ころろろり~ん
ころころころころころろろり~ん。
丸まった枯れ草が眼前の地面の上を儚げに転がって行く。
ころころころころころろろり~ん。
ころころころころころろろり~ん。
ころころころころころろろり~ん。
いくつもいくつも丸まった枯れ草が眼前の地面の上を儚げに転がって行く。
いつもは美しい鳥や可愛らしい鳥、元気な犬や甘える猫、闊歩する牛や疾走する馬の鳴き声も時に賑やかに、時に密やかに聞こえて来ているのだが、奇妙なほどに皆無であった。
「十年前とはえらい違いだね、当然だろうけど」
勇者を続ける。
奏斗が芽衣、聖月、箕柳、琥紺、そして国王に言ってから、数時間後。
十年前、国王の命を受けて魔王討伐に旅立つ際、国王主催で大々的に色彩豊かに多くの国民に花吹雪や激励品を差し出されながら見送られたのだが、今回。
再び魔王討伐に旅立つこの日に、奏斗たち四人を見送る国民は誰一人として居ないばかりか、店も開いておらず、道を歩く者もおらず、誰も彼もが城の中、ないし家の中に閉じこもっていた。
「城の結界師の所為だってのに。まるで俺たちに落ち度があると言わんばかりだよな。まあ。魔王ともう一度闘えるからいいんだけどさ」
「城お抱えの結界師の失敗だと公言するよりも、わたくしたちが失敗したと言った方が国王としてはダメージが少ないと考えたんでしょうね。最悪ですね。あの国王。まあ。最悪じゃない国王、ないし人間なんて居ないでしょうけど」
「まあ。俺たちにまったく落ち度がないわけではないだろう。魔王を封印して役目は終えたと気を抜いていた。本来ならば、結界師と共に生涯をかけて、魔王の監視を行うべきだったのだ。殺さないと決めたのならば、そうすべきだった。覚悟が足りなんだ」
芽衣、聖月、箕柳の言葉を受けて、どんよりした気持ちになってしまった奏斗。勇者としてのけじめを果たすと決めたばかりであったが、早くも秘湯屋に転職したい気持ちになってしまった。
「いや。いやいやいや。芽衣。聖月。箕柳。顔が硬い。うん。芽衣は表情筋が豊かだね。うん。暗くなかったね。おまえはずっとうきうきわくわくしていたね」
芽衣、聖月、箕柳の三人の疑わしい視線を受けた奏斗は空笑いをしたのち、そう言って両腕を大きく振りながら歩き出したのであった。
(2025.1.6)




