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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【4巻8/20出版決定!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
本編終了後の話

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410/414

救済7

【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】

明日8月20日に出版されます!!!

既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!

活動報告に表紙を載せております。

口絵も載せております!是非見てください!

Xでリポスト複製原画プレゼントキャンペーンも行っております。活動報告に画像を追加しておりますので、気になった方は見てみて下さい!

 世界が揺れた。

 オリエルタが聖龍の骨を手にした瞬間、世界から魔力が溢れ出した。


 何が起こったのか分からず、間抜けにもボーッとしてしまった。


『これは⁉︎』


 オリエルタは状況を理解したのか、焦ったようにブランコから立ち上がる。周囲を見渡すと、天使の姿に戻り空へと舞い上がった。


 何やってんだあいつ?


 なんてことを思いながら、俺もよっこいしょとブランコから立ち上がる。


 収納空間から聖龍の骨を取り出すと、溢れ出した魔力に呼応するように薄らと光を宿した。


 光の天使が現れる気配は無い。

 力が戻ったわけではないようだ。

 ただ、何かしらの変化が起こっている。


 というか、あれだよね。

 アミニクが言っていた、何か切っ掛けがあったら一気に広がるってあれ。

 絶対、オリエルタに聖龍の骨を渡したからだよね?


 マジかー。

 いくら何でもテンション上げ過ぎじゃない?


 そう頭を抱えながら、俺も空に上がる。


 下を見下ろすと、聖龍の魔力によって世界が光を浴びているように見える。空にはまだ魔力は満ちていないが、それも時間の問題だろう。


 こりゃ、急がないとまずいかもしれない。

 あまり長い時間この状態が続けば、生まれながらに魔力を持った奴が大勢生まれて来る。そうでなくても、馴染んだ奴が後天的に魔法を使うようになるだろうな。

 その上、モンスターのような奴らだって出現するし、魔力に反応して大地が形を変える恐れだってある。


 これじゃあ、一般人が銃を持つよりも危険な世界になる。


 まったく笑えない話だ。


 だからこそ、止めなければならない‼︎


 オリエルタがやって来る。

 何か言いたそうにしているが、構っている暇はない。


 収納空間から、集めた聖龍の骨を取り出す。


「リミットブレイク・バースト」


 森羅万象を最大限まで使い、世界全体を支配下に置く。

 やっといて何だが、ここまで出来るようになったのかと、自分でも驚いてしまう。

 改めて俺は人を辞めてしまったんだなと、現実を突き付けられる。

 これまで、普通の人として家族との時間を過ごしていたからか、そのショックも一際大きい。


 とはいえ、今は塞ぎ込んでいる暇は無い。


 蘇生魔法を聖龍の骨に向かって使用する。


 魔法は確かに効果を発揮して、骨に宿っていた魂の欠片が一つになる。呼び寄せられるように、世界中から魂が立ち上り集まって来る。

 そこに、俺は更に力を注ぎ込む。


 次の瞬間、魂との繋がりが強くなり、キューレが見ている夢を覗き見てしまう。



 俺は、何かを見落としているのではないかと違和感を感じていた。

 

 その正体が何なのか、今分かった。


 光の天使となって顕現していたキューレは、誰かを襲うことはなかった。襲われたという情報も、そいつが危害を加えて振り払われた程度の物だ。もしキューレがその気になっていれば、そんな情報なんて聞こえて来るはずがなかった。

 何故なら、人なんて簡単に消し去ってしまえるくらいの力を持っているのだから。


 そんな光の天使が、唯一誰かを襲った事例がある。


 そう、俺だ。


 聖龍の骨の効果か、あの日のヒナタに匹敵する力を持っており、その力で容赦なく襲って来た。


 あれは、何かの間違いだと思っていた。

 単に、俺が強力な存在だから、無意識のうちに動いてしまっているのだと思っていた。


 だが違った。

 あれは、明確に俺を標的に定めて仕掛けて来たのだ。



_____



 キューレは夢を見ている。

 都ユグドラシルで過ごした日々。

 愛するオリエルタと共になった幸福な日々。

 愛の結晶が生まれて来たあの日の出来事。

 死に際になっても、愛する赤子をその腕に抱き抱えていた。

 少しでも暖かさを感じる為に、少しでも自分の熱を子供に覚えてもらう為に。


 ここで夢は途切れる。

 だが、終わりでない。

 夢には続きがあった。


 キューレは魂だけになっても、意識は残っていた。

 世界の化身たる聖龍やアクーパーラに匹敵する力を持っていたというのもあり、魂の強さが通常とは違っていたのだ。


 地球に飛ばされたキューレは、世界を回る。

 世界を見て回り、ここは窮屈でか弱いという印象を受ける。

 魂だけのキューレは、ただ見ていることしか出来なかった。

 力を発揮しようにも、キューレの魂に耐えられるだけの依代が無いのだ。

 こればかりは、どうしようもなかった。


 長い長い日々が過ぎて行く。


 キューレは、相変わらず見ていることしか出来ない。

 この世界では、ユグドラシルが守る世界と違い、多くの悲劇が起こる。誰もが平和を願いながら同族で殺し合い、老人が指示を出して、幼い子供が命を落とす。

 主義主張が違うだけで、相手を敵と見做し武器を手に取る。

 ついさっきまで笑顔で会話をしていた二人が、瞬きする間に殺し合いを始めてしまう。


 とても醜い世界。


 そんな感想を抱いても、キューレは醜いこの世界を受け入れた。


 同族殺しは、発展していない世界ではよくあることだ。

 これまでに都ユグドラシルで受け入れた種族の中には、似たような経緯をたどった者達ばかりだからだ。


 この程度で心は乱されなかった。



 でも、キューレの心を乱す事件が起こってしまう。


 地上と都ユグドラシルが繋がり、黒龍が現れた。

 恐ろしい存在の出現と共に、愛おしい存在を発見してしまう。


 銀髪の髪に黒い翼。


 かつてのキューレに匹敵するほどの力を持った存在。


 ユグドラシルで新たな英雄として活躍する天使。


 英雄ヒナタ。


 一目見ただけではっきりと分かった。

 あの黒翼の天使は、自分の子供だとはっきりと理解した。


 いろんな感情が湧き起こる。


『あの子だ、あの子だ、あの子だ! あの子がいる⁉︎』


 無事に生きていてくれたという安堵、立派に成長してくれた喜び、共にいられなかった悔しさ、もう触れられないという悲しさ。


 そして何より、一目だけでもその姿を見れたことを幸福だと感じていた。


 だが、その幸福も長くは続かなかった。


 英雄が、キューレの子供の命が尽きようとしていたのだ。


 どんなに助けたくても、キューレには何も出来ない。

 肉体を失った魂だけの無力な存在。

 それが、今のキューレなのだから。


 英雄は、大切な誰かを救う為に命を落とす。


 キューレほどの強さを持たなかった英雄の魂は天に昇り、世界を彷徨い続けるだろう。


 何とか掴もうと手を伸ばす。

 しかし、英雄の魂に触れることは出来ない。


 でも、その代わりに見てしまった。


 ヒナタがどういう道を歩んで来たのか、全て見てしまった。



 次の瞬間、キューレは悲鳴を上げていた。



_____



 これはまずい‼︎


 予想外の展開に焦るが、大量の情報を得た反動で直ぐに動くことが出来ない。


 その間に、蘇生魔法で形を得たキューレは即座に動き出す。


 手に大剣を握り、怒りのままに振るう。


 その刃は、ヒナタが死ぬ切っ掛けになった俺に向かうと思っていた。


 でも、違った。


 怒りの刃の標的は、ヒナタを捨てたオリエルタだった。


 暗くなった空に、赤い鮮血が舞った。

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― 新着の感想 ―
書籍をAmazon Kindleで買わせていただきました。 感想は、無常だなぁって感じです。 そして考えてしまいます、もし田中ハルトの周りに誰も居なく 大切な人達を奪われ続けたら、その不屈の尽きぬ怒り…
(‐人‐)南無南無
せやろなぁ…さようならオリエルタ
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