救済4
【無職は今日も今日とて迷宮に潜る4巻】
8月20日に出版されます!
既刊1巻〜3巻下巻もよろしくお願いします!
活動報告に表紙を載せております。
口絵も載せております!是非見てください!
時間が過ぎて行く。
骨集めは引き続きやっているけれど、回収率はイマイチだ。
インフラに直結しちゃっているのもあるけれど、そうでない物もある。
それらを中心に手にしているのだけど、そういう物に限って魔力を持った動物が守っている。
えっ、それなんてイベント?
ゲームだと中ボス的立場になりそうな、大きな熊を背負い投げしたり。フウマの代わりにうちに来ないか?とスカウトしたくなるほど凛々しいヘラジカを締め落としたり。水の魔法を使えるようになった鯨をビンタしたりした。
それでこれまで集めたのが、五十個くらいの骨の破片。
聖龍の骨の1パーセントにも達していない量だ。
これで、俺の思うように行くかどうかは微妙な所だ。
一応、この骨の全てに天使の魂の欠片は宿っている。
今ここで、蘇生魔法で力を注いだとしても、前回の二の舞になるだろう。
さて、今日も今日とて骨回収である。
因みにフウマだが、マジで忙しいらしくて手伝う暇が無いらしい。
一体何やってんだと聞いたが、「ヒヒーン‼︎」(お前が関わると碌なことにならんから、こっちくんな‼︎)と全力で拒絶された。
おいテメーこの野郎、ご主人様差し置いてどういう了見だ。と言いたかったけれど、若干キレ気味で怖かったので、行ってらっしゃいと送り出した。
召喚主より働く召喚獣って何なんだろう?
俺の立場ないんだけど……。
ちょっぴり寂しい気持ちになりながら、国外に向けて飛ぶ。
一応、パスポートも所持しているのだけど、入管を通していない時点で不法入国である。
つまり、俺は立派な犯罪者だ。
だけど、捕まっていないのでノーカンでいいだろう。
これまで行ったことのない国を訪れる。
この国の街に、微弱だがト太郎の魔力が宿っている。
どこにあるのかと探ると、飼い犬に齧り付かれていた。
これなら、何も気にせずに回収出来るな。
そう思ったのだけれど、それは甘かった。
犬を飼っている家には、幼い少女がいた。
どうやらその少女は目が見えていないようで、杖をついて移動していた。
ただ、目が見えない分、他の感覚が鋭くなっているらしく、犬が咥えている骨に何かあると気付いているようだった。
親が犬の散歩に行っている間に、少女は骨を拾って不器用ながらに洗い、何やら語り掛けていた。
それに反応するように、骨から魔力が少女に流れる。
目の治療をしているわけではなく、単に魔力という力を流していた。
少女はそれに気付かない。
どんなに感覚が鋭くなっていても、魔力という物を認識しなければ、感知なんて出来ない。
恐らくこれを、少女は何度もやっている。
それだけの魔力量が少女の中に蓄積されていて、目以外は頑丈になっていたから。
というのを、上空から見下ろしていた。
俺は無言で少女の前に立つと、その国の言葉で「誰?」と怯えられる。
そんな少女から骨を取り上げると、「ごめんな、目を見えるようにしてやるから勘弁してくれ」と治癒魔法と森羅万象を使って、少女の目を作り直した。
少女の目は、生まれてからずっと見えていない。
なので、修復のしようがなく、作り直すしかなかった。
眼球と神経のモデルは俺の物だけど、許して欲しい。
普通の人のに出来たら良かったのだけれど、その場合、少女の魔力に耐えられない恐れがあった。だから、魔力に耐性のある奴の目にするしかなかった。
少女は目に熱を感じたのか、その場に蹲ってしまう。
少しするとゆっくりと目を開けて、地面を見る。
それから顔を上げて、ポカンとしていた。
俺は少女の前で指を振ると、目が追っているのを確認する。
どうやら、問題なく見えているようなので一安心だ。
じゃあな、と手を振って俺は少女の前から飛び立った。
これでようやく一個回収。
次はもっと簡単だといいな。
なんて甘えたこと考えてたら、次はよくないお薬の栽培が盛んな地域だった。
_____
『海外からのニュースです。×××××の森林で火災が発生しました。火は農村部まで広がりましたが、消し止められた模様です。焼かれた範囲は千ヘクタールにも及び、被害は……はい、訂正します。被害は無いということです。こちらが火災があった現在の映像になります。緑は再生され、畑にも実りが戻っているようです。近年、ダンジョンが……』
今日は幼稚園の運動会だ。
あっちで、兄ちゃんと姉ちゃんの家族と合流しようという話しになっている。
たまに二人のお子様も預かっているから、ちょいちょい会っているけれど、姉ちゃんの旦那さんと会うのは久しぶりだ。
今も元気にムチを持っているのだろうか?
絶対に認めないだろうけれど、その性癖を治して欲しいと切実に願っている。
まあそれはいいとして、今更ながら俺も行っていいのだろうかと疑問に思う。
千里には確認しており、問題ないと言われているけれど、変な目で見られないか心配だ。
日向の送り迎えはしているので顔は知られているけれど、バスで通っているご家庭はそうではない。それに、お母様方には俺の同級生もいるし、何かとやり難いような気がする。
とはいえ、参加しないって選択肢は無いんだけどね。
「オヤジ! フウマはこないの?」
フウマ? 来ないんじゃないか?
マリンと一緒に昨日から帰って来てないし。
そう告げると、日向はガッカリしていた。
どうやらお友達に、フウマも連れて来ると約束してしまったみたいだ。
残念だが、ここは諦めてもらうしかない。
それにしても何をしているのだろう?
前々から二人で出掛けると言っていたから、別に何も言わなかったけれど、少しだけ気になる。
プライバシーは守りたいけれど、やっぱ召喚主として把握はしておくべきだろうか?
二人の居場所を探ってみると、東の方にいる。
恐らく東京辺りだけど、それ以上探ろうとすると、フウマは魔力を乱してジャミングして来る。
あの野郎、姑息な手を覚えやがって。
ガッカリする日向の頭を撫でて、俺も準備するかと立ち上がる。
ついでに、テレビを見ている両親にも、いつまで見てんだよ。と声を掛ける。
すると、父ちゃんがこれ知っているかと、海外の森林火災のニュースを指差す。
知るわけないだろう。
何でもかんでも、俺がやらかすとか思うなよ。
そう否定する。
俺は火なんて使ってない。
単純に、よくないお薬工場を地属性魔法で破壊して、森羅万象で農作物を実らせただけだ。それ以外は知らん。
父ちゃんは、そうかと納得して、ようやく準備を始めた。
『続いてのニュースです。×××××に住む、少女の目が治ったようです。セシーリアちゃん七歳は、先天性の病気で生まれながらに目が見えなかったそうです。ですが昨日、突然見えるようになったようです。セシーリアちゃんは「神様が治してくれた」と話している……』
テレビを切って、さっさとしてくれと母ちゃんに声を掛ける。
まだ二時間前だけど、早めに準備しておいて悪いことはないだろう。
運動会は午前中に終わるから、お弁当を準備する必要はない。
ただスマホで記録を撮ればいいだけだ。
スマホの充電は満タン、データの空きも十分にある。
よし行こう!
そう呼び掛けると、待ちなさいと母ちゃんに呼び止められた。
何々と聞くと、幼稚園は三十分前にしか開園しないらしい。場所取りも禁止されていて、みんなゆっくり来て下さいという園側が配慮しているそうだ。
そっか……そういうのは、早めに教えてくれないかな?
最近、日向の送り迎えしてんの俺なんだから、もうちょっと気を遣ってくれないだろうか。
そんな不満を抱きながら、時間が来るのをひたすらに待ち続けた。




