救済10
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】絶賛販売中!!!!!!!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
口絵も載せております!是非見てください!
Xでリポスト複製原画プレゼントキャンペーンも行っております。活動報告に画像を追加しておりますので、気になった方は見てみて下さい!
あれから世界は、劇的に変わるのではなく徐々に変化するようになった。
ダンジョンに潜っていないのに、魔法を使える子供が現れたり、驚異的な身体能力を持つ子供も現れた。
動物の方でも、巨大な象や風を操る鳥が発見された。
他にもいるだろうと、各地で調査がされているようだ。
今回の騒動の影響で、ダンジョンの侵食が早まることはない。
寧ろ、地球の方が聖龍の魔力を取り込んだような物なので、ダンジョンへの抵抗力を付けたと言ってもいい。
今後は魔力に適応した存在が、数多く現れるだろう。
日本も、ダンジョンがあるからと悠長に構えていたら、足元を掬われるかもしれない。
まあ、そんなのどうでもいいんだけど、今はミンスール教会だ。
うん、この教会もいろいろとあったようで、立ち退きをしなくてはならないらしい。
何でも、教会の中心にある中庭に、突然大きな洞窟が出来たそうな。
中を調べてみるとモンスターがいたらしく、新しいダンジョンとして認められちゃったそうな。
ここに二号や、娘の麻耶がいたらよかったのだろうけど、二人が居ないミンスール教会は相当に舐められているそうで、代表者は強制的に話し合いの場に引き摺り出されたそうな。
うん…………マジでごめんって思った。
「田中、きさまぁ〜‼︎」
カズヤが俺の胸ぐらを掴んで、ガクンガクンいわせる。
どうやら、ユグドラシル経由で話を聞いたらしく、俺の顔を見るなり激オコの表情で詰め寄って来た。
もうね、ごめんしか言えない。
本当ごめん、マジごめん、二号の隣ならいいかなって思ってごめん、世界樹の枝があるから何とかなるだろうとか思ってごめん。
カズヤなら別にいっかとか思ってごめん。
更にブチギレたカズヤは、今にも人を殺してしまいそうな表情だった。
落ち着くまでされるがままになっていると、カズヤは疲れたのか肩で息をしていた。
相変わらず俺を睨んでいるが、聞きたいことがあるのか会話をする。
「あれは何だ⁉︎ あそこに出現しているのは普通のモンスターではないな⁉︎」
言っている意味が分からなかった。
あの時、出現していたモンスターはダンジョンで現れるのと同種だったはずだ。
なので更に詳しく話を聞くと、モンスターの特徴がダンジョンで出現するのと違っていたらしい。それに、魔力ではない何らかの力を使っているという。
「強くはないが、面倒な相手だ」
そこまで言うならと、俺も一度潜ってみる。
立ち入り禁止を無視して、カズヤが張ったであろう結界を叩き切り、中に入る。
洞窟が明るいのは、洞窟を作る時に光属性魔法で光源を設置したからだ。
歩いて進んでいるが、モンスターと接敵しない。
かなり深く掘ったからか、奥の方に集まっているのかもしれない。
複雑に作っただけあり、まるで迷路のようになっていた。
我ながら力作だと思う。
壁も強固に作ったので、とても頑丈になっている。破壊しようとしても、まず無理だろう。
これほどの傑作なら、まず攻略される心配は無いだろう。
我ながら、凄い物を作ってしまったと自画自賛してしまう。
……ったく、おかげで迷っちまったぜ。
洞窟の出来に満足しながら歩いていたら、自分がどこにいるのか分からなくなってしまった。
それに、流石は俺が作ったからか、空間把握の効果を阻害して来るので、全体像を掴めないようになっている。
いや、リミットブレイクを使えばいいんだけど、それだと自分に負けたような気がして納得いかない。
なので、出来る限り自分で進んで行こうと思っている。
しばらく進んでいると、ようやくというかモンスターと出会した。
そのモンスターは、ツノウサギと呼ばれる種類なのだけれど、どうにも様子がおかしい。
低い姿勢から突進して来るのは同じ。だけど、その武器であるツノが異様に短いのだ。
ツノウサギは真っ正面から飛んで来る。
しかし、突き出して来たのはツノではなく小さな拳だった。
人差し指で止めると、器用に一回転して蹴りを放って来る。
それも指先で止めると、大きく跳躍して俺から距離を取った。
鼻息の荒いツノウサギは、再び俺に向かって突進して来る。
なので、石の杭で貫いた。
一撃で絶命したツノウサギは、魔力ではない何かを体から噴出させて溶けるように消えて無くなってしまった。
カズヤの言っていた通り、確かにダンジョンのモンスターとは違う。
戦い方も違っていたし、感じる物も違っていた。
ただ、これには覚えがある。
フウマのお友達の子狐が、これに近い物を持っていた。
「リミットブレイク」
一旦行ける所まで行って引き返そう。
何が起こっているのか調べるなら、俺のじゃなくて、もっと見識のある奴にお願いした方がいい。
残念ながら、これは俺の専門外だ。
やれるのは、ここの地図を作ることくらいだろう。
洞窟の地図を作成して、モンスターの種類も把握すると外に出た。
外は明るくて、そんなに時間は経っていなかったんだなぁ、と思ったら丸一日経っていた。
どこでもそうだけど、昼と夜がない環境だと時間の感覚が失われる。
お引っ越ししたミンスール教会に行くと、カズヤに地図とダンジョンで取れた魔道具を渡して、ごめんなさいと再度謝ってお暇した。
あの洞窟の管理は、何だかんだでミンスール教会がするだろうし、それなら、戦力はあった方がいいだろう。
そう予想していたのだけれど、まったく無関係の会社が管理を申し出たそうだ。
トラブルはあったようだが、結局はミンスール教会とその正体不明の会社の共同で行うようになったらしい。
どんなトラブルが起こったのかは知らないけれど、その場所辺りにフウマの気配があったのは偶然だと思いたい。
困ったことがあれば連絡しろとカズヤには言っているから、連絡が無いというのは、特に問題は無かったのだろう。
まあ、あとは流れに任せるとして、そろそろ俺も準備をしよう。
本日は、千里と遊びに行く約束をしている。
久しぶりの二人っきりで、日向は母ちゃんと姉ちゃん兄ちゃん家族と一緒にお出掛けだ。父ちゃんは急遽仕事になったので、まあ頑張って来い。
俺なりにお洒落をして、髪をセットする。
購入した指輪も忘れないようにして、頭の中でシミュレーションしながら家を出る。
この前は失敗したけれど、今度こそ決めたい。
付き合って、そんなに経っていないだろうというツッコミも無しだ。もう出会ってそれなりになるんだから、寧ろ期間という概念は消してしまってもいいとさえ思っている。
バス停に向かっていると、俺の前を不細工な馬が横切る。
違った、フウマだった。
「ブルル!」(頑張れよ!)
おう!
今日こそ決めて来る!
それだけのやり取りをすると、フウマは用事は終わったと飛び立ってしまった。
何とも忙しい馬である。
バスに揺られて二十分、千里との待ち合わせ場所の駅に到着する。
ここから、海の綺麗な観光地に向かう予定だ。
時間を見ると、待ち合わせの三十分前に到着していた。
これまで、こんなに早く来ることはなかったのだけれど、大事な日だと意識してしまい、気持ちが焦ってしまっていたようだ。
大丈夫だ。
きっと成功するって。
そう自分に言い聞かせて、気持ちの平静を保とうとする。
だけど、逆に意識してしまって、どうにも落ち着かない。
まだ来ないなら、飲み物でも飲んで気持ちを切り替えよう。
なんて思っていたら、お洒落をした千里の姿を見つけてしまった。
歩いてこっちに向かって来ていて、その表情は気持ち緊張しているようにも見える。
段々と近付いて来る千里。
そんな千里に向かって手を上げて、「……」何も言葉が出て来なかった。
どうやら俺も、緊張し過ぎているようだ。
不器用な俺に気付いたのか、千里は、
「……行こうか」
そう短く告げてリードしてくれた。
俺達にとってとても大切な日は、こんなぐだぐだなスタートだった。
18時に幕間投稿します。




