救済5
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】
8月20日に出版されます!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
口絵も載せております!是非見てください!
幼稚園にはたくさんの父兄が集まっていた。
園児の両親に加えて、その子の兄弟姉妹、祖父母が来ていたりして大賑わいだった。
これなら俺も、兄妹枠で行けるだろう。
兄ちゃんと姉ちゃんの家族とも合流して、みんなで並んで応援する。
日向達園児は列に並んで大人しく座っている。
俺達が見ているのに気付いたのか、三人のお子様は笑顔を浮かべていた。
姉ちゃんが近寄って来て、日向が大人しくなっているのに驚いているようだった。
どうやら去年は、フウマに跨って参列していたらしく、一人だけ武将のようになっていたらしい。
はいこれ去年の。そう言って見せてくれた写真は、確かに武将だった。
俺達兄妹の中で、一番大物になるのは日向かもしれない。
開会式が終わると、早速種目が始まる。
玉入れから始まって、みんな一生懸命玉を投げている。
そんな中、日向は遠い所から投げて正確に籠に入れて行く。
精度は百発百中で、どんなに適当に投げても入ってしまう。
別に魔法なんて使用していないんだけど、信じられないくらい簡単に入っていた。
次はフラフープ送りリレー。
子供達が手を繋いでフープを通して行く種目のようだ。
必死にフープを通していて、見ていてほっこりする。そんな中、日向はひょいっとジャンプして通してしまい、はいと次の子にフープが渡ってしまう。
必死になる姿をカメラに収めたいのだけれど、日向には簡単過ぎたらしい。
唯一撮れたのは、次に参加したダンスくらい。
どうやらダンスは苦手なようで、頑張って踊っていた。
休憩時間になると日向、瑠衣、武光がやって来る。
三人とも頑張っていたので、麦茶を渡して出迎える。
どこが良かった、頑張っていたなとか話をしていると、日向と仲良いお友達のご家族がやって来た。
そうそれは、俺の中学の同級生の家族。
こうして会うのは、動物園で会って以来だ。
俺は一歩距離を置く。
日向の保護者は父ちゃんと母ちゃんなので、俺が前に出たら二人の面子が潰れて…………潰れるほどの面子も無いな。
そうは思っても、ここは二人に任せる。
親同士会話をしており、あちらさんは父ちゃんと母ちゃんの実年齢を聞いて驚いている。他にもいろいろと話をしていると、休憩時間はあっという間に終わってしまった。
父ちゃんは何も喋らなかった俺を見て、よかったのか? と聞いて来る。
良いも悪いも、ここは父ちゃん達が前に出るべきだろう。
親参加のリレーもあるんだし、負けなよ。
俺が行けって?
ふざけてないで頑張って来い!
そう言って、父ちゃんの背中を叩いて送り出す。
兄ちゃんとマサフミさんも参加しての、父親による競争だ。
距離は三十メートルくらいなので、日頃運動不足の親達でも問題無くゴール出来る。
参加する親は思っていたよりも少なくて、十五人くらいだった。
三回に分けて出走するのだけれど、結構盛り上がっていた。
残念ながら、父ちゃんはビリだったけれど、頑張っていたからお疲れと言っておいてやろう。
続いての競技は、とプログラムを見ていると千里に呼ばれた。
何やら焦っているようで、どうやら緊急事態のようだ。
ちょっくら行って来ると言って園内に向かうと、そこには転んで怪我をした誰かのお父さん。と、倒れてぐったりしている子猫がいた。
話を聞くと、お父さんが歩いていると子猫が飛び出して来たそうな。避けようとしたけれど、間に合わないどころか体勢を崩して足を挫いてしまい、子猫の上に倒れてしまったという。
こりゃ大変だと、俺は考えるまでもなく治癒魔法を使う。
お父さんは後回しにして、先に子猫の方だ。
成人男性の体重が乗ってしまったせいで、骨が折れて内臓も危ない状態にある。つまり、いつ亡くなってもおかしくなかった。
状態をトレースで確認しつつ、子猫の治療を完了する。
治った途端、子猫は起き上がってニャーと鳴く。
無事で良かったなと頭を撫でると、助けられたことが分かっているのか、手に体を擦り付けていた。
太っていた頃は、野良猫に威嚇されてばかりで可愛いとは思わなかったけれど、こうして懐かれると可愛いと思えて来る。
さて、お父さんの方はどうするかと改めて見て気付いた。
この人、同級生の旦那さんじゃん。
痛みで顔を歪めているから気付かんかった。
足を挫いていると言っていたけど、こりゃ折れてるな。
体型もぽっちゃり気味だし、運動不足なのも祟って盛大にいっている。
完全に一人相撲で怪我をしているんだけど、ここが幼稚園というのもあるので、下手したら責任の所在を問われるかもしれない。
まあ、旦那さんはそんな人ではなさそうなので、その心配も無さそうだけど、念には念を入れておこう。
旦那さんに一言、今回のことは黙っていて下さいね。そう告げて、治癒魔法で旦那の足を治した。
それから直ぐに同級生が入って来て、旦那さんに呆れているようだった。
治療も終わったし、戻るからと千里に告げる。
すると、俺の腕の中を指差した。
「あのさ、その子猫どうするの?」
外に逃そうかと思ってたんだけど……まずいかな?
やっぱりそう?
えっ、千里が飼うの? 一人暮らしで難しくない?
責任? 自分が助けて欲しいってお願いしたから、最後まで責任を持ちたいと……。
……分かった。園が終わるまで俺が預かっておくよ。
助けた責任として、千里はこの子猫を飼うそうだ。
いろいろと必要になるだろうし、帰りに買い物に付き合ってあげようかな。
グラウンドに戻りながら、収納空間から猫が食べられそうな物を出して与えてみる。すると、お腹が空いていたのか手の中にある物をあっという間に平らげてしまった。
もう少し食べるかなとトレースしてみると、食欲はあってもお腹は一杯のようで、もう与えない方が良さそうだ。
子猫を抱えて戻ると、最後の種目であるかけっこが始まる所だった。
女の子から始まったかけっこは、姉ちゃんのところの娘である瑠衣が一等賞を取っていた。
続く日向は、圧倒的な速さで他の子を置き去りにしてしまった。
何というか、立っているステージが違うのだと見せつけるかのようだった。
次に男の子の番だが、意外なことに武光は足が遅かった。
ビリでゴールして、悔しかったのか座り込んで泣いていた。
本人としては不本意だろうが、保護者側からしたらそれも可愛らしく見えてしまう。
いずれこれも、幼い頃の思い出だと思えるようになる日が来る。
その時にでも、この映像を見せてあげよう。
そんなことを思いながら、俺は撮影を続けた。
楽しい時間という物は、あっという間に終わってしまう。
運動会が終わり、みんなで食事に行く所を一人お暇させてもらった。
日向が不機嫌そうにしていたが、猫ちゃんの為なんだと説明すると、納得してくれた。
運動会の片付けが終わるのを待って、千里と合流する。
帰っていて良かったのにと言うけれど、そういうわけにもいかない。何せ、子猫の今後が掛かっているのだから。
二人で猫に必要なものを購入して、千里の家に運ぶ。
少し雑談でもしようとすると、母ちゃんから電話が掛かって来た。
何だよ、邪魔すんなよ。と思いながら電話に出ると、早く帰って来てと催促された。
どうかしたのか? そう尋ねると、母ちゃんは困惑した様子で、
『日向の前世のお父さんが来てるのよ』
と、あの野郎が来てしまったようだ。




