って奏斗の目を真似てのち、奏斗との適度な距離を保った位置まで飛翔してその場に浮き続けた。
「勇者の剣をわらわに固定するのも止めてくれない?」
「おまえが七愛さんを狂わせたのか?」
「半分は。もう半分はあいつが狂わせた」
「あいつ?」
「そう。あいつ………心強い仲間が居ないと不安なのかしら? 柄にもなく狂気を放っちゃってる。どうどう。落ち着きなさい。わらわは敵ではないから」
「僕の命を有効活用するとか吸収させろとか言ったおまえが敵じゃないって?」
「そう。敵じゃないわ。敵だったら、あんたの命なんかどうでもいいでしょ。ただの遊び道具。暇潰しに使うだけ。無駄に使うだけよ。わらわはそんな勿体ない事はしない。有効活用するの。だから、敵じゃないわ。ね? 安心しなさい」
「………いや。全然安心できないんだけど」
「ゴーレムも水仙の葉も動きを止めてあげたでしょ。何が安心できないのよ?」
「最初から攻撃しないで、敵じゃないって手伝ってほしいって言えばよかったんだよ」
「だって最初はゴーレムに吸収させる予定だったから仕方ないじゃない。でもあんたがちょこまかちょこまか逃げ続けてできないって分かったから、予定を変更して、話し合いで解決しようとしてるんでしょ。はあ。何が不満なのかしら? 全然分かんないんですけどお」
「何この僕が悪いみたいな空気。どう考えてもおまえが悪いよね?」
「まあまあ。どっちがいいとか悪いとか言い出したらキリがないわよ。いいじゃない。あんたが望む展開を今迎えてんだから、それでよしとしなさいよ。ね。って事で。はい。勇者の剣を鞘に納めて納めて」
「だめだ」
「………ああ。そう。そうね。納めるわけにはいかないか」
理瑚は奏斗に背を向けて七愛へと身体を向けた。
すれば、瞳に映るのは、愛らしい笑顔ではなく、
「私のゴーレムが。私の、ちっぽけなすべてが、」
すべてを引きずり込むような憤怒に満ち満ちた表情だった。
(2025.1.16)




