表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者から秘湯屋に転職します  作者: 藤泉都理
壱 自己紹介篇
PR
12/199

ころろろり~ん




 ころころころころころろろり~ん。

 丸まった枯れ草が眼前の地面の上を儚げに転がって行く。


 ころころころころころろろり~ん。

 ころころころころころろろり~ん。

 ころころころころころろろり~ん。


 いくつもいくつも丸まった枯れ草が眼前の地面の上を儚げに転がって行く。

 いつもは美しい鳥や可愛らしい鳥、元気な犬や甘える猫、闊歩する牛や疾走する馬の鳴き声も時に賑やかに、時に密やかに聞こえて来ているのだが、奇妙なほどに皆無であった。




「十年前とはえらい違いだね、当然だろうけど」


 勇者を続ける。

 奏斗かなと芽衣めい聖月せいげつ箕柳みやぎ琥紺ここん、そして国王に言ってから、数時間後。

 十年前、国王の命を受けて魔王討伐に旅立つ際、国王主催で大々的に色彩豊かに多くの国民に花吹雪や激励品を差し出されながら見送られたのだが、今回。

 再び魔王討伐に旅立つこの日に、奏斗たち四人を見送る国民は誰一人として居ないばかりか、店も開いておらず、道を歩く者もおらず、誰も彼もが城の中、ないし家の中に閉じこもっていた。


「城の結界師の所為だってのに。まるで俺たちに落ち度があると言わんばかりだよな。まあ。魔王ともう一度闘えるからいいんだけどさ」

「城お抱えの結界師の失敗だと公言するよりも、わたくしたちが失敗したと言った方が国王としてはダメージが少ないと考えたんでしょうね。最悪ですね。あの国王。まあ。最悪じゃない国王、ないし人間なんて居ないでしょうけど」

「まあ。俺たちにまったく落ち度がないわけではないだろう。魔王を封印して役目は終えたと気を抜いていた。本来ならば、結界師と共に生涯をかけて、魔王の監視を行うべきだったのだ。殺さないと決めたのならば、そうすべきだった。覚悟が足りなんだ」


 芽衣、聖月、箕柳の言葉を受けて、どんよりした気持ちになってしまった奏斗。勇者としてのけじめを果たすと決めたばかりであったが、早くも秘湯屋に転職したい気持ちになってしまった。


「いや。いやいやいや。芽衣。聖月。箕柳。顔が硬い。うん。芽衣は表情筋が豊かだね。うん。暗くなかったね。おまえはずっとうきうきわくわくしていたね」


 芽衣、聖月、箕柳の三人の疑わしい視線を受けた奏斗は空笑いをしたのち、そう言って両腕を大きく振りながら歩き出したのであった。












(2025.1.6)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ